10月21日〜23日放送 ビクトル・エリセ特集|ザ・シネマ
ベストカレンダー編集部
2025年10月15日 14:44
ビクトル・エリセ特集放送
開催期間:10月21日〜10月23日
静謐な映像で記憶と時間をたどる、ビクトル・エリセ特集の意義
洋画専門チャンネル〈ザ・シネマ〉は、2025年10月21日から23日にかけて、スペインを代表する映画作家ビクトル・エリセの長編3作品を集めた特集番組「ザ・シネマメンバーズ セレクション【ビクトル・エリセ】」を放送する。今回のラインナップには、カンヌ国際映画祭において2023年に31年ぶりの新作として発表された『瞳をとじて』を含む3作品が並び、映像美と時間の扱い、記憶の重層性を改めて確認できる構成になっている。
この特集は、ザ・シネマのメンバーズがセレクトする「上質な映画」にフォーカスする枠組みのひとつであり、名匠エリセの作品群を通してその作家性と詩的映像を紹介することを目的としている。劇場や配信での鑑賞が難しい、あるいは久しく目にする機会の少ない作品も含まれており、映像文化の保存と再提示という観点からも重要な意義を持つ。
3作品の放送スケジュールと作品ごとの見どころ
放送は下記のスケジュールで行われる。いずれも早朝帯の放送となるが、CSベーシックでの再放送やオンデマンドの有無についてはチャンネル側の案内を確認することができる。各作品はHDリマスター版や新作としての特別な扱いがあるため、映像の質にも注目したい。
以下に各作品の放送日時、主要スタッフ・出演者、解説を整理し、作品の特徴を具体的に紹介する。
『瞳をとじて(2023)』 ― 31年ぶりの長編、新作を巡るミステリー
放送日:10月23日(木) 6:00~
備考:CSベーシック初放送
- 監督
- ビクトル・エリセ
- 出演
- マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント、ペトラ・マルティネスほか
- 解説
- 寡作の巨匠ビクトル・エリセが『マルメロの陽光』から31年ぶりに発表した4本目の長編。元映画監督と失踪した親友との記憶を巡るミステリーであり、エリセ自身の人生や過去作、さらに影響を受けた創作物などからの引用が数多く盛り込まれている。集大成的な位置づけがされる作品であり、アナ・トレントの出演も話題となった。
本作は、物語の主題として「記憶の重なり」と「個人の過去」が扱われる点が特徴的である。元映画監督という職業的立脚点から映画そのものに対するメタ的な省察が生まれ、失われた記憶や友の痕跡を辿る行為が物語の推進力となる。
また、エリセの過去作や影響を受けた創作物への参照は、本作を単独の物語以上のものとして読み解くことを促す。視覚的引用やモチーフの反復が、映画全体に統一された詩的な響きを与えている。
『エル・スール【HDリマスター版】』 ― 内戦の傷を少女の目線で映す
放送日:10月21日(火) 6:00~
『エル・スール』は、長編第2作としてビクトル・エリセの美意識が凝縮された作品である。もともと予定された本編時間は約3時間だったが、製作上の理由で95分に短縮されたため、映像と言葉が精緻に削ぎ落とされた構成になっている。
- 監督
- ビクトル・エリセ
- 出演
- オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン、イシアル・ボジャイン、オーロール・クレマンほか
- 解説
- 少女の目線から映し出されるスペイン内戦の傷跡を背景に、内戦の傷を心に負う父と彼を慕う娘の関係が、画家の筆致のように美しく彩られる。エリセはその映像的手法で、歴史の重さと個人の感情を静かに結びつける。
本作では、登場人物の関係性と空間構造が綿密に設計されている。父と娘という私的な関係の中に、公共的な歴史の影が差し込むことで、個人史と国史とが交錯する瞬間が生まれる。画面構成や光の使い方に注目すると、内面表現としての時間の扱いが明確になる。
HDリマスター版によって、元のフィルムが持つ質感や色調のニュアンスが復元され、当時の撮影意図がより忠実に伝わることが期待される。短縮された本編時間のなかに凝縮された表現をじっくりと味わえる作品である。
『ミツバチのささやき【HDリマスター版】』 ― 少女の視点で描く現実と幻想の狭間
放送日:10月22日(水) 6:00~
エリセの長編映画第1作であり、彼の詩的世界を象徴する代表作の一つが『ミツバチのささやき』である。純真無垢な少女を演じるアナ・トレントの印象的な大きな瞳が、幻想と現実の境界を映し出す視覚的中心となる。
- 監督
- ビクトル・エリセ
- 出演
- アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメスほか
- 解説
- 妖精の存在を信じる少女の視点から世界を描いた作品で、現実と幻想が交錯する独特の語り口と詩的な映像美が特徴。HDリマスターにより細部の描写が鮮明になり、初見者にも再見者にも新たな発見がある。
物語は子どもたちの不思議な世界を通して語られるが、その背後には社会的・歴史的な文脈が静かに存在する。子どもの視線が持つ純粋さと残酷さ、現実に押し戻される瞬間の鋭さが、映画全体の緊張を生む。
HDリマスター版では画質の向上により、光と影、肌や風景の質感がより明確になる。特にアナ・トレントの表情や眼差しが、これまで以上に観客の記憶に残るだろう。
ザ・シネマによるセレクトと視聴方法の具体案内
ザ・シネマはハリウッドのヒット作からレア作品、ミニシアター系作品まで幅広いラインナップを提供する洋画専門チャンネルであり、今回のエリセ特集は同チャンネルの「王道+激レア」という編成方針と合致する企画である。特集ページでは関連情報や特集タグがまとめられている。
特集ページ:https://www.thecinema.jp/tag/711
- 視聴可能プラットフォーム:スカパー!、J:COM、ひかりTV、auひかり、全国のケーブルテレビ 等で視聴可能。
- スカパー!での加入手順:
- 自宅のテレビでCS161/QVCを選局してスカパー!が映ることを確認する。
- B-CASカードを準備する。
- WEBの申し込みページ(https://www.thecinema.jp/lp)から加入申込を行う。
- 申込後、約30分で視聴可能になる。
- 公式SNS:
- X(旧Twitter):https://x.com/thecinema_ch
- Facebook:https://www.facebook.com/the.cinema.jp
また、著作権表記や製作クレジットは放送時に明示される。各作品の権利表記は以下のとおりである:『瞳をとじて(2023)』© 2023 La Mirada del Adiós A.I.E, Tandem Films S.L., Nautilus Films S.L., Pecado Films S.L., Pampa Films S.A.、『エル・スール【HDリマスター】』© 2005 Video Mercury Films S.A.、『ミツバチのささやき【HDリマスター】』© 2005 Video Mercury Films S.A.
まとめ:放送情報の一覧と全体の整理
下表は、本特集で放送される3作品の基本情報と放送日時・備考を整理したものである。番組内容の要点と放送方法を一目で確認できるようにまとめた。
| 作品名 | 放送日(2025年) | 放送開始時間 | 監督 | 主な出演者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|---|
| 瞳をとじて(2023) | 10月23日(木) | 6:00~ | ビクトル・エリセ | マノロ・ソロ、ホセ・コロナド、アナ・トレント、ペトラ・マルティネスほか | CSベーシック初放送。エリセの31年ぶりの長編(第4作)。集大成的作品。 |
| エル・スール【HDリマスター版】 | 10月21日(火) | 6:00~ | ビクトル・エリセ | オメロ・アントヌッティ、ソンソレス・アラングーレン、イシアル・ボジャイン、オーロール・クレマンほか | 長編第2作。もともと予定された約3時間から95分に短縮された作品。HDリマスター版。 |
| ミツバチのささやき【HDリマスター版】 | 10月22日(水) | 6:00~ | ビクトル・エリセ | アナ・トレント、イザベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメスほか | 長編第1作。詩的な映像と少女の視点が特徴。HDリマスター版。 |
今回の特集は、ビクトル・エリセ作品の時間性、記憶、そして詩的映像を体系的に観ることができる機会である。放送はザ・シネマのCS放送枠で行われ、視聴方法の詳細や特集ページは公式サイトで確認できる。作品の権利表記やクレジットは当該作品に準拠している。放送内容を正確に把握したうえで、各作品の細部に目を向けることで、エリセの映画表現が持つ深みをより明確に感じ取ることができる。
参考リンク: