生成AIで給付金査定を検証、Finatextらが実証開始

給付金査定AI実証実験

開催日:9月8日

給付金査定AI実証実験
生成AIで給付金査定はどう変わるの?
約款や業務マニュアルをAIに学習させ、支払い可否の根拠を提示して担当者の判断を補助。品質の安定化と処理時間短縮、育成負荷の低減が期待されます。
これっていつ実用化されるの?
今回の実証実験で定量・定性指標を評価し、結果をもとに導入可否とロードマップを検討。期間は未定で、段階的な実務導入が想定されます。

生成AIで給付金支払査定の現場を変える実証実験が始動

2025年9月8日、Finatextとナウキャストは住友生命グループのメディケア生命保険(以下、メディケア生命)と連携し、生成AIを活用した給付金支払査定業務の実証実験を開始すると発表しました。発表時刻は2025年9月8日 11時00分です。

本実証実験は、約款や業務マニュアルなどの公的・社内文書を生成AIに学習させ、給付金支払いの可否判定を補助する機能の実用性を検証します。本取り組みは査定の品質向上と業務効率化を同時に目指し、給付金のお支払いまでに要する期間の短縮を図ることを目的としています。

Finatextとナウキャスト、メディケア生命にて生成AIを活用した給付金支払査定業務の実証実験を開始 画像 2

実証実験の目的と期待される効果

実証実験の主目的は、生成AIによる人的判断の補助が給付金支払査定業務において有効かどうかを検証する点にあります。具体的には、AIの提示する判断根拠が査定担当者の意思決定を支援し、誤判や判断のばらつきを抑えることが期待されています。

結果として想定される効果は主に次の3点です。1) 査定品質の安定化、2) 審査プロセスの効率化による処理時間短縮、3) 担当者の育成負荷やナレッジ共有コストの低減です。これらを定量・定性双方の指標で測定する計画です。

保険業界の課題と実証実験が目指す解決策

近年、保険商品の多様化や高度化に伴い、支払条件や査定判断は複雑化しています。保険会社では査定担当者の育成や品質維持に多大なコストと時間がかかり、特に保有契約の増加とともに請求件数が増える事業会社では人的要因に依存した体制の見直しが急務となっています。

メディケア生命は2010年の営業開始以降、保有契約が順調に増加しており、それに伴い給付金の請求件数も増えています。こうした状況を踏まえ、本実証実験は経験や個人の知識に依存しない査定体制の構築に向けた検証となります。

Finatextとナウキャストのこれまでの取り組み

FinatextはSaaS型デジタル保険システム「Inspire(インスパイア)」を提供しており、2025年8月末時点で15社の保険事業者に導入されています。2025年3月には、保険金の査定文書を生成AIで自動生成する「Inspire 査定支援LLM」を開発し、Finatextグループ内のスマートプラス少額短期保険が実務で活用しています。

ナウキャストはオルタナティブデータを用いた解析や生成AI活用の支援を行ってきました。Finatextと連携して保険の法人営業や保険代理店向けの生成AI環境を開発し、保険事業者のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援してきた実績があります。

  • 参考プレスリリース
    • 2025年3月5日:Finatext「Inspire 査定支援LLM」提供開始
    • 2025年4月4日:Finatext「Finatext Advisory Assist for 法人保険営業」提供開始
    • 2025年7月16日:ナウキャスト「AI-MO」構築(エムエスティ保険サービス向け)

実証実験の方法と各社の役割

実証実験では最新AIモデル(GPT-5を含む複数モデル)を活用し、約款等を学習させた上で給付金支払の可否判断とその判断根拠を提示する機能の検証を行います。実査定業務のプロセスでの実用性評価や、業務効率化・判断品質向上への貢献度を測定する設計です。

評価は実際の査定フローに近い形で行い、定量指標(処理時間、判定の一致率など)と定性指標(査定担当者の使い勝手、提示される根拠の妥当性など)を用いて総合的に判断します。

各社の具体的な役割分担

Finatextとナウキャストは共同でAIコンサルタントと業務スペシャリストによる約款・支払査定業務の分析を行います。業務フローの整理からプロンプト作成、検証環境の構築、ケース検証、結果の評価および実務導入に向けたロードマップ策定支援までを担います。

メディケア生命は支払査定実務に関する情報提供や業務フローへのフィードバック、サンプルケース作成を行い、検証結果を踏まえた今後の実務導入に向けたロードマップ策定に参加します。

  1. 準備フェーズ:約款・マニュアル等の学習データ整備、プロンプト設計
  2. 検証フェーズ:GPT-5含む複数モデルでケース検証、判断根拠提示の妥当性確認
  3. 評価フェーズ:処理時間や判断一致率などの定量測定と担当者の定性評価
  4. 導入検討:実証結果を踏まえた業務適用の可否・実装ロードマップ策定

参画企業のプロフィールと関連情報

本実証実験に参加する主要企業の概要と役割、所在地や代表者について具体的に整理します。各社の強みやこれまでの提供サービスも含めて、読者が容易に比較・参照できるようにまとめます。

以下は本件に関連する各社の会社情報と取り組みの要点です。所在地や代表者名など、プレスリリースに記載された情報を網羅します。

Finatextグループおよび各事業会社の要点

Finatextグループは「金融を“サービス”として再発明する」をミッションに、次世代金融インフラを提供するフィンテック企業グループです。グループ内には金融インフラ、オルタナティブデータ解析、証券プラットフォーム、次世代デジタル保険などを担う事業会社が存在します。

以下はプレスリリースに記載された各社の詳細です。

株式会社Finatextホールディングス
代表者:代表取締役社長CEO 林 良太
証券コード:東証グロース市場 4419
設立:2013年12月
所在地:東京都千代田区九段北一丁目8番10号 住友不動産九段ビル9階
公式サイト:https://finatext.com/
株式会社Finatext
代表者:代表取締役CEO 木下 あかね
設立:2018年12月
所在地:東京都千代田区九段北一丁目8番10号 住友不動産九段ビル9階
公式サイト:https://finatext.com/fn
株式会社ナウキャスト
代表者:代表取締役CEO 辻中 仁士
設立:2015年2月
所在地:東京都千代田区九段北一丁目8番10号 住友不動産九段ビル9階
公式サイト:https://nowcast.co.jp/
メディケア生命保険株式会社
取締役社長:西野 貴智
本社所在地:東京都江東区
備考:住友生命グループに属する生命保険会社
項目 内容
発表日 2025年9月8日 11時00分
参加企業 株式会社Finatext(Finatextグループ)、株式会社ナウキャスト、メディケア生命保険株式会社
目的 生成AIを活用した給付金支払査定における人的判断の補助の有効性検証
使用技術 最新AIモデル(GPT-5を含む複数モデル)による判定補助・根拠提示
主な検証項目 判断の妥当性、提示根拠の品質、業務効率化(処理時間)、実務導入のロードマップ検討
Finatextの製品 SaaS型デジタル保険システム「Inspire」、および「Inspire 査定支援LLM」
関連プレスリリース 2025/3/5、2025/4/4(Finatext)、2025/7/16(ナウキャスト)
公式リンク(代表) https://finatext.com/

この記事では、発表に含まれるすべての情報を整理してお伝えしました。実証実験はGPT-5を含む複数のAIモデルを用いて、約款等を学習させた上で給付金支払の可否判定とその根拠提示の有効性を評価するものです。Finatextとナウキャストは検証環境の構築やプロンプト作成、評価を担い、メディケア生命は実務面の情報提供やサンプルケース作成を行い、検証結果を踏まえた実務導入の検討につなげる計画です。

参考リンク: