佐々木敦新刊『メイド・イン・ジャパン』日本文化の輸出法
ベストカレンダー編集部
2025年11月17日 10:38
メイド・イン・ジャパン発売
開催日:11月17日
日本文化の“輸出”を問う一冊が示す問いと視点
佐々木敦による新刊『メイド・イン・ジャパン 日本文化を世界で売る方法』が、集英社新書から2025年11月17日(月)に刊行される。刊行は株式会社集英社のプレスリリース(2025年11月17日 09時00分)によるもので、電子版も同日発売となる。著者は批評家として音楽、映画、文学、演劇と幅広く活動しており、本書はその蓄積を背景に「日本文化が世界でどのように受容され、流通しうるか」を多角的に問う。
本書は単に現状分析をするだけでなく、具体的な作品群やアーティスト、作家、演出家らを素材にして、輸出可能な「日本らしさ」とは何か、英語という壁をどう扱うか、ローカル性と普遍性の関係をどう構築するかといった実務的かつ理論的問題に迫る。グローバル市場を念頭に置くビジネスパーソンにも示唆を与える視点を含むことがプレスリリースで強調されている。
本書が扱う主題の輪郭
本書では、K-POPの戦略的成功や、英語化の問題、海外から見出される「日本らしさ」、そしてローカルと普遍のせめぎ合いといったテーマが主要論点として設定される。音楽アーティストのNewJeansやXG、作家の村上春樹・多和田葉子、映画監督の濱口竜介・是枝裕和、劇作家・演出家の岡田利規といった多様な実践を通じて議論が展開される。
このような事例検討を通じて、著者は「日本製=メイド・イン・ジャパン」のカルチャーが向かう先と可能性を改めて問い直す。本書は戦後からの流れを踏まえつつ、今日のグローバル文化市場における実践論と批評の接点を提示する構成になっている。
章立てと各章の具体的な論点
プレスリリースは本書の目次を詳細に示している。序章と二部構成で、第一部は「日本文化はどう輸出されてきたか」、第二部は「日本文化はどう世界に根づくのか」という大きな枠組みになっている。各章は音楽、文学、映画、演劇といった領域ごとに具体例を挙げながら論を進める。
以下に目次を原文どおり列挙し、各章で扱う主たる議題を簡潔に整理する。
- 序章
- 「日本/文化」の条件を定める導入部。戦後以来の日本文化と世界の接点を概観し、議論の方向性を示す。
- 第一部 日本文化はどう輸出されてきたか
- 輸出の歴史的・戦略的側面を音楽や表象の観点から検証する。
- 第一章
- 「英語」の乗り越え方 ――K-POPは世界を目指す。K-POPの成功から学ぶ戦略的言語運用やプロダクションの仕組みを分析する。
- 第二章
- 日本文化と英語化 ――ニッポンの音楽は「世界」を目指す。音楽における英語導入の長所と短所を検討する。
- 第三章
- ニッポン人になるか? ガイジンになるか? ─XG vs. Idol。国籍やアイデンティティ表象の取り扱いが海外受容に与える影響を論じる。
- 第四章
- 「輸出可能」な日本らしさ ――GAKKO!・白塗り・ノスタルジー。特定の表象や美学がどのようにして国際的商品価値を獲得するかを検討する。
- 第五章
- 外から見出される「日本らしさ」――テクノ・ジャポニズム。外部視点からの発見が内向きな文化認識をどのように変えるかを見る。
- 補論
- 「洋楽離れ」から遠く離れて。グローバルな音楽受容の変化を補助的に論じる。
- 第二部 日本文化はどう世界に根づくのか
- ローカルな表現がどのようにして国際的な普遍性と交錯するかを考察する章群。
- 第六章
- 日本文化の「あいまい」さ ――川端康成 vs. 大江健三郎。文学的伝統の揺らぎとその国際的受容を比較する。
- 第七章
- 日本文学が海を越えるには ――村上春樹がノーベル文学賞を獲る日。翻訳や選考過程、国際的評価の機構について論じる。
- 第八章
- ローカルな普遍性はどう生まれるのか ――是枝裕和と濱口竜介。映画監督たちの作品論から、ローカルな題材が普遍性をもつ条件を探る。
- 第九章
- ローカルから「世界」を描く ――チェルフィッチュの「日本」。劇団チェルフィッチュを通じた演劇的翻訳と国際展開を検討する。
- 第一〇章
- 言語の越え方 ――チェルフィッチュの「日本語」。言語そのものがもつ表現力と越境の可能性を論じる。
- とりあえずの終章
- 日本文化はどこにいくのか? 総括的に問いを展開する終章。
- あとがき
- 執筆の背景や補足的な説明。
事例と対象の広がり
目次からも分かるように、本書は音楽(NewJeans、XG)、文学(村上春樹、多和田葉子)、映画(濱口竜介、是枝裕和)、演劇(岡田利規、チェルフィッチュ)といった多様な実践を横断的に扱う。これにより、単一ジャンルに留まらない横断的な議論が可能になっている。
また、「英語」「テクノ・ジャポニズム」「ノスタルジー」「白塗り」など、具体的なキーワードを軸に議論が進むため、読者は理論的な抽象と具象的な事例の往還を通じて理解を深めることができる。
著者と刊行情報――版元の意図と書誌データ
著者は佐々木 敦(ささき あつし)。1964年愛知県名古屋市生まれで、批評家、音楽レーベルHEADZ主宰、多目的スペースSCOOL共同オーナー、映画美学校言語表現コース「ことばの学校」主任講師、劇場創造アカデミー講師などを務め、文学、映画、音楽、演劇などで批評活動を行っている。主な著書には『「書くこと」の哲学 ことばの再履修』(講談社現代新書)、『ニッポンの思想 増補新版』(ちくま文庫)などがある。
書誌データは以下のとおりである。出版社は集英社新書で、同レーベルは1999年12月に創刊された。“知の水先案内人”をキャッチフレーズに、2025年時点で発刊25周年を迎えている点もプレスリリースで言及されている。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| タイトル | メイド・イン・ジャパン 日本文化を世界で売る方法 |
| 著者 | 佐々木敦 |
| 発売日 | 2025年11月17日(月) |
| 定価 | 1,034円(10%税込) |
| ページ数 | 240 |
| 判型 | 新書判 |
| ISBN | 978-4-08-721387-4 |
| 出版社 | 集英社新書(集英社) |
| 電子版 | 同日発売 |
| 版権表記 | (c)集英社 |
集英社新書の文脈と本書の位置づけ
集英社新書は「知識に裏付けされた知恵」を提供することをコンセプトに掲げ、時事的な話題や人物を掘り下げる企画を展開してきた。2025年時点でレーベル発刊25周年を迎え、本書はエンタテインメント性と知を接続する試みの一例として位置づけられている。
本書の刊行により、日本の文化輸出をめぐる公共的な議論に新たな資料と視座を提供することが期待される。紙版の販売価格や判型、ISBNなどの基本情報は上の表に整理した。
本書が提示する示唆と、記事の整理
プレスリリースに示された本書の主張は、いくつかのポイントに集約できる。まず、英語という言語的バリアの扱い方は単純な翻訳に留まらない。K-POPの事例が示すように、制作現場の構造、プロダクションの設計、マーケティング戦略が言語運用と一体化している点が重要である。
次に、「日本らしさ」は内側から規定されるものではなく、外部からの視点によって発見され、価値化される場合がある。テクノ・ジャポニズムや白塗り・ノスタルジーのような表象は、外部視点がはたす役割を考えさせる素材となる。さらに、ローカルな題材が普遍性を獲得する条件については、映画や演劇の具体的制作を通じた検証が必要であるという論点が提示される。
- 英語化は手段であり構造の問題であること。
- 「日本らしさ」は外部視点とのインタラクションで生まれること。
- ローカルな普遍性は表象・文脈・翻訳の関係性で成立すること。
これらの示唆は単に学術的な興味にとどまらず、実務的な戦略設計にも有用な示唆を含んでいる点が、プレスリリースで特に強調されている。
記事のまとめと重要データ一覧
以下に本稿で取り上げた情報を整理した表を示す。書誌情報、目次の主要構成、著者プロフィールの要点、発売情報などを一括で確認できるようにまとめている。
| 分類 | 内容(要点) |
|---|---|
| タイトル | メイド・イン・ジャパン 日本文化を世界で売る方法 |
| 著者 | 佐々木敦(批評家、1964年名古屋市生まれ、HEADZ主宰ほか) |
| 発売日 | 2025年11月17日(月) |
| 出版社 | 集英社新書(集英社) |
| 定価・判型 | 1,034円(10%税込)・新書判 |
| ページ数・ISBN | 240ページ・ISBN 978-4-08-721387-4 |
| 電子版 | 同日発売 |
| 主な取り上げ対象 | NewJeans、XG、村上春樹、多和田葉子、濱口竜介、是枝裕和、岡田利規、チェルフィッチュ等 |
| 主要テーマ | 英語化、K-POPの戦略、外から見出される日本らしさ、ローカルと普遍性の関係性 |
| レーベル情報 | 集英社新書は1999年12月創刊、2025年に発刊25周年 |
| プレスリリース発信元 | 株式会社集英社(2025年11月17日 09時00分) |
以上の通り、本書は日本文化の輸出と受容に関する多面的な問いを提示する書籍として刊行される。目次に示された個別の章は、具体的な事例分析と理論的考察をつなぎ合わせることで、現状の整理と今後の可能性を読み解く材料を提供している。