11/25札幌展示|Space CubicsのハイエンドOBC
ベストカレンダー編集部
2025年11月24日 22:01
SC-OBC発表展示
開催日:11月25日
New Space時代の要求に応えるハイエンドオンボードコンピュータ
北海道札幌市を拠点とするJAXAスタートアップ、株式会社Space Cubicsは、宇宙機向けハイエンドオンボードコンピュータ(OBC)「SC-OBC Module V1」を発表しました。発表日は2025年11月24日 20時32分で、同社は宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で検討を行った成果をベースに本製品を開発しました。
SC-OBC Module V1は、AMD社のVersal Adaptive SoCをメインプロセッサに採用したヘテロジニアスプラットフォームであり、CPU(スカラ処理)、FPGA(ハードウェアアクセラレーション)、AI Engine(ベクトル処理)を統合しています。これにより、光学センサー、合成開口レーダー(SAR)、LiDARなどが生成する大容量データの高速入力、エッジ処理、記録といった一連の処理を宇宙機上で効率的に行うことが可能になります。
同モジュールは2026年春の正式発売を予定しており、発売に先立って2025年11月25日より北海道・札幌市で開催される「第69回 宇宙科学技術連合講演会」(ブース番号: C-22)で開発中の実機が展示されます。さらに、月面資源開発に取り組む株式会社ispaceが2028年打ち上げ予定の国産次世代型月着陸船(シリーズ3ランダー)に採用される見込みです。
発表の背景には、近年の観測機器の高性能化に伴うデータ増加と、衛星—地上間通信帯域の制約があり、軌道上でのリアルタイム処理(エッジ処理)の重要性が高まっている点があります。SC-OBC Module V1はこうしたニーズに応えるための製品設計を行っています。
技術的特徴と耐故障性の設計
SC-OBC Module V1の中核はAMDのVersal Adaptive SoCです。VersalはCPUコア、FPGAロジック、AI Engineを単一プラットフォームで提供するため、画像処理やAI推論など計算負荷の高いタスクを効率的に処理できます。Linux(Cortex-A72上)によるマルチコア処理は高い汎用計算能力を提供し、OpenCVや各種機械学習フレームワークを活用することで既存ライブラリを用いた迅速な開発が可能です。
大容量データの高速入力、ベクトル演算を伴うエッジ処理、大容量ストレージへの記録を組み合わせたワークフローを想定し、ハードウェアとソフトウェアが連携して処理を最適化する設計が採られています。これにより、データ転送量の削減やリアルタイム解析の実現が期待されます。
高信頼性を支える冗長化と監視機能
リアルタイム性と機能安全が要求される姿勢制御や電源管理といった処理には、Arm Cortex-R5FコアをLock-Stepモードで動作させ、Zephyr RTOS上で確実に処理を実行するアーキテクチャを採用しています。Lock-Step動作により誤動作検出力が向上し、安全性の担保に寄与します。
さらにメインプロセッサ(Versal)とは別に、SEU(Single Event Upset)耐性に優れたFlashベースFPGAであるMicrochip IGLOO2をSafety Processorとして搭載しています。Safety Processorは三重冗長化(TMR)されたロジックで構築され、Versalのヘルスモニタリング、電源のパワーサイクル制御、温度・電圧・電流の監視を行います。これによりシステムの異常を早期に検知し、恒久的な故障を回避する運用が可能になります。
柔軟性と開発効率を支えるモジュール構成
SC-OBC Module V1は、コンピュータとして必要最小限の機能をモジュールに集積し、ミッションごとに異なるインターフェースをキャリアボード上で柔軟に実装できる構成を採っています。これによりハードウェアの再利用性が高まり、特定ミッション向けのカスタマイズをキャリアボードで行うことが可能です。
また、フライトモデルに加えて開発用モデルが用意されており、ソフトウェア互換性を維持しつつ開発コストを抑える体制が整備されています。これによりユーザーは既存のソフトウェア資産を再利用し、開発効率を向上させることができます。
想定される用途とパートナーの評価
SC-OBC Module V1は地球観測衛星やリモートセンシング衛星、探査機(惑星探査・月探査)など幅広い宇宙機をターゲットとしています。特に高分解能画像やSARデータ、LiDARデータなど大容量かつ計算負荷の高いデータを扱うミッションでの利用が想定されています。
遠距離通信や帯域が限られた環境では、必要な情報のみを地上へ送信するための軌道上での事前処理が重要です。SC-OBC Module V1はそのようなエッジ処理を現場で実行できる能力を備えています。
- 地球観測・リモートセンシング: 高分解能画像やSARをオンボードで処理し、通信量を削減。
- 探査機(惑星・月): 帯域制約下でのデータ前処理や重要情報の抽出。
- その他応用: 宇宙ロボットや長期軌道運用を行う衛星でのAI推論、リアルタイム解析。
発表資料には、Block Diagram(ブロック図)が提示されており、システム全体の機能分担やインターフェース構成が示されています。展示時にはブロック図を含めた資料や実機の外観・構成が確認できる見込みです。
株式会社ispaceの代表取締役CEO & Founder、袴田武史氏はSC-OBC Module V1について次のようにコメントしています。引用は原文の趣旨を保持しています。
株式会社ispaceは、この度のSpace Cubics社によるNew Space向けのハイエンドオンボードコンピュータ『SC-OBC Module V1』の発表を心より歓迎いたします。ispaceのミッション1、ミッション2の開発でも重要な役割を担っていただいたSpace Cubics社が、New Space時代のニーズに応える新製品をJAXAとの共同検討結果をもとに発表されたことを大変嬉しく思います。
『SC-OBC Module V1』は、高度処理能力と極めて高い信頼性を両立しています。これは、大量のセンサーデータをリアルタイムに処理する「エッジ処理」が成功の鍵を握る、当社が今後予定している月ミッションの基幹コンポーネントとなる予定です。
ispaceは、この先進的な宇宙用コンピュータが持つ堅牢性、柔軟性、そして高い処理能力を高く評価しており、今後、Space Cubics社との連携をさらに強化し、宇宙開発の新たなステージを共に切り拓いていくことを楽しみにしています。
公開・展示スケジュール、製品情報と会社概要
SC-OBC Module V1は2026年春の正式発売を予定しています。発売前の公開としては、2025年11月25日から北海道札幌市で開催される「第69回 宇宙科学技術連合講演会」(ブース番号: C-22)で開発中のモジュールが展示されます。発表文には製品情報ページおよびダウンロード可能なプレスリリース素材が用意されている旨が示されています。
以下は発表資料に含まれる主要な企業情報および問い合わせ先です。これらは製品導入検討や技術的問合せに必要な基本情報を網羅しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年11月24日 20時32分 |
| 製品名 | SC-OBC Module V1 |
| 主要プロセッサ | AMD Versal Adaptive SoC(CPU、FPGA、AI Engine 統合) |
| 安全処理プロセッサ | Microchip IGLOO2(FlashベースFPGA、TMR構成、SEU耐性) |
| リアルタイム処理 | Arm Cortex-R5F(Lock-Step) + Zephyr RTOS |
| OS / ソフトウェア基盤 | Linux(Cortex-A72上)、OpenCV・各種MLフレームワーク対応 |
| 発売予定 | 2026年春(正式発売) |
| 展示 | 第69回 宇宙科学技術連合講演会(札幌) 2025年11月25日〜 ブース: C-22 |
| 採用予定ミッション | 株式会社ispaceの月着陸船(シリーズ3ランダー、打上げ予定: 2028年) |
| 会社名 | 株式会社Space Cubics |
| 設立 | 2018年 |
| 所在地 | 北海道札幌市中央区南3条東2丁目1 |
| 代表者 | 代表取締役 荘司 靖 |
| 事業内容 | 宇宙用コンピュータの開発・製造・販売 等 |
| 問い合わせ | 広報担当:森島 / E-mail: marketing@spacecubics.com / Tel: 050-7112-6213 |
| URL | https://spacecubics.com/ |
上記の表は本記事で取り上げた主要項目を整理したものです。SC-OBC Module V1はハードウェア構成とソフトウェア基盤の双方でエッジ処理と高信頼性を両立させる設計がなされており、様々な宇宙ミッションでの利用が想定されています。展示情報や製品詳細ページを参照することで、より具体的な技術仕様や導入条件を確認できます。
本記事では、プレスリリースに含まれる発表日時、製品の技術的特徴、信頼性設計、想定ミッション、採用予定情報、展示・発売スケジュール、株式会社Space Cubicsの会社概要および問合せ先を網羅的に整理しました。導入や技術的検討を行う際は、掲載の問い合わせ先を通じて直接確認することが推奨されます。