Helical Fusionとアオキが日本初のフュージョン電力契約を締結
ベストカレンダー編集部
2025年12月8日 16:08
フュージョン電力契約締結
開催日:12月8日
フュージョン電力の実用化が具体化 − 日本初の電力売買契約の意義
2025年12月8日12時、株式会社Helical Fusion(本社:東京都中央区、代表:田口昂哉)と株式会社アオキスーパー(本社:愛知県名古屋市、代表:青木俊道)は、日本で初めてとなるフュージョン(核融合)エネルギーによる電力売買契約を締結したと発表しました。本契約は、フュージョンエネルギーを提供する側と日々大量の電力を必要とする需要家との間で結ばれた国内初の商業的な電力取引として位置づけられます。
契約締結を記念して行われた記者会見は、STATION Aiで開催され、Helical Fusionの田口昂哉代表取締役CEOとアオキスーパーの河野正幸常務取締役(管理本部長)が握手を交わす場面が報道用素材として公開されました。発表では、本契約が単なる技術実証を超えて、社会実装に向けた“需要側”の受け入れを示す重要な一歩であることが強調されました。
締結の背景と発表日程
本プレスリリースは2025年12月8日に出され、Helical Fusionのヘリカル型核融合炉を用いたヘリックス計画(Helix Program)に基づく取り組みの一環として位置付けられます。アオキスーパーは2025年7月に同社へ出資しており、出資に続く需要家としての電力売買契約締結という流れが示されました。
会見および発表資料では、契約によってHelical Fusionの開発が「出口」を得た点、ならびにアオキスーパー側が持つエネルギー需要と気候変動への対応という観点からの整合性が説明されました。両社の代表者によるコメントも正式に公表されています。
ヘリックス計画(Helix Program):技術戦略とロードマップ
Helical Fusionは2021年に創業した企業で、大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 核融合科学研究所の研究成果をベースにしたヘリカル型核融合炉の実用化を目指しています。ヘリカル方式は日本独自の炉型で、長年の研究に基づいて商用発電所に適した性質を備えると説明されています。
Helix Programでは、実用発電に必要な要素技術を二段階で実証する計画が掲げられており、2020年代中に「高温超伝導マグネット」と「ブランケット兼ダイバータ」の個別実証を完了すること、2030年代中に統合実証装置であるHelix HARUKAによる統合実証を行い、発電初号機Helix KANATAで世界初の実用発電を達成する計画が示されています。
商用核融合炉に求められる三要件
記事内では、核融合炉を発電所として商用利用するために満たすべき三つの要件が明確に示されています。これらは単なる研究の達成ではなく、ベースロード電源としての信頼性や運用性を確保するための基準です。
- 定常運転:24時間365日稼働可能な安定性
- 正味発電:プラント内消費を差し引いて外部に電力を供給できること
- 保守性:メンテナンスが実施可能で長期運用に耐える設計
Helix Programは、これらの三要件を「今ある技術」で実現可能と表明している点を強調しており、他方式と比較してヘリカル方式が商用発電に適するとの見解を示しています。
技術体制と資金支援
Helical Fusionは炉設計の専門性をコアに、国立研究所出身の専門家や安全設計、人材を擁しています。超伝導など核融合用先端技術に関しては文部科学省から20億円の補助を受けるなど、技術開発を加速する外部支援もあります。
また、2025年には経済産業省が運営するスタートアップ支援プログラム「J-Startup」にも選出されており、官民両面での支援体制も整いつつあることが示されています。これらは2030年代の実証・実用化を視野に入れた戦略的な基盤です。
アオキスーパーの参画と電力需要側から見た実務的意義
アオキスーパーは1941年創業の地域密着型スーパーマーケットで、愛知県内に50店舗を展開しています。店舗運営においては冷蔵・冷凍設備をはじめとするエネルギー消費量が大きく、地球温暖化による農水産物への影響を深刻な課題として認識しています。
同社は2025年7月にHelical Fusionへの出資を行い、その延長線上で需要家として電力売買契約を締結しました。出資と契約の両面で参画することで、導入側の視点からフュージョンエネルギーの社会実装にコミットする姿勢を示しています。
代表者コメントの要旨
Helical Fusion代表取締役CEOの田口昂哉氏は、今回の契約が「ユーザー側からの期待が具体化」したことを示すと述べ、これが開発・投資の『出口』を明確にする重要なマイルストーンであると説明しました。田口氏は、本契約をきっかけに開発と投資の好循環が生まれることを期待しています。
アオキスーパー代表取締役社長の青木俊道氏は、スーパーマーケット業のエネルギー課題と気候変動の影響を背景に、出資に加え需給側としての契約締結に踏み切った意図を示しています。冷蔵・冷凍などの高負荷設備に対する安定的でクリーンな電力供給を重視する立場からの判断です。
Helix Programパートナリングと産業連携
Helical Fusionは「Helix Programパートナリングプロジェクト」を通じて、ものづくりから小売業までの産業パートナーを募り、サプライチェーン全体を日本から構築する方針を示しています。2025年7月以降、日本各地でパートナー募集イベントを実施しています。
発表資料には愛知で開催された第1回のパートナリングイベントの様子も紹介され、地域企業や分野横断的な連携によってフュージョンエネルギー産業を形成していく戦略が説明されました。
背景となる国際・国内情勢と市場見通し
プレスリリースでは、世界の電力需要の増加や気候変動がフュージョンエネルギーの社会実装の必要性を高めている点が整理されています。国際エネルギー機関(IEA)の見通しでは世界人口の増加や生成AI普及による電力需要の増加が指摘され(World Energy Outlook 2023)、既存の発電手段のみでは対応が難しいとの見方が示されています。
また、商用フュージョンプラント建設および電力市場は2050年までに年間5500億ドル規模に成長するとの試算(FusionX/Helixos report)も引用され、世界的な開発競争と同時に大規模産業化の可能性が述べられています。
国内の政策支援
日本国内では、2025年10月に発足した新政権の成長戦略において「次世代革新炉や核融合エネルギーの早期社会実装」が明記され、内閣府の「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」改定により2030年代の発電実証を目標としたロードマップが提示されました。
さらに政府はフュージョンエネルギーを重点投資対象に位置付け、11月には1,000億円超の予算計上を進めるなど支援を具体化しています。経済産業省内に「フュージョンエネルギー室」が設置され、産学官の協調で産業化の体制整備が進行中です。
- 参考文献・試算
- 1) IEA World Energy Outlook 2023
- 2) FusionX/Helixos report: Global Fusion Market Analysis
まとめ:契約の主要ポイントと今後の位置付け
本記事では、Helical Fusionとアオキスーパーによる日本初のフュージョンエネルギーを対象とした電力売買契約の発表内容を整理しました。契約は2025年12月8日に公表され、Helix Programによる実用発電の道筋と需要家側からの受け入れが具体化したことを示しています。
以下の表に、本リリースで示された主要事項を整理します。表は関係者、日付、計画の主要要素、技術的要件、支援・資金情報などを網羅しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年12月8日 12:00 |
| 当事者 | Helical Fusion(代表:田口昂哉)/アオキスーパー(代表:青木俊道) |
| 契約の性格 | 国内初のフュージョンエネルギーを対象とした電力売買契約 |
| 会見開催場所 | STATION Ai |
| Helical Fusionの設立 | 2021年10月(国立研究所の成果を活用したスピンアウト) |
| ヘリックス計画の主要マイルストーン | 2020年代中:高温超伝導マグネット、ブランケット兼ダイバータの個別実証。2030年代中:Helix HARUKAで統合実証、Helix KANATAで発電初号機。 |
| 商用核融合炉の三要件 | ①定常運転(24時間365日)②正味発電(外部供給)③保守性(メンテナンス可能) |
| アオキスーパーの概要 | 創業1941年、愛知県内に食品スーパー50店舗を展開。2025年7月にHelical Fusionへ出資。 |
| 資金・支援の状況 | 文部科学省から超伝導等の先端技術開発に対し20億円の補助。政府はフュージョンを重点投資分野に指定し、11月に1,000億円超の予算計上。 |
| 公開された連絡先 | Helical Fusion 広報:contact@helicalfusion.com |
| 関連URL | https://www.helicalfusion.com / https://www.youtube.com/@HelicalFusion / PR一覧:https://prtimes.jp/main/html/searchrlp/company_id/89262 |
本契約は、技術側が実用発電に求める要件を満たすことを目指す計画と、需要家側が将来的な供給源としての受け入れを示した両面の合意点を明確にしたものです。今後はHelix Programに基づく技術実証の進展と、産業パートナーの拡大によって、フュージョンエネルギーの社会実装に向けた動きが続くことが想定されます。
以上が発表内容の要点整理です。各社の発表文および公開資料に基づいて構成しています。