1/2鹿児島先行、1/9全国拡大 映像詩『郷』93分の挑戦
ベストカレンダー編集部
2025年10月2日 11:56
映画『郷』公開開始
開催日:1月2日
台詞を抑えた映像詩『郷』──93分で問う「心で見る」映画体験
伊地知拓郎監督の長編作品『郷』は、台詞を極力排し、視覚と音響を通じて観客の潜在意識に働きかけることを目指した93分の長編映画です。全編を通じてマジックアワーの光にこだわった映像表現と、AR R I 提供による描写を採り入れた撮影は、テレンス・マリックを想起させる浮遊感と圧倒的な画作りを特徴としています。
本作は2026年1月2日(金)に鹿児島・鹿児島ミッテ10で先行公開され、2026年1月9日(金)より全国公開が順次拡大されます。上映時間は93分、5.1ch音響、アメリカンビスタの画面比率、映倫Gの指定です。公式サイトでは作品情報や最新の上映スケジュール、ムビチケ前売り情報が案内されています。
上映スケジュールと主要劇場
上映開始日は地域によって異なりますが、鹿児島県での先行上映を経て1月9日から全国公開が始まります。公開初期は主要都市の劇場での上映が予定されています。
具体的な主要上映劇場は以下の通りです。公開のタイミングに合わせて順次拡大していきます。
- 鹿児島ミッテ10(先行上映・2026年1月2日(金)開始)
- 新宿ピカデリー
- キネマ旬報シアター
- 名古屋ミッドランドスクエアシネマ
- 大阪なんばパークスシネマ
- その他順次拡大予定
技術仕様と前売り情報
技術仕様としては、カラー作品、上映時間93分、音声は5.1ch、画面比率はアメリカンビスタ、映倫区分はG指定となっています。公式サイトやムビチケでの情報と一致しています。
前売り券はムビチケおよび全国共通特別前売券として税込1,500円で販売が開始されています。公式サイト(https://www.goumovie.com/)を通じて購入や上映情報の確認が可能です。
物語の構造と制作意図──高校球児のまなざしと郷愁
物語の冒頭は、軍隊のような規律が支配するグラウンドでの練習シーンから始まります。プロ野球選手を夢見る高校球児たちが、厳しいしごきと怒号の中で懸命に練習する姿が描かれ、主人公・岳(がく)の苦悩が画面を通じて伝わってきます。
本作のタイトル『郷』には、〈故郷〉〈土〉〈無常〉〈郷愁〉といった概念が重ねられており、「私たちは土から生まれ、いつか土に還る──自然の循環とふるさとへの感情」を一語に託しています。観客は台詞に頼らない語り口を通じて、自らの記憶や感情と主人公の経験を重ね合わせることが求められます。
あらすじの詳細
物語は、プロ野球を目指す高校球児・岳が直面する現実と、幼なじみの隆(りゅう)との再会を軸に進みます。野球部内での理不尽や残酷さが岳を追い詰める中、担任の霧島の励ましや幼なじみとの記憶が岳の心を揺り動かします。
夏の田園や大木の間を走る少年時代の描写、桜島の噴煙、風や木々の匂いといった自然のディテールを通して、登場人物たちが抱える悩みや苦しみ、そして人生の巡りが描かれます。岳は、自分の過去に立ち返り「ぼくは、あの頃何を感じて生きていたのだろうか」と自問します。
制作モチベーションと表現の手法
監督の伊地知拓郎は、デビュー作ながら北京電影学院監督学科出身という経歴を持ち、視聴覚言語の研究を基に台詞を削ぎ落とした語り口を採用しました。制作の動機には、日本人の精神的幸福度の低さや若年層の自殺率に対する危機感、監督自身の海外生活での体験が影響しています。
監督コメントでは「辛いときは逃げてもいい。逃げ道をつくる。」という個人的な経験に基づいた表現も語られており、映画を通じて潜在意識に働きかけ、人々の心に働きかける可能性を探る意図が明確に示されています。編集・音楽・撮影も伊地知監督が担当し、統一的な表現が図られています。
制作陣の言葉、支援の声、教育的意義
本作には監督・伊地知拓郎、プロデューサー・小川夏果それぞれからのコメントが寄せられています。加えて、第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作『侍タイムスリッパー』の安田淳一監督からの応援コメントも公開されています。
これらの言葉は作品の表現意図や鑑賞体験の受容について具体的に触れており、映画が鑑賞者自身の記憶と重なり合うプロセスを促す点が繰り返し指摘されています。
監督・伊地知拓郎のコメント
伊地知監督は本作を通じて「誰にでも起こりうる何気ない日常」を描こうとしています。人生の理不尽や予期せぬ困難を描く一方で、子どものころの感覚や記憶が持つ救済的な力に注目しています。
監督は映画を手段として、潜在意識に届くような表現を目指した背景に自身の苦しい時期の経験を挙げています。その上で「逃げ道をつくる」という生き方の選択肢を肯定的に提示しています。
プロデューサー・小川夏果のコメントと教育的取組
プロデューサーの小川夏果は監督との出会いを通じて作品の美しさと音作りに惹かれたと述べています。自身のPTSDの経験から命の尊さを伝える責務を感じ、映画制作に携わる動機となっています。
教育的意義として、本作は2024年2月に文部科学省の選定映画となっており、科目は「生き方」「人生設計」として指定・認定されています。中学・高校向けの学習プログラム(「郷」学習プログラム)が作成され、心の健康や生き方を考える教育現場での活用が進められています。
安田淳一監督からの応援コメント
第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞作の監督である安田淳一は、言葉を多く用いない語り口とドキュメンタリー的な質感、観客自身による物語構成を評価しています。鑑賞者の自己投影を促し、「他人の物語」を「鑑賞者の物語」へと変換する点を支持するコメントを寄せています。
このコメントは作品の鑑賞体験が個々人の記憶や感情と結びつくことを示しており、台詞を削減した表現の有効性を示唆しています。
撮影地・クレジット・受賞歴と問い合わせ
撮影は鹿児島県内の複数の市町で行われ、地域の風景が作品全体の表現に深く関与しています。撮影地の具体的な地名が公表されており、地域性が映像に反映されています。
また、製作・配給・受賞歴などの情報は公式クレジットと連動しており、国内外の映画祭での選出・入選歴が本作の評価を裏付けています。問い合わせ先や公式SNS、noteのリンクも公開されています。
撮影地の一覧と地域性
本作の撮影地は鹿児島県の複数の場所に渡ります。地域ごとの自然景観や風土が映像表現に寄与しています。
撮影地の具体的なリストは以下の通りです。
- 垂水市
- 姶良市
- 鹿児島市
- 日置市
- 南さつま市
- 指宿市
- 長島町
- 出水市
- 霧島市
クレジットと制作体制
この章では作品の主要クレジットと制作・配給体制を整理します。主要スタッフは多岐にわたり、製作はLetheany&Co.(LETHEANY)名義で行われています。
- 監督・脚本
- 伊地知拓郎
- プロデューサー・キャスティング
- 小川夏果
- キャスト
- 泉澤祐希(語り)、小川夏果、古矢航之介、阿部隼也、千歳ふみ、松元裕樹、とめ貴志
- 編集・音楽・撮影
- 伊地知拓郎
- 衣装・美術・制作・演技指導
- 小川夏果
- 製作
- LETHEANY(Letheany&Co.合同会社)
- 配給
- マイウェイムービーズ、ポルトレ(配給協力:MMCエンタテイメント、キネマ旬報)
受賞歴と映画祭での評価
本作はデビュー作でありながら国内外の映画祭で評価を獲得しています。具体的な受賞歴や出品歴は制作の信頼性を支えています。
主な出品・受賞歴は以下の通りです。
- 2024年 第26回上海国際映画祭 アジア新人部門 公式出品(監督賞・作品賞)※歴代日本人最年少ノミネート
- 2024年 重慶35mm批評家週間 最優秀批評家賞/北京国際映画祭 公式上映
- 2024年 文部科学省選定映画(対象:青少年、科目:生き方、人生設計)
- 2025年 第25回ドイツ・ニッポンコネクション入選
- 2025年 第47回ぴあフィルムフェスティバル入選
- 2025年 第20回オランダ・カメラジャパン入選
公式情報と問い合わせ先
公式情報は公式サイトやSNSで随時更新されています。上映館や前売り券の情報は公式サイトで確認できます。
問い合わせ先の情報は以下の通りです。配給窓口への連絡は作品に関する正式な問い合わせに利用できます。
- 公式サイト
- https://www.goumovie.com/
- 公式SNS
- X:@gou_movie / Instagram:@gou.movie / 公式LINE:映画「郷」
- note
- https://note.com/natsu7o
- 配給窓口(問い合わせ)
- ポルトレ・石原、小川 Tel:03-6456-3990 E-mail:info@portrait-c.com (cc:ogawanatsukaofficial@gmail.com)
要点の整理
以下の表は本記事で取り上げた『郷』に関する主要情報を一目で確認できるよう整理したものです。公開日、上映時間、前売り価格、スタッフ情報、教育的指定、受賞歴などを含めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 作品名 | 郷 |
| 監督・脚本 | 伊地知拓郎 |
| プロデューサー | 小川夏果 |
| 主要キャスト | 泉澤祐希(語り)、小川夏果、古矢航之介、阿部隼也、千歳ふみ、松元裕樹、とめ貴志 |
| 上映開始(先行) | 鹿児島ミッテ10:2026年1月2日(金) |
| 全国公開 | 2026年1月9日(金)より順次拡大(新宿ピカデリー、キネマ旬報シアター、名古屋ミッドランド、なんばパークスほか) |
| 上映時間・規格 | 93分|カラー|5.1ch|アメリカンビスタ|映倫G |
| 前売り券 | ムビチケ/全国共通特別前売券:税込1,500円 |
| 製作 | Letheany&Co.合同会社(LETHEANY) |
| 配給 | マイウェイムービーズ、ポルトレ(配給協力:MMCエンタテイメント、キネマ旬報) |
| 撮影地 | 鹿児島県(垂水市、姶良市、鹿児島市、日置市、南さつま市、指宿市、長島町、出水市、霧島市) |
| 教育的選定 | 文部科学省選定(選定日:2024年2月/科目:生き方、人生設計) |
| 受賞・出品 | 第26回上海国際映画祭 アジア新人部門 公式出品(監督賞・作品賞ノミネート)/重慶35mm批評家週間 最優秀批評家賞/北京国際映画祭 公式上映/第25回ドイツ・ニッポンコネクション入選/第47回ぴあフィルムフェスティバル入選/第20回オランダ・カメラジャパン入選 |
| 公式情報 | 公式HP:https://www.goumovie.com/ / X:@gou_movie / Instagram:@gou.movie / note:https://note.com/natsu7o |
| 問い合わせ | ポルトレ・石原、小川 Tel:03-6456-3990 E-mail:info@portrait-c.com(cc:ogawanatsukaofficial@gmail.com) |
本記事では作品の概要、上映情報、物語と制作意図、制作陣のコメント、撮影地、受賞歴、問い合わせ先までを整理しました。台詞を抑えた視覚・聴覚中心の語り口が、鑑賞者それぞれの記憶や感情とどのように結び付くかが、本作の鑑賞における重要な視点となります。
参考リンク: