花巻で中干し延長を実証、すかいらーく等と連携し環境価値化
ベストカレンダー編集部
2025年12月10日 11:48
花巻で中干し延長実証
開催日:12月10日
岩手・花巻と横手で始まった、現場に根ざしたカーボンインセットの取り組み
Green Carbon株式会社は、株式会社すかいらーくホールディングス、兼松株式会社、ライズみちのく販売株式会社、花巻マイブランド研究会および農事組合法人きずなと連携し、岩手県花巻市の圃場を中心に、水田由来メタン削減を目的としたカーボンインセットに基づく事業を実施しています。本取り組みはリリース発表日時として2025年12月10日10時00分に公表されました。
本文冒頭には岩手県花巻市・横手市での取り組みとして紹介されていますが、今回の具体的な圃場での実施は花巻市における事例として進められており、横手市はエリアとしての関連記載がある点を踏まえて、地域全体での展開可能性が検討されていることが示されています。
背景:水田由来メタンの重要性と政府方針
農林水産省によれば、水稲栽培で発生するメタンガスは日本全体のメタン排出量の約4割を占めます。多くは湛水期間に土壌中のメタン生成菌が稲藁や肥料などの有機物を分解する過程で発生するものです。
政府が掲げる「緑の食料戦略システム」においては、農林水産分野でのゼロエミッション達成と持続的発展に向けた取り組みが位置づけられており、水田メタンの発生抑制はその重要な一環です。具体的な手法としては、中干し期間を慣行比で+7日間延長することにより、約3割の削減が見込まれるとされています。
手法の詳細とカーボンクレジット化の仕組み
本取り組みでは、水稲栽培工程における中干し期間の延長を実施し、水田由来メタンの発生を抑制します。延長した中干しによる削減効果は、J-クレジット制度の方法論AG-005「水稲栽培における中干し期間の延長」に基づいて算定され、GHG削減量をカーボンクレジットとして創出します。
創出されたクレジットは、価格の70%相当を生産者へ還元する仕組みが構築されており、削減効果の可視化と生産者への還元を通じて、持続可能な農業経営と環境価値創出の両立を目指します。
ステップと運用フロー
取り組みの実施フローは現場の農作業工程に組み込まれる形で運用されます。具体的には田んぼの中干しを通常より7日以上延長する管理を行い、その管理記録と圃場情報を基に削減量を算定、J-クレジットの方法論に従ってクレジットを生成します。
実施にあたっては、生産者による栽培管理の変更、発生抑制効果の検証、クレジットの申請・登録・販売の各プロセスが必要であり、Green Carbonがこれらの工程を支援する形で進められます。
- 現地実施:中干し期間の延長(慣行比+7日間以上)
- データ収集:圃場管理記録や生産量等の記録保存
- 算定と認証:J-クレジット方法論(AG-005)に基づく削減量算定
- クレジット創出:登録後のクレジット販売と収益配分(生産者70%)
- 製品供給:削減に貢献した米を「環境配慮米」としてセット供給
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方法論 | J-クレジット AG-005 「水稲栽培における中干し期間の延長」 |
| 削減手段 | 中干し期間を通常より7日間以上延長 |
| 生産者還元 | クレジット価格の70%相当を生産者へ還元 |
| 製品供給方式 | 「環境配慮米」として生産米を環境価値とセットで供給 |
連携企業とGreen Carbonの役割
本プロジェクトは複数の企業・組織が各々の役割を担いつつ連携して進められています。すかいらーくグループは本取り組みのサプライチェーン側での受け皿に位置付けられており、兼松やライズみちのく販売、地域の生産者らと共同で運営しています。
Green Carbonは、カーボンクレジットの創出・登録・販売を含むプロジェクト全体の技術的・事務的支援を提供し、圃場レベルでの実施管理やクレジット化に関わる手続き全般を補助します。また、Green Carbonはクレジット創出・申請・販売をワンプラットフォームで完結するサービス「Agreen(アグリーン)」を提供し、創出者の工数を削減する仕組みを持っています。
参加企業の概要
- 株式会社すかいらーくホールディングス
- 代表者:代表取締役会長CEO 谷 真/代表取締役社長COO 金谷 実。所在地:東京都武蔵野市西久保1-25-8(三鷹 第3オフィス)。設立:1962年4月4日。事業:フードサービス事業全般。
- 兼松株式会社
- 代表者:代表取締役社長 宮部 佳也。所在地:東京都千代田区丸の内2-7-2 JPタワー。創業:1889年8月15日。事業:商社機能を活かした多岐にわたる商品・サービスの提供。
- ライズみちのく販売株式会社
- 代表者:代表取締役社長 奥本 浩之。所在地:岩手県北上市藤沢18-138-5。創業:1996年10月1日。事業:東北米の集荷・流通・販売を一気通貫で実施。
- Green Carbon株式会社
- 代表者:代表取締役 大北 潤。所在地:東京都千代田区麹町2-3-2 半蔵門PREX North 9F。設立:2019年12月。事業:カーボンクレジット創出販売、農業関連事業、環境関連事業、ESGコンサルティング等。
Green Carbonは国内外でネイチャーベースのクレジット創出に取り組んでおり、対象領域は水田、バイオ炭、森林保全、カーボンファーミング、マングローブ植林など多岐にわたります。国内の水田に関しては、2023年度に日本初かつ最大級となる約6,220tのJ-クレジット認証を取得しており、2024年度には約40,000ha(約80,000t)への拡大を予定している点も示されています。
また、Green Carbonは外部との情報共有や問い合わせ窓口として次のリンクを案内しています:問い合わせ、および会社案内ダウンロードページ:会社概要ダウンロード。
プロジェクトの意義と整理
本取り組みは、企業が自社のバリューチェーン内で温室効果ガス排出を削減・吸収する「カーボンインセット」の概念を実践に移す先行事例です。メタン排出源となる水田の管理変更による削減効果をクレジット化し、その経済的価値を生産者へ直接還元することで、環境負荷低減と地域農業の収益性向上を同時に図る枠組みを示しています。
取り組みを通じて創出される「環境配慮米」は、環境価値と生産物をセットで供給するスキームにより、企業側の脱炭素化対応と、地域農業の価値向上・持続可能な経営の確立を両立することが期待されます。
関連情報と連絡先
本リリースに関する詳細や問い合わせ先は以下の通りです。問い合わせや資料ダウンロードは公式サイトの該当ページから行えます。
- 問い合わせ:https://green-carbon.co.jp/contact/
- 会社概要ダウンロード:https://green-carbon.co.jp/download-form/
加えて、Green Carbonの情報発信は複数のSNSやメディアで行われています。例としてCarbon Credits Journal、LinkedIn、Facebook、X、Wantedly、YouTube、note等が挙げられます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年12月10日 10:00 |
| 実施地域 | 岩手県(花巻市・ 横手市の記載あり、圃場実施は花巻市中心) |
| 参加組織 | Green Carbon、株式会社すかいらーくホールディングス、兼松株式会社、ライズみちのく販売、花巻マイブランド研究会、農事組合法人きずな |
| 主要手法 | 中干し期間の延長(慣行比+7日間以上)による水田メタン削減 |
| クレジット制度 | J-クレジット(方法論:AG-005) |
| 生産者還元 | クレジット価格の70%相当を生産者へ還元 |
| Green Carbonの関連実績 | 2023年度に国内水田で約6,220tのJ-クレジット認証、2024年度は約40,000ha(約80,000t)への拡大予定 |
| 問い合わせ/資料 | 問い合わせ、会社概要ダウンロード |
本記事では、Green Carbonが中心となる今回のカーボンインセット事例の目的、手法、参加企業の構成、生産者への還元仕組み、制度的根拠および関連する会社情報を整理して提示しました。プロジェクトは現場での管理変更を通じて温室効果ガスの削減を目指し、その削減を経済的価値に変換して地域の農業と企業側の脱炭素ニーズを両立させるスキームとして位置づけられます。