福岡クリスマスアドベントでボルシチとピリシキを味わう

福岡クリスマスアドベント

開催期間:11月21日〜12月18日

福岡クリスマスアドベント
クリスマスアドベントって何が行われるの?
福岡発の冬イベントで「光・音・芸術」を軸に市内複数会場で催しを展開します。代表は天神中央公園の無料サーカスReverie(11/21〜12/18)や貴賓館のサンタ像展示、プロジェクションマッピングなどです。
ウクライナ料理の出店はどう支援になるの?
岩田産業とサエキジャパンが共同開発したボルシチやピリシキの売上の一部を日本経済大学を通じウクライナ人留学生支援金に寄付し、継続的な支援につなげます。

福岡を舞台に広がる「クリスマスアドベント」と食でつなぐ国際交流

2025年12月10日13時45分、株式会社岩田産業グループホールディングスは、クリスマスアドベントを主催・運営する株式会社サエキジャパン代表取締役の佐伯岳大氏を迎え、岩田産業に2025年春から勤務するウクライナ出身のソフィア・ユルチェンコさん(愛称ソーニャ)を交えた対談を行った。対談では、サエキジャパンが進めるクリスマスアドベントの経緯と理念、ソーニャさんがウクライナ料理を販売するに至った経緯、そして岩田産業の地域や国際支援に関する取り組みが語られた。

クリスマスアドベントは2013年に博多駅前広場で初開催され、現在は「光」「音」「芸術」を柱に名称を刷新して福岡の冬の一大イベントとして定着している。今回の対談では、ウクライナの食文化を福岡のイベントに取り入れ、販売を通じた支援スキームを構築する経緯が詳述された。

ウクライナと九州をつなぐ「食」の架け橋 画像 2

開催の歴史と今年の特徴

佐伯氏は、2001年の大学在学中にドイツのクリスマスマーケットを訪れた経験を原点に、2013年の博多での初開催を実現した経緯を語った。2023年には光・音・芸術の三本柱を掲げ「クリスマスアドベント」としてリブランディングし、福岡発のクリスマス文化を育てる取り組みを進めている。

2025年の開催は13回目にあたり、期間中は福岡市内の複数会場で多様なプログラムが実施される。代表的な催しとして、天神中央公園での無料サーカスショーReverie(リヴェリー/11月21日~12月18日)、貴賓館前広場の130体以上のサンタ像展示とプロジェクションマッピング、上野恩賜公園・袴腰広場での「東京クリスマスアドベント in Ueno Park」などが示された。

  • Reverie(リヴェリー):11月21日~12月18日、天神中央公園。1日2ステージ、月曜・火曜は休演。1回30分、空中アクロバットや空中ブランコを実施。
  • 貴賓館前広場:130体超のサンタ像展示、プロジェクションマッピングを実施。
  • 東京会場:上野恩賜公園・袴腰広場にて開催。
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ウクライナ出身・ソフィア・ユルチェンコさんの歩みと料理への想い

ソフィア・ユルチェンコさんはキーウ国立言語大学の日本文献学科で学び、その後日本経済大学に進学、2025年に岩田産業に入社した。幼少期から日本に憧れを持ち、戦争によって人生が大きく変わる中でも、日本で暮らす夢をあきらめず、文化交流の手段として「食」に着目したという。

ソーニャさんは、ウクライナ料理を紹介することは自国の文化的誇りとアイデンティティを伝える行為であり、特に代表的な料理であるボルシチはウクライナの家庭文化と深く結びついていると説明した。ボルシチはロシア料理と混同されることがあるが、2022年にはユネスコがウクライナのボルシュ調理文化を無形文化遺産の緊急保護対象として登録しており、文化保護の文脈で重要性が高まっている。

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料理と文化の関係性

ソーニャさんは、ウクライナの食文化が家族の絆や助け合いの精神を反映していることを強調した。ウクライナでは来客を手厚くもてなす習慣があり、「テーブルが崩れるほどのごちそう」という表現に見られるように、豊かに振る舞うことが幸福や幸運を分かち合う文化的行為とされている。

またウクライナワインの歴史にも触れ、紀元前4世紀から続くワイン作りの伝統と現在の技術革新が融合して、個性的で高品質なワインが生産されている点を紹介した。食を通じた文化の伝達は、平和と相互理解の基盤となるという考えが示された。

学歴
キーウ国立言語大学(日本文献学科)/日本経済大学
入社
岩田産業(2025年春より勤務)
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企業の連携と支援の仕組み — 岩田産業とサエキジャパンの取り組み

岩田産業は業務用食品の卸売企業として九州を中心にホテル、レストラン、カフェデリカ、学校給食、病院給食などへプロ商材を提供している。岩田産業代表取締役の岩田章正氏は、日本ソムリエ協会の認定ソムリエやフランスチーズ鑑評騎士の会シュバリエの資格を有し、「食を通じて九州を元気に!」を信条としている。

岩田産業グループは社員約1,800名、営業車両約400台を運行しており、対談時点で来年に55周年を迎えられそうだと述べた。コロナ禍の影響で厳しい状況を経験したが、取引先とともに逆境を乗り越えた経緯も語られた。

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支援の具体的な流れと経緯

経緯としては、日本経済大学がキーウ国立言語大学との交換留学で毎年2名を受け入れていたところ、2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻により状況が一変し、交流は中止せざるを得なくなった。しかしその後、避難学生64名の受け入れ要請があり、日本経済大学は人命最優先で受け入れを決定した。

岩田産業は、まずお米の提供など直接支援を行い、2022年からはお中元・お歳暮ギフト販売の売上1%を日本経済大学へ寄付する仕組みを始めた。2018年や2020年の豪雨、2016年の熊本地震での被災経験から、受けた恩を返すという企業姿勢が背景にあると説明された。

  • 2022年:避難学生受け入れ支援の開始、食料支援(お米の提供)
  • 2022年以降:ギフト販売の売上1%を寄付という継続支援スキームの開始
  • 2023年:インターンシップ受け入れ、マリンメッセ福岡のフードフェアでウクライナブース出展

インターンシップでの活動やフードフェアでの出店を通じ、メディアでの発言が共鳴を生み、参加した留学生の一人であったソーニャさんが岩田産業入社へとつながった。岩田産業とソーニャさんは協働でウクライナ料理のメニュー化を進め、地産地消の視点も取り入れながら商品開発を行った。

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販売メニュー、イベントでの提供方法と支援の受け渡し

今回のクリスマスアドベントの会場では、ウクライナ料理としてボルシチピリシキ(ロシア語ではピロシキ)が販売される。販売は岩田産業とサエキジャパンの協力により行われ、売上の一部は日本経済大学のウクライナ人留学生支援金に充てられるという仕組みが説明された。

佐伯氏は、食べることが支援につながること、クリスマスをより多文化で豊かな場にしたいという意図を語った。岩田氏は、外食・中食が日常生活に欠かせない要素であることから、食を通して負担を感じずに支援ができる仕組みの重要性を強調した。

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商品開発と販売体制

岩田産業とソーニャさんは共同でオリジナルのボルシチとピリシキを開発した。社内での試作や議論を経て完成した商品は、まずクリスマスアドベントで販売し、広く一般にウクライナ料理を紹介する機会とする予定である。

販売時の具体的な配分や支援金の受け渡しについては、売上の一部を日本経済大学へ寄付し、その資金がウクライナ人留学生の支援に使われる形態が取られる。販売現場では、料理を提供するだけでなく、文化的背景や料理の由来を伝える説明も行われる予定である。

  1. 販売メニュー:ボルシチ、ピリシキ
  2. 販売期間:クリスマスアドベント期間中(各会場の開催日程に準拠)
  3. 支援スキーム:売上の一部を日本経済大学を通じウクライナ人学生支援金へ寄付

佐伯氏は、かつてクリスマスアドベントにウクライナから出店者が来ていたことを振り返り、今回の取り組みで料理が「幸運を運ぶ存在」として来場者の平和や幸福を願う象徴になればよいと述べた。ソーニャさんは、食を通じた文化交流が相互理解と平和に寄与するとのメッセージを伝えた。

記事内容の要点
項目 内容
発表日 2025年12月10日 13時45分(株式会社岩田産業グループホールディングス発表)
主催・運営 株式会社サエキジャパン(代表取締役 佐伯岳大)/株式会社岩田産業(代表取締役 岩田章正)との連携
出展・販売メニュー ウクライナ料理:ボルシチ、ピリシキ(ピロシキ)
販売目的 料理の普及と売上の一部を日本経済大学のウクライナ人留学生支援金へ寄付
イベント開催例 2013年博多駅前広場初開催。2025年は13回目。天神中央公園Reverie(11/21~12/18)、貴賓館前広場サンタ像展示+プロジェクションマッピング、上野恩賜公園・袴腰広場での東京会場など
背景 2022年ロシアによるウクライナ侵攻を受け、日本経済大学が避難学生64名を受け入れ。岩田産業は食料提供と継続的寄付(ギフト売上1%)で支援
登壇者等 佐伯岳大(サエキジャパン代表)、岩田章正(岩田産業代表)、ソフィア・ユルチェンコ(ウクライナ出身、岩田産業入社予定)
関連リンク 岩田産業 事業紹介ページ: https://iwatasangyo.co.jp/business/iwata-sangyo/

本件は、地域のイベント運営と企業の国際支援が「食」を媒介に結び付いた事例として具体的な仕組みが示された。クリスマスアドベントという場を通じて、ウクライナの食文化が紹介され、その対価の一部が支援金に充てられる構図は、文化交流と社会貢献を同時に進める取り組みとして注目される。

上記の内容は、対談で示された発言と各社の取り組みを整理したものである。関連情報や開催詳細は主催者の発表や公式サイトで確認することが望ましい。

参考リンク: