12/25刊行『薔薇の名前［完全版］』特別箔押しカバーで発売

『薔薇の名前［完全版］』、特別仕様の初回出荷分を伴って刊行へ

ウンベルト・エーコの小説『薔薇の名前』の［完全版］が、株式会社東京創元社より単行本で刊行される予定です。刊行日は2025年12月25日頃と発表されており、刊行に先立ち2025年11月20日09時30分に同社からの告知が出ています。

本刊行においては、初回出荷分限定の特別仕様として特別カラーの箔押しカバーが採用されます。初回配本分限定の仕様であるため、初回配本の枠内でのみ本特別仕様のカバーが提供されます。カバー画像については書影と同時に公開予定とされています。

初回配本の仕様詳細

初回配本分は高級感のある箔押し表紙を採用しており、その配本に限り瀟洒な特別カラーの箔押しが施されます。箔押し仕様は物理的な上製本の装丁に対する表層処理で、紙書籍としての外観や質感に影響します。

実際の仕様のイメージや書影は刊行に合わせて公開される予定です。初回配本分限定仕様であることから、初回出荷の範囲を過ぎると同一の特別カラー箔押しカバーは入手できない点が明記されています。

• 仕様：特別カラーの箔押しカバー（初回配本分限定）
• 刊行形態：単行本（四六判上製、上下巻）
• 書影公開：書影と同時に箔押しカバーの画像を公開予定

紙の完全版と電子書籍の同時発売について

今回の［完全版］では、紙の単行本と同時に電子書籍版を発売することが決定しました。旧版では電子書籍版が発売されていなかった点があり、今回の同時発売により紙と電子の両形態で同作に接することが可能となります。

紙書籍版、電子書籍版ともに現在予約受付中とされています。電子書籍の同時発売は、過去の版ではカバーされていなかった読者層に作品を届けることを意図した判断です。

電子書籍同時発売の意義

電子書籍の同時発売は、フォーマットの選択肢を拡大することで、アクセスの容易性や保存性、携帯性といった読書体験の幅を広げる効果が期待されます。旧版で電子化されていなかったことから、今回初めての電子版同時発売は注目されます。

出版形態の違いに伴う差異（装丁や付録の有無、版面設計など）については、電子版と紙版で仕様が異なる部分があり得ますが、本文の内容および今回収録される追加資料・訂正は両形態で反映されることが示されています。

［完全版］に収録される追加資料と本文の改訂点

12月刊行の［完全版］は、オリジナルの初版刊行後にエーコ自身や関係者が加えた資料や訂正を反映したものです。収録される追加資料には、エーコ自身が下書きした文書館の図面、修道士たちのスケッチ（ホルヘ・ダ・ブルゴス等の人物スケッチ）など、本文に付随する視覚的資料が含まれます。

また、エーコ自身による「『薔薇の名前』覚書」も収録されます。これらの資料は過去の訳出や刊行以後に存在した付記や訂正を含み、本文中に初版刊行後の折々に加えられた訂正を反映しています。上巻に収められた「二〇一二年版への付記」には、エーコ自身による歴史的事実の誤認の認知に関する記述も含まれます。

収録される主な追加資料

・エーコ自身が下書きした文書館の図面

・ホルヘ・ダ・ブルゴス等、個性的な修道士たちのスケッチ

・エーコによる「『薔薇の名前』覚書」

・初版刊行後に加えられた訂正の反映（本文の修訂を含む）

・上巻に加えられた「二〇一二年版への付記」

本文の構成と巻分け

［完全版］は上下二巻構成で刊行され、上巻には416ページ、下巻には528ページが予定されています。装丁と判型は現行版と同様の四六判上製での刊行となります。

版面に加えられた訂正や付録的資料は本文内に反映される形で収録されるため、既存の版を既に所有する読者にも参照価値の高い版となることが想定されます。

作品の来歴、評価と書誌情報

『薔薇の名前』はイタリア語原題 Il Nome della Rosa、1980年刊行のウンベルト・エーコの初めての小説です。刊行と同時にイタリア国内で話題となり、世界各国で翻訳されるベストセラーとなりました。全世界での累計発行部数は5,000万部を超えています。

1986年にはジャン＝ジャック・アノー監督、ショーン・コネリー主演による映画化が行われ、時代考証に著名な歴史学者ジャック・ル・ゴフも参加しました。日本では1987年に映画が公開され、翻訳刊行より前に大きな話題となりました。

受賞・評価（主なもの）

・イタリア：ストレーガ賞（受賞）

・フランス：メディシス賞（受賞）

・邦訳版（1990年）受賞歴：第26回日本翻訳出版文化賞、第1回BABEL国際翻訳大賞、第27回日本翻訳文化賞

・ミステリ分野での評価：「このミステリーがすごい！91」海外編第1位、週刊文春ミステリーベスト10／20世紀海外部門第2位、ほか多数のランキングや企画での高評価

これらの受賞・評価は本作が文学性とミステリ要素、学術的関心を兼ね備えた作品として国際的に広く支持されてきたことを示しています。今回の［完全版］刊行は、そのテキストと付随資料を集成した版としての位置づけが明確です。

書誌情報と流通に関する注意点

以下は東京創元社が公表している書誌情報です。判型、価格、ISBNなどは正式発表の通りに記載されています。刊行日は2025年12月25日頃となっていますが、地域や書店により前後する場合がある点が注記されています。

現時点で文庫化の予定はない旨が明記されており、四六判上製での刊行が継続されることが示されています。予約開始はウェブ上の書店および実店舗で既に開始されている旨の案内があります。

この記事では、刊行予定の『薔薇の名前［完全版］』に関する発表内容を整理して記載しました。本文と付随資料、初回配本限定の特別仕様、電子書籍の同時発売、そして書誌情報と受賞歴に関する情報を網羅しています。刊行日や流通に関する詳しい案内、書影の公開などは東京創元社の告知および関連リンクで随時更新されますので、そちらで最新の情報を確認することをお勧めします。