住友重機械がSWIに出資 LIPUSで治療実用化を加速

LIPUS製造販売提携

開催日:9月8日

LIPUS製造販売提携
LIPUSって痛みとかあるの?
低出力パルス波を外から当てる方式で、心エコーと同程度の出力。ヘッドセットを装着して横になるだけで麻酔不要、刺激や痛みはほとんどなく身体負担は小さいとされています。
いつ頃一般で受けられるようになるの?
検証的治験は2026年末の完了を予定しています。その後、製造販売承認の申請・審査を経て承認後に段階的に全国展開する見通しで、時期は審査次第です。

住友重機械が出資・提携で早期アルツハイマー治療の実用化に参画

住友重機械工業株式会社は、大学発DeepTechスタートアップのサウンドウェーブイノベーション株式会社(SWI社)に対し、第三者割当増資の引受による出資を行い、かつ早期アルツハイマー病患者を対象とする治療用医療機器「経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置(LIPUS-Brain)」の製造・販売に関する戦略的な業務提携契約を締結したと、2025年9月8日 09時00分に発表しました。今回の合意は、住友重機械が先端医療機器分野への事業展開を強化する一環として位置付けられます。

公表されたリリースには、当該出資が第三者割当増資の形で行われること、並びに製造・販売に関する役割分担についての基本方針が明記されています。住友重機械(本社:東京都品川区、代表取締役社長:下村真司)は製造・販売を担い、SWI社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:下川宏明)は検証的治験の推進および保有する機器に関する知的財産のライセンス使用許諾を行うことが予定されています。

発表主体
住友重機械工業株式会社
発表日時
2025年9月8日 09時00分
出資先
サウンドウェーブイノベーション株式会社(SWI社)
対象機器
経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置(LIPUS-Brain)
代表者
住友重機械:代表取締役社長 下村真司、SWI社:代表取締役社長 下川宏明

提携の背景と企業戦略—認知症対策と中期経営計画2026との整合性

世界的な高齢化の進展に伴い、アルツハイマー病をはじめとする認知症は医療・福祉面での重要な社会課題となっています。リリースでは、患者本人のみならず家族や介護者の生活に大きな影響を与える点が強調されており、QOL(生活の質)向上に資する新たな治療選択肢の必要性が示されています。

住友重機械は「中期経営計画2026」において、新事業探索機能の強化を掲げ、特に「先端医療機器分野」を4つの重点投資領域の一つとして位置付けています。この提携は、長年にわたり培ってきた医療機器製造の技術力と、DeepTechスタートアップが持つ革新的技術を組み合わせることで、製品開発のスピードを高める狙いがあります。

  • 中期経営計画2026の重点投資領域(住重による定義):
    • ロボティクス・自動化
    • 半導体
    • 先端医療機器
    • 環境・エネルギー
  • 今回の取組は「先端医療機器」領域に該当し、事業の多角化と社会課題解決の両立を目指す。

LIPUS-Brainの技術的特徴とこれまでの臨床経過

LIPUS(Low-Intensity Pulsed Ultrasound、低出力パルス波超音波)は、疾患部位ごとに最適化された特殊な低出力パルス波超音波を体外から照射することで作用する先端医療技術です。リリースはLIPUSの作用機序として、超音波の物理的刺激が血管内皮細胞に働きかけ、eNOS(血管内皮型一酸化窒素合成酵素)やVEGF(血管内皮増殖因子)の発現を高めることで血管拡張や血管新生を促し、微小循環障害を改善すると説明しています。

治療機器の利用方法は被検者が低出力パルス波超音波発信機(認知症治療ではヘッドセット)を装着してベッドに横になるだけであり、超音波の出力は心エコーなどの診断装置と同程度であるため、刺激や痛みを伴わず麻酔不要で身体負担が小さい点が特徴です。機器は小型で医療機関の規模を問わず設置可能とされています。

臨床開発の経緯
・2022年:下川宏明(東北大学名誉教授)グループ主導の探索的治験により安全性確認、効果示唆の結果を得る。

・2022年9月:厚生労働省より「先駆的医療機器」第1号に指定。

・2023年10月:検証的治験(治験実施計画書番号: LB1101)開始。

・2024年11月:検証的治験が目標登録症例数(220例)に到達。
臨床研究番号
臨床研究実施計画番号:jRCT2032230125(検証的治験)
参考文献
Shindo T, and Shimokawa. Ann Vasc Dis. 2020;13(2):116–125.

リンク: http://www.cardio.med.tohoku.ac.jp/pdf/13_ra.20-00010.pdf
関連情報
SWI社による先駆的医療機器指定の案内(2022年10月14日): https://sw-innovation.com/news/info/1175/

リリースはまた、LIPUSが心疾患(HFpEF、心筋梗塞、重症狭心症など)に対しても有力な非臨床エビデンスを有しており、将来的な適用拡大の可能性があることを指摘しています。

共同体制、役割分担、手続きスケジュールと今後の見通し

リリースに示された役割分担は明確で、SWI社は検証的治験の推進および保有機器の知的財産のライセンス供与を行い、住友重機械が機器の製造・販売を担う形です。出資形態は第三者割当増資の引受であり、これにより住友重機械はSWI社の事業に資本面でも参画します。

スケジュール面では、検証的治験は2026年末の完了を予定しており、その後速やかに医療機器の製造販売承認取得に向けた手続きを進める計画です。承認取得後は、全国の医療機関で治療が開始できるよう段階的な販売展開を進める方針が示されています。

  1. 出資方式:第三者割当増資の引受による出資(住友重機械→SWI社)。
  2. 役割分担:SWI社が治験推進・知財ライセンス、住友重機械が製造・販売。
  3. 検証的治験完了予定:2026年末。
  4. 承認申請・取得後:段階的に全国展開を推進。
  5. 将来的な拡張:重症狭心症や不整脈などSWI社が手がける他疾患への参画も想定。

資本提携と業務提携を通じて、両社はそれぞれの強みを持ち寄り、LIPUS技術の社会実装を加速することを目指します。住友重機械は医療機器の量産・品質管理の体制構築、SWI社は臨床データの蓄積・知財管理を軸に事業化を進めるものと整理されています。

要点の整理

以下の表に本記事で触れた主要事項を整理します。表は発表内容、対象機器、役割分担、臨床状況、今後のスケジュールなどを一目で確認できるよう構成しています。

項目 内容
発表者・日付 住友重機械工業株式会社、2025年9月8日 09時00分
出資先 サウンドウェーブイノベーション株式会社(第三者割当増資の引受)
出資の目的 LIPUS技術を用いた早期アルツハイマー病の治療機器の社会実装支援と事業化
対象機器 経頭蓋低出力パルス波超音波治療装置(LIPUS-Brain)
役割分担 SWI社:検証的治験推進・知財ライセンス。住友重機械:製造・販売。
臨床開発状況 探索的治験で安全性確認(2022年)。先駆的医療機器指定(2022年9月)。検証的治験開始(2023年10月)。目標登録220例に到達(2024年11月)。
臨床・研究番号 治験実施計画書番号: LB1101、臨床研究実施計画番号:jRCT2032230125
今後の想定スケジュール 検証的治験完了:2026年末予定。承認手続き後、段階的に販売開始。
将来的な応用領域 重症狭心症、不整脈、HFpEF、心筋梗塞などへの適用拡大の可能性
参考文献・情報 Shindo T, Shimokawa. Ann Vasc Dis. 2020;13(2):116–125. / SWI社プレス(2022年10月14日)

以上のとおり、本件は住友重機械が出資と製造・販売体制の整備を通じて、LIPUS技術を用いた早期アルツハイマー病治療の社会実装に取り組むものであり、検証的治験の進捗に応じて承認申請と段階的な医療現場への導入が予定されています。企業側はそれぞれの強みを活かし、患者のQOLに資する新たな治療選択肢の実現を目指すという位置付けです。