倉敷で可視化:きびだんごのCFP表示が示す差と消費者反応
ベストカレンダー編集部
2025年9月27日 05:54
きびだんごCFP実証研究
開催期間:9月1日〜10月31日
倉敷美観地区で伝統菓子の温室効果ガスを「見える化」する試み
2025年9月1日より、国立大学法人岡山大学と和菓子製造の株式会社廣榮堂、そしてMS&ADインターリスク総研株式会社が連携して、きびだんごのカーボンフットプリント(CFP)表示に関する実証研究を開始しました。会場は観光地として知られる倉敷美観地区にある廣榮堂倉敷雄鶏店で、展示と販売が同店で行われています。
この取り組みは地域資源である伝統菓子を題材に、原材料調達から製造・販売に至るライフサイクル全体を対象に温室効果ガス量を可視化することを目的としています。研究開始日は2025年9月1日、プレスリリースは2025年9月26日付けで公表されています。
- 主催・協力
- 国立大学法人岡山大学(学長:那須保友)、株式会社廣榮堂、MS&ADインターリスク総研株式会社
- 会場
- 廣榮堂倉敷雄鶏店(倉敷美観地区)
- 実施期間
- 2025年9月1日~2025年10月31日(CFP表示実証研究期間)
- 調査スケジュール
- アンケート調査:毎日実施/学生による説明・インタビュー調査:金曜日14:00~16:00(9月12日除く)
CFP表示の位置づけと定義
カーボンフットプリント(CFP)とは、製品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体で排出される温室効果ガス(GHG)をCO2換算で示す数値、またはその表示の仕組みを指します。今回の実証研究は経済産業省・環境省のガイドラインに基づく考え方を踏まえて実施されています。
出典としては「カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省、環境省)」が参照されており、実務的には製品ごとの原材料、製造工程、包装、流通、販売に至るまでを対象にCO2換算量を算定しています。
算定結果が示す違い:元祖きびだんごとむかし吉備団子
今回のCFP算定は廣榮堂の2商品を対象に行われました。対象商品は「元祖きびだんご」と「むかし吉備団子」です。算定は原材料生産から製造・販売までを含むライフサイクル全体に基づいて行われ、算定結果は製品1箱あたりで示されています。
算定結果は次の通りで、製品間には明確な差が認められました。数値はCO2換算量をg-CO2eで示しています。
| 商品名 | 内容量 | 算定されたCFP(g-CO2e/箱) |
|---|---|---|
| 元祖きびだんご | 1箱(15個入り) | 766 g-CO₂e |
| むかし吉備団子 | 1箱(15個入り) | 638 g-CO₂e |
この結果から、両商品のCFP値には約17%の差があることが示されました。差の背景には包装材や原材料の産地・種類などが寄与していることが示唆されています。
店頭で展示したポスターや説明で示された情報に対して、来店した観光客はCFPの差だけでなく、その差を生む具体的な要素にも関心を示しました。具体的には「木箱の利用」や「岡山県産もち米の使用」といった点が注目され、来訪者からはパッケージや原材料が環境負荷に影響することを初めて知ったという反応が寄せられています。
来店者の反応と数値の受け止め
展示を見た観光客の声として、「パッケージの違いが環境に影響することを初めて知りました」「地元の素材を使うことが環境に優しい選択になるのは興味深い」といったコメントがありました。こうした意見は、CFP表示が単なる数値の提示に留まらず、消費者の理解を促す可能性を示しています。
また、学生が行った説明とアンケートからは、環境配慮の数値が実際の購買行動に影響を与えうるという傾向が示されました。以下の表現は調査で得られた典型的な回答の抜粋です。
- 「環境負荷が低いと聞くと、せっかくならそちらを選びたいです」
- 「旅行のお土産選びに新しい基準ができました」
学生による現地調査とアンケート調査の実務
表示実証研究では、岡山大学学術研究院社会文化科学学域(経済)の天王寺谷達将准教授の研究室とMS&ADインターリスク総研が共同でアンケート調査票を作成し、同研究室の経済学部生が現地でのインタビュー調査を行っています。学生たちは来店者に対してCFPの意義や製品差の説明を行い、その場でインタビューとアンケートを実施しました。
9月5日には経済学部の学生が廣榮堂倉敷雄鶏店に立ち、多数の観光客にCFPの意義を説明したうえでインタビュー・アンケートを行いました。アンケートは毎日実施され、学生の説明・インタビュー活動は金曜日の14:00~16:00に行われる予定です(9月12日は除く)。
- アンケート作成:天王寺谷准教授研究室+MS&ADインターリスク総研
- 現地での説明・募集:経済学部生(学生)
- インタビュー実施:来店観光客への対面インタビュー
- データ集計・分析:大学とMS&ADインターリスク総研による共同分析
学生からは「観光客の方々が熱心に耳を傾けてくださり、自分たちの説明で意識が変わる瞬間を感じました」「温暖化の影響については小学生の頃から聞いていたが、数値化することで環境の話が身近に感じられた」といった振り返りがあり、参加学生の学びと地域理解の深化が報告されています。
関係者のコメント、参照情報、連絡先とまとめ
廣榮堂の小西祐貴社長室室長は、伝統的な和菓子に新たな価値を付与する取り組みであると述べ、学生の視点や観光客の声を今後の商品開発や発信に生かしていく意向を示しました。一方、本実証研究でCFP算定を主に担当したMS&ADインターリスク総研の浅井良純上席コンサルタントは、CFP表示が取引先や消費者に対する新たな選択肢を提供し、付加価値を高め得ること、そして本研究をモデルに他の中小企業へ広げたい旨を述べています。
本実証研究は学生・企業・研究機関が連携して実施されており、観光地での情報提示を通じて来訪者に環境問題を自分事として考えさせる契機を作ることを目指しています。実証研究の期間は10月31日までで、アンケートは毎日、学生の説明・インタビューは金曜日14:00~16:00(9月12日を除く)に実施されます。
参考リンクと関連情報
本件に関連する参考情報や過去の取り組みは複数の公開資料や報道で確認できます。岡山大学の取り組みは地域ぐるみでの脱炭素経営支援や学生による可視化チャレンジなど、継続的な活動の一環として位置づけられています。
- 岡山大学(本件ニュース):https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id14567.html
- カーボンフットプリントガイドライン(経済産業省・環境省):https://www.env.go.jp/content/000124385.pdf
- 廣榮堂: https://koeido.co.jp/
- MS&ADインターリスク総研: https://www.irric.co.jp/index.php
- 岡山大学研究・イノベーション共創機構: https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
お問い合わせ先(原文に準拠)
岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部 副本部長 舩倉隆央
〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟
TEL: 086-251-7151
E-mail:co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp
(※◎は@に置き換えてください)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プロジェクト名 | きびだんごカーボンフットプリント(CFP)表示実証研究 |
| 主催・協力 | 岡山大学、株式会社廣榮堂、MS&ADインターリスク総研株式会社 |
| 開始日 | 2025年9月1日(プレスリリース日:2025年9月26日) |
| 実施場所 | 廣榮堂倉敷雄鶏店(倉敷美観地区) |
| 対象商品とCFP | 元祖きびだんご(1箱15個):766 g-CO₂e / むかし吉備団子(1箱15個):638 g-CO₂e(約17%差) |
| 調査方法 | 学生による現地説明・インタビュー、アンケート(天王寺谷達将准教授研究室とMS&ADによる設計) |
| 調査期間・頻度 | 実証研究:~2025年10月31日/アンケート:毎日/学生説明・インタビュー:金曜14:00~16:00(9月12日除く) |
| 主な着目点 | パッケージや原料の違いがCFPに影響/CFP表示が購買行動に与える影響の検証 |
| 問い合わせ | 岡山大学研究・イノベーション共創機構(co-creation◎adm.okayama-u.ac.jp) |
以上が今回の実証研究に関する主な内容と結果の整理です。展示・販売と並行して行われるアンケートとインタビュー調査によって、CFP表示が来訪者の理解や購買行動にどのように影響するかが継続的に検証されます。地域の産学連携を通じた実務的な試みによって、伝統的な商品に環境価値を付加する手法の有効性が評価されることが期待されています。
参考リンク: