6月4日発表:DFT計算を量子で指数加速
ベストカレンダー編集部
2026年6月3日 16:52
DFT量子アルゴリズム開発
開催期間:6月4日〜6月5日
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量子アルゴリズムが切り拓くDFT計算の新領域
背景と現状──マテリアルDXにおけるDFTの位置づけ
2026年6月3日11時23分に公開されたプレスリリースによれば、株式会社テラスカイのグループ会社である株式会社Quemixと、株式会社本田技術研究所は共同研究の成果として、密度汎関数理論(DFT)計算を量子コンピュータ上で指数関数的に加速する新しい量子アルゴリズムを世界で初めて開発したと発表しました。発表はテラスカイ(本社所在地 東京都中央区、代表取締役CEO 佐藤秀哉)のリリースとして行われています。
DFTは電子状態計算の代表的手法として、材料設計や新素材開発に不可欠な技術です。従来は古典コンピュータ上で発展してきましたが、材料開発現場では「経験と勘」から「計算科学を核としたマテリアルDX」への移行が求められており、計算の高速化と大規模化が喫緊の課題となっています。
従来の課題──高精度化に偏重してきた研究動向とDFT高速化の困難性
これまで量子コンピュータを用いた材料シミュレーション研究は、主に「高精度化」に重心が置かれてきました。量子コンピュータは電子間相互作用を厳密に取り扱えるため、強相関物質や励起状態の解析といった分野での精度向上が注目されてきました。
しかし産業分野でニーズが高い創薬、半導体、電池材料などは弱相関物質に分類され、これらにはDFTで十分対応可能であるため、研究現場ではむしろDFT計算そのものの高速化と大規模化が重要視されています。ところがDFTには非線形演算が含まれ、特にグラム・シュミットの直交化法のようなプロセスが量子回路の線形演算体系に適合せず、DFT高速化に有効な量子アルゴリズムが存在しないという大きな技術的障壁がありました。
技術的ブレイクスルーの中身
新アルゴリズムのコア技術
Quemixと本田技術研究所が共同で開発したアルゴリズムは、DFT計算における非線形処理を回避するための新たな手法を取り入れています。具体的には、従来のDFTで問題となっていたグラム・シュミットの直交化法を用いないアルゴリズム設計と、電子密度の逐次的読み出しを必要としないエネルギー算出法を確立した点が革新的です。
もう一つの柱は、QPE(量子位相推定)回路のサンプリング結果から直接全エネルギーを算出する手法の構築です。これにより、従来必要であった電子密度分布の逐次的読み出し(サンプリング)に伴う高い計算コストを排除し、量子回路の出力を直接利用してエネルギー評価を実施することが可能となりました。
技術要素の整理
本成果には複数の重要な技術要素が含まれています。以下に主要な要素を整理します。
- グラム・シュミット直交化法の回避:非線形演算に依存しない新しい線形量子アルゴリズムを導入。
- 電子密度の読み出しを不要にする全エネルギー直接算出:QPE回路の出力サンプリングからエネルギーを算出。
- 量子的加速の実証:エミュレータ上での検証により、計算規模の拡大に応じて指数関数的な時間短縮を確認。
実証実験と確認された性能
エミュレータ上での評価結果
開発したアルゴリズムはエミュレータ上で実行され、次の観点について確認が行われました。まず、計算規模が大きくなるにつれて従来アルゴリズムに対し計算時間が指数関数的に短縮されることが確認されています。これは「指数関数的加速」として明確に示されました。
また、精度面においても従来のDFTと同等の結果が得られている点が重要です。原子間距離や構造定数(結晶構造のパラメータ)の算出において、従来手法と遜色ない高精度な結果が示されました。
物性予測能力と応用可能性
さらに、材料の電気的性質を左右する電子バンド構造の計算が可能であることが実証されました。これにより、物性予測や設計指標として広く用いられる電子バンド構造解析がDFT領域で実用的に行える可能性が示されています。
エミュレータによる検証内容は総じて、実用化に向けた第一歩を示すものであり、今後の実機実装に向けての有望な結果として位置付けられます。
産業応用のロードマップと研究体制
実機実装と共同研究の展開
本成果は、量子コンピュータの応用領域をこれまで高精度化が求められていた特殊物質の解析から、半導体・電池など汎用的な材料開発領域へと拡大させる可能性があります。共同研究チームは、今後アルゴリズムを実機へと実装する工程を進めるとともに、産業界のパートナー企業との共同研究を通じて応用範囲を拡大する計画です。
発表文では次世代デバイスや新薬の開発期間を短縮する「真のマテリアルDX」の実現に貢献することが期待されると明記されています。実装と応用の具体化に向け、実機環境でのスケーラビリティ検証や産業用途に合わせた最適化が今後の課題として挙げられます。
発表・連携の予定
共同研究成果は国際カンファレンスで発表される予定です。発表は2026年6月4日から5日にグランドハイアット東京で開催されるQ2B 2026 Tokyoにおいて、Quemixと本田技術研究所の研究者がケーススタディトラックに登壇して行われます。イベントの公式サイトは次のURLです。
Q2B 2026 Tokyoのイベント公式サイト
https://q2b.qcware.com/ja/conference/2026-tokyo
関係組織の概要と問い合わせ先
Quemixと本田技術研究所の役割
Quemixは株式会社テラスカイの連結子会社で、量子コンピュータ、量子センサ、材料計算関連の研究開発を行っています。Quemixの本社は東京都中央区日本橋で、代表は松下雄一郎とされています。Quemixは誤り耐性量子コンピュータ(FTQC)向けのアルゴリズム研究に注力しており、確率的虚時間発展法(Probabilistic Imaginary-Time Evolution、PITE)という量子化学計算アルゴリズムを開発し、特許を取得しています。
本田技術研究所は本田技研工業株式会社の研究開発部門で、本社は埼玉県和光市、代表は秋和利祐です。今回の共同研究においては、新素材開発の実務に直結するDFT高速化技術の検証と将来的な応用検討を担っています。
問い合わせ先および関連情報
プレスリリース内に記載されている問い合わせ先は次の通りです。Quemixの事業に関する問い合わせは Quemix のお問い合わせページを参照すること、メディア関連の問い合わせは株式会社テラスカイ広報担当のメールアドレスが案内されています。
- Quemix お問い合わせ
- https://www.quemix.com/contact
- Quemix プレスリリース
- https://www.quemix.com/post/20260603-hondard
- テラスカイ 広報担当(メディアお問い合わせ)
- pr@terrasky.co.jp
今回の開発内容の要点整理
以下の表は、本記事で紹介した共同研究の主要項目を整理したものです。技術的な要素、実証結果、関係組織、発表予定など、プレスリリースに含まれる重要な情報をまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2026年6月3日 11時23分(テラスカイのプレスリリース) |
| 共同研究主体 | 株式会社Quemix(Quemixは株式会社テラスカイの連結子会社)と株式会社本田技術研究所 |
| 代表者・所在地 | テラスカイ 代表 佐藤秀哉(東京都中央区)/Quemix 代表 松下雄一郎(東京都中央区日本橋)/本田技術研究所 代表 秋和利祐(埼玉県和光市) |
| 対象技術 | 密度汎関数理論(DFT)の量子アルゴリズムによる高速化 |
| 技術的課題 | DFTに含まれる非線形演算(例 グラム・シュミットの直交化法)および電子密度の逐次読み出しに伴うコスト |
| 今回の技術的解決 | グラム・シュミットの直交化法を回避する新アルゴリズム、QPEのサンプリングから直接全エネルギーを算出する手法 |
| 実証結果 | エミュレータ上での指数関数的加速の確認、従来DFTと同等の精度(原子間距離、構造定数)、電子バンド構造の計算が可能 |
| 発表予定 | Q2B 2026 Tokyo(2026年6月4日〜5日、グランドハイアット東京)ケーススタディトラックでの発表 |
| 参照リンク・問い合わせ | Q2B 2026 Tokyo 公式サイト https://q2b.qcware.com/ja/conference/2026-tokyo / Quemixサイト https://www.quemix.com/post/20260603-hondard / Quemix問い合わせ https://www.quemix.com/contact / テラスカイ広報 pr@terrasky.co.jp |
| 関連キーワード | 量子コンピュータ、マテリアルDX、密度汎関数理論(DFT)、新素材開発、強相関物質、励起状態、グラム・シュミットの直交化法、Quemix、本田技術研究所 |
本記事では、Quemixと本田技術研究所が共同で達成したDFT計算の量子アルゴリズムによる高速化の全容を整理して紹介しました。今回の成果はDFTを基礎とする材料計算を大規模・高速化する可能性を示しており、今後の実機実装や産業界との連携により、半導体や電池、創薬など幅広い分野での応用展開が期待されます。