大阪万博で見る水上の光る鳥居、夜間展示の全貌

水上の光る鳥居展示

開催期間:10月2日〜10月12日

水上の光る鳥居展示
いつ見られるの?
展示は大阪・関西万博「つながりの海」で開催中。期間は2025年10月2日〜10月12日、点灯は毎日17時〜22時。夜間のみの短期展示なので時間に注意。
入場や予約はいるの?
記事本文では入場方法や予約の有無は明記されていない。万博の会場規定や公式サイトで入場券情報やアクセスを確認するのが確実です。

水面に浮かぶ光景──《鳥居と阿吽が紡ぐ地球の朝ぼらけ》の全容

大阪・関西万博の会場内「つながりの海」に、SOWA DELIGHT Inc. と SAMPO Inc. のコラボレーションによる空間彫刻作品群《鳥居と阿吽が紡ぐ地球の朝ぼらけ》が展示されている。本作は2025年10月2日から10月12日までの期間、毎日17時から22時に点灯されるライトアップ展示だ。

作品群は水上に浮かぶ三体の彫刻で構成され、中央に位置するのが《鏡界の鳥居》、その左右に《阿(ア)》と《吽(ウン)》が配置されている。中央の鳥居が「間」や「あわい」を映す鏡としての役割を果たし、左右の像が「始まり」と「終わり」を象徴することで、宇宙的な時間感と地球の鼓動を同時に体現する仕組みになっている。

大阪・関西万博会場に​浮かぶ、​光る​鳥居の​正体は。​人と​宇宙の​調和を​表現した​水上の​空間彫刻作品群が​10月12日まで​展示中 画像 2

展示の設置手法と環境配慮

展示は単に汎用の台座に載せられた彫刻ではない。万博会場の水面上に浮かぶこれらの作品は、海床(うみどこ)ロボットコンソーシアムが提供する都市型自動運転船、通称「海床ロボット」を活用して展示されている。自動運転船の活用により、可搬性と安全性、そして環境配慮を両立した展示が可能になっている。

海面上の鏡面反射や光の演出と、機構的な浮体による展示支持の組み合わせは、視覚的な印象と運用上の実用性を両立させる。これにより作品は周囲の水面を鏡として取り込み、空と水、物理的な境界の曖昧さを強調する。

  • 展示名称:《鳥居と阿吽が紡ぐ地球の朝ぼらけ》
  • 会場:大阪・関西万博内「つながりの海」
  • 開催期間:2025年10月2日(木)~10月12日(日)
  • 点灯時間:17時~22時
  • 制作:SOWA DELIGHT Inc. / SAMPO Inc.
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中心作品《鏡界の鳥居》と夜間光の設計

《鏡界の鳥居》は、鳥居という古来からの「入口」「境界」の概念を現代に再定義する作品である。鏡の質感と青い光を組み合わせることで、生命の根源を示す水や、宇宙から見た地球の色を想起させる造形となっている。足元に広がる水面も鏡となり、空と地、人と自然、現在と未来という対立をあわいとして映し出す。

夜間には内部に組み込まれたネオン管が成層圏と宇宙のあいだに存在する色温度、9500ケルビンの青白い光を放つ設計になっている。この光は「地球を離れ、宇宙を感じる光」として空間を照らすことを意図しており、鏡面に映る風景や鑑賞者の姿を通じて、境界の曖昧さと觀看者自身の位置を問い直す。

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作品の意図と象徴性

鳥居は伝統的に、俗界と神域の境界に立ち、人々が見えない存在に祈りを捧げるための“入口”であった。しかし現代においては、その象徴性が薄れ、鳥居の意味そのものや、何を依代として祈ればよいのかが問い直されている。

SOWA DELIGHT と SAMPO はこの問いに対するひとつの応答として「宇宙の呼吸」を据え、宇宙のスケールで過去を感じ未来を見つめるための装置として《鏡界の鳥居》を位置づけている。鏡面と光の演出は、あわいを浮かび上がらせ、鑑賞者に思索の契機を与える。

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左右の彫刻《阿》と《吽》──生成と終焉を表す造形

SAMPO 制作の《阿》と《吽》は、宇宙の生成と終焉、循環をテーマにした対作品である。《阿》は黄金比や円弧を基に構築され、ビッグバン的な爆発的膨張や銀河の渦を想起させる。鉄の骨格に沿って配置された岩や天体を模した球体が、水面と反射することで球の「タマ」として現れるよう設計されている。

これに対して《吽》は白銀比を基調とした幾何学的フレームで構成され、黒鉄や錆の質感をまとい、水鏡に虚像を重ねる。秩序と腐食の対比は生成と崩壊、虚と実の狭間を映し出し、波の音と共に静謐さをもたらすことで宇宙の終焉やエントロピーの進展を体現する。

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モビールと鉄の原子表現、衣装《デブリ・フィッシャー》について

《阿》《吽》のそれぞれ中央に配されたモビール彫刻は、星の終焉に深く関係する「鉄」の原子構造を表現している。自然の風を受けて水面をたゆたいながら、生成から崩壊、再生成へという宇宙の呼吸と螺旋的な循環を象徴する役割を担う。

また、作品に付随する上衣装《デブリ・フィッシャー》は ELIOS による制作。かつて海で魚を獲っていた漁師たちが、未来では海洋デブリの回収に従事するという想定のもと、海を浄化する者としての新しい一次産業従事者像を表現する衣装である。ここでは、価値を失った漂流物を価値あるものへと変換する作業者の役割が物語的に示されている。

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制作背景、思想的ルーツ、クレジットと運営

SOWA DELIGHT は「デンキ」の会社として出発したが、単に電気を供給する存在にとどまらず、遊園地での夜間イベントやプロジェクションマッピング、神社でのオーロラ体験などさまざまな場を照らしてきた。だが一方で、デンキによって便利になった世界の中で失われ続ける地球の存在にも向き合い、照らすべき対象を問い直した。

その問いの結果、彼らは未来そのもの、さらには動植物や宇宙までを見据えた「宇宙のミライにワクワクする」というビジョンを形成し、アートを通じた表現に取り組むことになった。アートによって生まれる問いが、価値観の転換やパラダイムシフトの契機となるという信念が制作の根底にある。

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赤城神社への敬意と《鏡界の鳥居》の系譜

《鏡界の鳥居》は、SOWA DELIGHT 代表・渡邉辰吾が中之条ビエンナーレ2023で発表した作品を起点としている。制作には赤城神社からの思想的インスピレーションが深く関与しており、作品はビエンナーレでの展示後に赤城神社へ奉納され、拝殿に向かって右奥の森に設置されているという経緯がある。

今回はその基本思想を継承しつつ、新たな環境として万博の水上空間に展示される形となった。鏡面を用いることで境界を曖昧にし、鑑賞者が鳥居とは何かを改めて考える契機をつくる意図が明瞭だ。

制作クレジットと協力者

本プロジェクトの制作クレジットは以下の通り。多様な職能のチームが結集し、彫刻制作、金属加工、ネオン光源、衣装やモビールデザインまで多岐にわたる協働によって完成された。

《鏡界の鳥居》
Produced by SOWA DELIGHT Inc. / Designed by Shingo Watanabe
Made by Shingo Watanabe, Weeds, REVERSE MAKER HI-D, Yuki Watanabe, Yasuaki Watanabe, Miki Imai
Neon light : SHIMADA NEON
Special thanks : Miyosawa Akagi Shrine
《阿吽》
Produced by SAMPO Inc.
《阿》 Designed by Issui Shioura / Made by Issui Shioura, AZB, bero iron works, Jujiro, Yoshiki Ashizawa
《吽》 Designed by Riku Murakami / Made by Riku Murakami, Kazuya Kawazu, Yuhi Wako, Pink Tanaka
モビール Fe#26
Designed by Mari Murakami
《Ocean Debris Fisher Deckman and Boatswain》
Created by ELIOS, Pink Tanaka, Marika Nishiwaki

また、SOWA DELIGHT と SAMPO の両社はそれぞれ公式のウェブと Instagram アカウントを有しており、プロジェクトに関する情報発信を行っている。SOWA DELIGHT: http://www.sowadelight.com/#1 / Instagram: https://www.instagram.com/sowadelight/ 。SAMPO: https://www.sampo.mobi/ / Instagram: https://www.instagram.com/we_are_sampo/ 。

展示運営には海床ロボットを含む複数の技術協力が入っており、展示の安全確保や環境配慮、来場者の導線や夜間点灯スケジュール管理に関するオペレーションが組まれている。

作品の言葉と展示要点の整理

作品群はステートメントとして「依代薄れゆく時代に」「阿ははじまり、吽は終わり」「数理や論理の目と共に有機なる円環と生命のスパイラルに形の眼差しを向ける」などのテキストを提示している。これらは、観る者が宇宙的な時間軸で自分たちの存在や未来を再考するための言葉として配されている。

以下の表は、本記事で扱った展示の主要情報を整理したものである。主要な事実関係、開催日時、会場、制作主体、制作チーム、使用技術や象徴性を一覧で確認できるようにまとめている。

項目 内容
展示名称 《鳥居と阿吽が紡ぐ地球の朝ぼらけ》
会場 大阪・関西万博 内「つながりの海」
開催期間 2025年10月2日(木)~10月12日(日)
点灯時間 17時~22時
主要構成 中央:《鏡界の鳥居》 / 左右:《阿》《吽》 / モビール、衣装《デブリ・フィッシャー》等
制作 SOWA DELIGHT Inc. / SAMPO Inc.
設置技術 海床ロボット(都市型自動運転船)により水上展示
光の仕様 《鏡界の鳥居》内部ネオン管:色温度 9500ケルビン(青白)
主な制作協力 Shingo Watanabe、Weeds、REVERSE MAKER HI-D、Yuki Watanabe、Yasuaki Watanabe、Miki Imai、SHIMADA NEON、ISSUI SHIOURA、AZB、bero iron works、Jujiro、Yoshiki Ashizawa、Riku Murakami、Kazuya Kawazu、Yuhi Wako、Pink Tanaka、Mari Murakami、ELIOS、Marika Nishiwaki ほか
背景・思想 鳥居という境界概念の再定義、宇宙の呼吸と地球の循環を象徴化する試み。赤城神社からの思想的ルーツを持つ作品の系譜。
関連URL SOWA DELIGHT: http://www.sowadelight.com/#1 / Instagram: https://www.instagram.com/sowadelight/ / SAMPO: https://www.sampo.mobi/ / Instagram: https://www.instagram.com/we_are_sampo/

以上が展示の主要事項と制作背景の整理である。会期は短期間であり夜間のみの点灯となるため、訪れる際には開催期間と点灯時間を確認した上で鑑賞すると、展示の意図や光と水の相互作用をより深く理解できるだろう。