YKKがPHSの80%取得へ 建材と住宅設備の統合戦略

PHS株式譲渡契約

開催日:11月17日

今回の取引でPHSはどう変わるの?
YKKが設立する中間持株会社がPHS株式の80%を取得し、PHDは20%を保有。PHSは引き続きパナソニックブランドと社名を使用し、PHDの技術・知財も中長期的に活用されます。
いつから新体制で動き出すの?
契約は2025年11月17日に締結済みで、譲渡手続き完了は2026年3月末を予定。関係当局の承認等が前提で、2026年4月から新体制で事業を開始する見込みです。

YKKとパナソニックが構築する新たな戦略的パートナーシップの全容

2025年11月17日16時30分、YKK株式会社とパナソニック ホールディングス株式会社(PHD)は、PHDが100%保有するパナソニック ハウジングソリューションズ株式会社(PHS)に関する株式譲渡契約を締結しました。本件はYKKグループの建材事業を担うYKK AP株式会社(以下、YKK AP)とPHSが協働し、両社の強みを融合することで建築資材・住宅設備業界の競争力を高めることを目的としています。

契約内容の要点は、PHDが保有するPHS株式のうち80%をYKKが設立する中間持株会社が取得する点にあります。これによりPHSはYKKグループの一員となる一方、PHDは20%を引き続き保有し、両社で協働してPHS事業の経営を行います。PHSは引き続きパナソニックブランドおよび社名を使用し、PHDが保有する技術・知的財産も中長期的に活用される予定です。

株式譲渡の構造と補足事項

本件に先立ち、当該事業である建築資材・住宅設備事業を行っているPHDの各連結子会社および合弁会社の事業・資産等をPHSのもとへ集約します。これにより譲渡対象となる事業の包括的な再編が実施されます(※1)。

譲渡手続きは、関係当局の承認等を含む一般的な契約上の条件等を満たすことが前提となります。譲渡完了後の経営体制では、YKK側の出資によりPHSの成長に対する継続的な投資が期待されます。

提携の背景と両社がもたらす価値

国内の新設住宅着工戸数の減少、一方でリフォーム市場の拡大といった市場環境の変化に対応するため、両社は規模と技術、販売チャネルを組み合わせた戦略を模索してきました。YKK APは開口部(窓・ドア等)を中心としたアルミ建材を中核事業とし、住宅からビル、エクステリアまで幅広い商品群を提供しています。

PHSはパナソニックグループの住宅設備・建材の製造・販売・エンジニアリングを担っており、キッチンやトイレ、バスルームなどの住設機器に加え、インテリア建材や構造材まで幅広く取り扱っています。事業スローガンは「くらしの「ずっと」をつくる。“Green Housing”」で、環境性能や安全性を重視した製品・ソリューションを展開しています。

統合によるシナジーの詳細

統合後は、断熱・開口部を含めた総合的な製品・ソリューション提供が可能になり、サプライチェーン全体での競争力を強化することが見込まれます。これには戦略的なDX・AI活用に基づく生産性向上や設計・施工の最適化が含まれます。

YKK APとPHSを合わせた事業規模は約1兆円となり、建築物に要する建材の大部分をカバーする広範な商品群を統合的に提供できる点が大きな特長です。PHDはPHSの長期的成長のため、ノウハウとリソースを共有できるパートナーを選定した結果、YKKを最適な相手と判断しました。

手続きとスケジュール、契約上の条件

本株式譲渡契約締結後のスケジュールは、譲渡手続きの完了が2026年3月末、そして2026年4月より新体制での事業開始を予定しています。手続き完了までは関係当局の承認やその他契約上の条件等を満たすことが前提です。

本件では、PHDが引き続きPHS株式の20%を保有することで、ブランドや技術面での一定期間にわたる連携が維持されます。これによりPHSはパナソニックブランドおよび社名を継続して使用し、PHDの保有する技術・知的財産を中長期的に活用できる体制が組まれます。

注意点と条件

譲渡は関係当局の承認等を含む一般的な条件を満たす必要があり、最終的な実行はそれらの条件充足が前提となります。取引に関連する各種合意内容や資産の集約は、法的・会計的手続きに従って段階的に実施されます。

また、本件取引に先立ち実施される子会社・合弁会社の事業・資産等の集約は、譲渡対象事業を明確にするための重要な前提作業として位置づけられています(※1の内容を参照)。

YKK APとPHSの会社概要と比較

以下はYKK APとPHSの主要項目を整理したものです。それぞれの所在地、設立、事業開始、責任者、資本金、事業内容、連結売上高、連結従業員数、海外事業展開、国内外製造拠点、ショールーム数、主な子会社などの情報を含みます。

両社の企業規模や事業領域が重なりつつ補完関係にあることから、統合による製品ラインナップの拡充や販売チャネルの相互補完が期待されます。以下のデータは2025年3月期および2025年3月末時点の数値等を含みます。

会社名
YKK AP株式会社 / パナソニック ハウジングソリューションズ株式会社
所在地
東京都千代田区神田和泉町1番地 / 大阪府門真市大字門真1048番地
設立
1957年7月 / 2022年4月(※2:登記上の設立年月日は2021年2月25日)
事業開始
1959年11月(アルミ建材事業を開始) / 1958年5月(住宅用雨といを発売)
責任者
魚津 彰(代表取締役社長) / 山田 昌司(代表取締役 社長執行役員)
資本金
140億円 / 5億円
事業内容
窓、玄関ドア・引戸、フェンス、カーポートなどの住宅用商品や高・中・低層ビル用窓・サッシ・ドア・カーテンウォールなどのビル用商品、アルミ形材の設計・製造・施工・販売 / キッチン、トイレ、バスルーム、洗面、インテリア建材、内装ドア、収納、床材、宅配ボックス、雨とい、樹脂サッシ、外壁、屋根、エレベーター、構造材などの住宅設備・建材の開発・製造・施工・販売
連結売上高(2025年3月期)
5,616億円 / 4,795億円
連結従業員数(2025年3月末時点)
18,252名 / 10,939名
海外事業展開
12カ国/地域 / 4カ国/地域
国内外製造拠点
39拠点 / 29拠点(中国(杭州)拠点、JV含む)
国内ショールーム
15拠点(体感ショールーム含む、P-STAGEなどは含まない) / 74拠点(「住まいのショウルーム」59拠点、ビジネスユーザー向け15拠点)
主な子会社
株式会社YKK AP沖縄、株式会社プロス、株式会社イワブチ、株式会社YKK APラクシー、株式会社日東、YKK AP ヘルスケア株式会社、琉球YKK AP工業株式会社、YKK AP LANDSCAPE株式会社など(※海外関係会社24社を除く) / パナソニック リビング株式会社、パナソニック住宅設備株式会社、パナソニック内装建材株式会社、パナソニック エレベーター株式会社、パナソニック アーキスケルトンデザイン株式会社、パナソニックAWエンジニアリング株式会社、株式会社エクセルシャノン、ケイミュー株式会社、パナソニック ハウジングソリューションズ杭州有限会社など

関連情報や詳細は、YKK APの発表ページも参照できます(出典URL: https://www.ykkapglobal.com/ja/newsroom/releases/20251117)。

本記事の要点まとめ
項目 内容
契約締結日 2025年11月17日 16時30分(YKKとPHDが株式譲渡契約を締結)
譲渡割合 PHS株式のうち80%をYKKが設立する中間持株会社が取得、PHDは20%を保有
PHSのブランド使用 PHSは引き続きパナソニックブランドおよびPHSの社名を使用、PHDの技術・知的財産を中長期的に活用
事前整理 本件取引に先立ち、対象事業である建築資材・住宅設備事業のPHDの各連結子会社及び合弁会社の事業・資産等をPHSに集約(※1)
スケジュール 譲渡手続き完了:2026年3月末予定、新体制での事業開始:2026年4月予定(関係当局の承認等が前提)
統合後の事業規模 YKK APとPHSを合わせた事業規模は約1兆円
両社の主要数値(参考) YKK AP:連結売上高5,616億円、連結従業員18,252名/PHS:連結売上高4,795億円、連結従業員10,939名(いずれも2025年3月期または2025年3月末時点)
出典 YKK AP株式会社 発表資料(2025年11月17日)および関連会社データ

以上が本件株式譲渡契約の主要事項と両社の概要の整理です。契約の履行や譲渡手続きの完了は、関係当局の承認等の条件充足の下で進められる予定であり、その結果に基づき両社は製品ラインナップ、技術連携、サプライチェーンの強化を図る計画です。

注釈:※1 本件取引に先立ち、本件取引の対象事業である建築資材・住宅設備事業を行っているPHDの各連結子会社及び合弁会社の事業・資産等をPHSのもとに集約します。 / ※2 登記上の設立年月日は2021年2月25日です。

参考リンク: