ヴァン クリーフ&アーペル展:アール・デコ美を庭園美術館で再発見

ヴァン クリーフ展

開催期間:9月27日〜1月18日

ヴァン クリーフ展
チケットってどう買えばいいの?
本展は日時指定予約制で、展覧会特設サイトからチケットを購入する必要がある。入館は閉館30分前まで。夜間開館日や休館日(毎週月曜など)を事前に確認し、人気日や夜間は早めの予約を推奨する。
見どころって何があるの?
約250点のジュエリーと約60点のアーカイブを展示。1924年の《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》や1929年のコルレット、ミステリーセット技法、旧朝香宮邸のアール・デコ空間が主な見どころだ。

ヴァン クリーフ&アーペルとアール・デコが交差する瞬間

本稿は、ハイジュエリーメゾン・ヴァン クリーフ&アーペルが2025年9月27日から東京都庭園美術館で開催する展覧会『永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ』の内容を整理してお伝えするものである。プレスリリース発表日時は2025年10月7日18時00分で、本記事はその発表内容を基に展覧会の背景、構成、来場方法まで網羅的にまとめる。

ヴァン クリーフ&アーペルは、アルフレッド・ヴァン クリーフとエステル(通称エステル)・アーペルの結婚をきっかけに創立され、1906年にパリ・ヴァンドーム広場22番地に最初のブティックを構えて以来、詩情を帯びたデザインと高度な技巧で知られるメゾンである。本展は、1925年の「現代装飾美術・産業美術国際博覧会(通称 アール・デコ博覧会)」から100周年を記念する企画であり、メゾンとアール・デコ様式の関係性を作品群を通じて明らかにすることを目的とする。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」 東京都庭園美術館にて開幕 画像 2

創立と初期の歩み

創業期からのメゾンは、自然、クチュール、ダンス、空想といった多様なインスピレーションを取り入れながら、独自のハイジュエリーと時計を生み出してきた。サヴォアフェール(匠の技)を重視し、ミステリーセットといった技巧的な技法やジップ ネックレス、アルハンブラ モチーフといった象徴的なデザインを生み出している。

1970年代以降は、ジャック・アーペルによる過去作品の再収集が進められ、「パトリモニー コレクション」としてメゾン自らの歴史的所蔵品を体系化した。現在そのコレクションは3,000点を超え、各時代の職人技の変遷とメゾンのスタイル進化を示す重要な資産となっている。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」 東京都庭園美術館にて開幕 画像 3

アール・デコ博覧会と受賞作品

ヴァン クリーフ&アーペルは1925年のアール・デコ博覧会において宝飾部門に複数の作品を出品し、グランプリを受賞した。本展で出品される《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)は、その年の成果を象徴する重要作品の一つであり、花という主題からメゾンのアール・デコ期におけるビジョンを読み解く鍵となる。

アール・デコは1910年代から1930年代にかけて装飾芸術や建築分野で顕著となった潮流であり、機械的な合理性と装飾的な美意識が同居する時代である。本展は、その潮流がヴァン クリーフ&アーペルのデザインにどう作用したかを、原寸大の作品とアーカイブ資料を通じて提示する。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」 東京都庭園美術館にて開幕 画像 4

全4章でたどる展示構成と収蔵品の概要

展覧会は全4章で構成され、旧朝香宮邸に当たる東京都庭園美術館の本館と新館を会場に、1910年代から1930年代にかけて制作された作品と、メゾンの匠の技を体系的に展示する。出展点数は約250点のジュエリー・時計・工芸品と、メゾンのアーカイブ資料約60点、そしてパトリモニー コレクションを中心とした歴史的作品群で構成される。

展示は時代の流れに沿って展開し、第1章から第3章は本館で、最終の第4章は新館での展示となる。各章は空間構成と照明設計のもと、アール・デコ期の意匠や技術がどのように具体化したかを観察できるよう工夫されている。

「永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ」 東京都庭園美術館にて開幕 画像 5

本館:第1章〜第3章(時代とスタイルの移り変わり)

第1章『アール・デコの萌芽』は、本館大客室の展示空間を用いて、アール・デコがどのように芽生えたかを示す初期作品を中心に提示する。ここでは素材の選択やモチーフの変化、装飾の原初的な実験が読み取れる。

第2章『独自のスタイルへの発展』は、1920年代から1930年代にかけてヴァン クリーフ&アーペルが確立していった独自の美意識を具体的な作品群と共に示す。プレスリリースでは代表作として『コルレット(1929年)』等が紹介されている。第3章『モダニズムと機能性』は本館の合の間などを活用し、機能性とモダニズム的な形式が宝飾に与えた影響を探る。

新館:第4章『サヴォアフェールが紡ぐ庭』

第4章は新館での展示となり、ヴィジュアルに加え技術的な側面に焦点を当てる。金細工、形を変える作品、ミステリーセット、エナメル、宝石彫刻など、現在まで継承されるサヴォアフェール(匠の技)の多様性を展示する。

この章ではアーカイブ資料や修理・保存の記録を通じて、どのように技巧が世代を超えて継承されてきたかを示す。来場者はジュエリーの外観だけでなく、工程や仕上げの細部に至るまで理解する機会を得られる。

東京都庭園美術館という展示舞台の特性

会場である東京都庭園美術館は旧朝香宮邸をそのまま美術館として公開しているもので、1933年に朝香宮邸として建設された。当初よりアール・デコの装飾を積極的に取り入れており、本館の主要な部屋は博覧会で活躍した装飾美術家アンリ・ラパンが設計に携わり、ルネ・ラリックらのガラス工芸家も装飾に参加している。

竣工当時の建築意匠がほぼ完全に保存されている点が特筆され、アール・デコ期の空間そのものを体験しながらジュエリーを鑑賞できる希少な舞台である。建築自体が展示の一部として機能するため、作品と空間の相互作用を含めた鑑賞が可能である。

旧朝香宮邸の来歴と利用変遷

朝香宮夫妻は1922年から約3年間パリに滞在し、1925年のアール・デコ博覧会を訪れている。帰国後、自邸建設に際して博覧会の主要パヴィリオンに携わったアンリ・ラパンらに装飾を依頼し、アール・デコの精華を反映した住宅が形作られた。

戦後は外務大臣公邸、首相公邸、国の迎賓館としての期間を経て、1983年に美術館として新たに公開された。こうした歴史的経緯が、展覧会で提示される作品と空間に深みを与えている。

保存状態と展示設計の配慮

東京都庭園美術館の建築意匠は保存状態が良好であり、当時の素材や意匠がほぼ完全な形で残っている。これにより、展示品の歴史的文脈を建築空間の中で直感的に理解することができる。

展示に際しては光や温度、湿度の管理が重要であり、貴重なハイジュエリーやアーカイブ資料に対する保存配慮が講じられる。観覧者は作品そのもののみならず、それを取り巻く保存学的な取り組みも含めて展示を体験することになる。

来場案内と展覧会の要点整理

以下は来場に必要な実務的な情報と、展覧会の主要データを整理したものである。日時指定予約制のため、来場前に展覧会特設サイトでチケットを購入する必要があることに留意する。

本節では開館情報、夜間開館日、休館日、会場住所、問い合わせ先など、実際に訪れるために必要な全ての情報を記載する。加えて、本展の主要構成要素と見どころを簡潔にまとめる。

開催概要と観覧にあたっての注意

会期:2025年9月27日(土)–2026年1月18日(日)である。開館時間は10:00–18:00(入館は閉館の30分前まで)で、特定の金・土曜日は夜間開館を実施し20:00まで開館する。夜間開館日は以下のとおりである。

  • 夜間開館日:11月21日(金)、11月22日(土)、11月28日(金)、11月29日(土)、12月5日(金)、12月6日(土)

休館日は毎週月曜日および年末年始(12月28日–1月4日)である。ただし、祝日の月曜日は開館し、その翌日が休館となる日程がある点に注意する。具体的には開館する祝日の月曜日は10月13日、11月3日、11月24日、1月12日であり、それぞれ翌日の火曜日(10月14日、11月4日、11月25日、1月13日)が休館となる。

会場・連絡先・チケット情報

会場:東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)。住所は〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9である。問い合わせ先は050-5541-8600(ハローダイヤル)。訪問前に展覧会特設サイトで日時指定のチケットを購入する必要がある。

展覧会特設サイト:https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/。特設サイトでチケット購入や会場アクセス、展示に関する詳細情報が案内されているため、訪問前に必ず確認することが推奨される。

主な見どころと展示の要点

主な見どころは以下の通りである。1924年制作の《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》など、アール・デコ期の代表的な作品を含む約250点の選定作品、メゾンのアーカイブ約60点、そしてパトリモニー コレクションに由来する歴史的作品群によって、デザインと技巧の両面からヴァン クリーフ&アーペルの歴史を辿る点が本展の大きな特徴である。

出展点数
ジュエリー・時計・工芸品:約250点、アーカイブ資料:約60点、パトリモニー コレクション由来の歴史的作品群を含む。
注目作品
《絡み合う花々、赤と白のローズ ブレスレット》(1924年)、コルレット(1929年)ほか、ミステリーセット技法の例など。
展示構成
第1章『アール・デコの萌芽』(本館)、第2章『独自のスタイルへの発展』(本館)、第3章『モダニズムと機能性』(本館)、第4章『サヴォアフェールが紡ぐ庭』(新館)。

以下に、本記事で取り上げた展覧会の要点を表として整理する。

項目 内容
展覧会名 『永遠なる瞬間 ヴァン クリーフ&アーペル ― ハイジュエリーが語るアール・デコ』
会期 2025年9月27日(土)–2026年1月18日(日)
開館時間 10:00–18:00(入館は閉館30分前まで)。夜間開館は11/21, 11/22, 11/28, 11/29, 12/5, 12/6は20:00まで。
休館日 毎週月曜日および年末年始(12/28–1/4)。祝日の月曜日は開館(10/13, 11/3, 11/24, 1/12)、翌火曜日が休館。
会場 東京都庭園美術館(旧朝香宮邸)〒108-0071 東京都港区白金台5-21-9
問い合わせ 050-5541-8600(ハローダイヤル)
入場方法 日時指定予約制。展覧会特設サイトにてチケットを購入のこと(特設サイト)。
出展点数 ジュエリー・時計・工芸品 約250点、アーカイブ資料 約60点、パトリモニー コレクションを中心とした歴史的作品群を展示。
見どころ アール・デコ博覧会(1925年)関連の受賞・出品作、1924年のローズ・ブレスレット、ミステリーセット技法やサヴォアフェールの実例。
関連リンク https://art.nikkei.com/timeless-art-deco/

以上が、ヴァン クリーフ&アーペルによるアール・デコ博覧会100周年記念展の主な内容と実務的な来場情報の整理である。展覧会は美術史的な文脈、メゾンの技術史、建築空間の三点が重なり合う構成となっており、資料・作品点数ともに体系的な理解を促す内容である。

参考リンク: