ハイドロヴィーナス、半円柱振り子で潮流を発電 岡山大SDGs表彰で発表
ベストカレンダー編集部
2025年9月7日 18:58
ハイドロヴィーナス受賞発表
開催日:8月20日

半円柱振り子で潮流を「振動」に変える——Hydro‑VENUSの技術と事業化
岡山大学発ベンチャーの株式会社ハイドロヴィーナスが実用化を進める発電機「Hydro‑VENUS」は、水の流れを利用して半円柱型の振り子を振動させ、その振動エネルギーを電力に変換する新しい水力発電方式である。プロペラを用いる従来の潮流発電とは異なり、機械的構造が簡素である点が特徴であり、製造コストの低減と維持管理の簡易化を実現することを目指している。
この技術は、岡山大学の学術研究院 環境生命自然科学学域(工)に所属する比江島慎二教授による発明が起源であり、同教授の研究成果を基に設立されたハイドロヴィーナスが事業化を推進している。上田剛慈代表取締役は発表の場で、Hydro‑VENUSが単なる発電技術にとどまらず、環境保全や地域社会での活用、さらにデジタル・トランスフォーメーション(DX)の側面を意識した事業展開を行っていると説明した。

技術の仕組みと利点
Hydro‑VENUSは、潮流や河川流などの水流が半円柱型の振り子に当たることで振動を生じさせ、その振動を発電ユニットで電気に変換する仕組みを採用している。プロペラを回転させる必要がないため、回転摩耗や回転系統の保守・点検が減少するというメリットがある。
また、構造が比較的シンプルであることから、以下のような利点が挙げられる。
- 製造コストの低減:回転機構や大型ブレードを必要としない設計により、部材・加工コストが抑えられる。
- 維持管理の簡素化:可動部が限定されるため点検・保守負荷が低く、長期運用のランニングコスト低減が期待される。
- 環境負荷の低減:魚類などの通過影響や騒音・振動の管理上で有利となる可能性がある。
- 発明者
- 比江島慎二教授(岡山大学 学術研究院 環境生命自然科学学域(工))
- 事業化組織
- 株式会社ハイドロヴィーナス(岡山大学発ベンチャー)

事業展開・大学発ベンチャーとしての強み
ハイドロヴィーナスは岡山大学発ベンチャーとして登録されており、大学との研究連携や研究者とのつながりを活用している。代表の上田氏は、少人数ながら大学発の背景を持つことで存在感を発揮できている点を強調した。
同社は技術開発だけでなく、地域での活用、環境保全、そしてデジタル化を通じたシステム運用(治水DXやエネルギー管理等)を視野に入れて事業を設計している。オンラインでの取り組み発表も行い、外部へ情報発信を継続している点が確認できる。

岡山大学SDGs推進表彰2024:研究分野で優秀賞を受賞
国立大学法人岡山大学は、2025年8月20日に本学部局連絡会で「2024年度岡山大学SDGs推進表彰」の受賞団体による第4回取り組み発表を実施した。本表彰は「教育分野」「研究分野」「その他職場貢献等分野」「学生グループ分野」の4分野で合計5組が受賞しており、ハイドロヴィーナスは研究分野で優秀賞を獲得している。
当日の発表は、学術研究院 環境生命自然科学学域(工)の比江島慎二教授と、株式会社ハイドロヴィーナス代表取締役の上田剛慈氏が行った。上田氏はHydro‑VENUSの技術説明に加えて、環境保全や地域社会での活用、DX観点を組み合わせた事業設計について述べた。発表の様子はオンラインでも配信された。

表彰の位置づけと大学側のコメント
岡山大学の那須保友学長は、今回の発表について「大変夢のある楽しい話だ。大学としても支援していきたいし、このようなアピールの場を今後さらに増やしていってほしい」とのコメントを寄せている。学長のコメントは、大学としての産学連携・ベンチャー支援の姿勢を再確認するものとなっている。
表彰制度はSDGs推進を大学全体で可視化し、教育・研究・社会貢献の側面で優れた取組を奨励することを目的としている。Hydro‑VENUSの受賞は、研究成果の社会実装や地域課題への応用を重視する大学方針と整合している。

関連する採択・受賞・出展履歴と参考情報
ハイドロヴィーナスは岡山大学発ベンチャーとして複数の採択・受賞歴を持つ。これらの実績は技術の市場性や事業基盤の構築につながっている。
以下はプレスリリース中で示された関連情報(出典:岡山大学のプレスリリースおよびPR TIMES掲載情報)である。記載された各リンク先にて詳細が確認できる。
- 岡山大学発ベンチャー・株式会社ハイドロヴィーナスが総務省「ICTスタートアップリーグ」に採択(PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003325.000072793.html
- 「未来X DEMO DAY 2025」で部門別最優秀賞を含む4賞を受賞(PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002949.000072793.html
- 『HIROSHIMA GREEN OCEAN BUSINESS BUILD 2024』に採択(PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002668.000072793.html
- 「U-START UP KANSAI 2024」にてNEDO賞を受賞(PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002510.000072793.html
- EY Japan主催アクセラレータープログラムで「Innovation賞」受賞(PR TIMES): https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002193.000072793.html
- その他、大学関連の出展や称号授与、J-Startup選定等の情報(各PR TIMESリンクは以下参照):
- 【岡山大学】岡山大学SDGs推進表彰2024を受賞した吉川幸准教授が「地域の未来デザイン(実践編)」の取り組みを発表: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003282.000072793.html
- 同表彰を受賞した学生団体「TEDx Okayama University実行委員会」の発表: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003209.000072793.html
- 同表彰を受賞した学生団体「めどことん」の発表: https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003126.000072793.html
- 岡山大学発ベンチャー認定・称号授与・出展情報等(一覧): https://prtimes.jp/(各記事参照)

大学の支援体制と関連組織
岡山大学には研究・イノベーション共創機構をはじめとした産学連携やベンチャー支援のための組織が整備されている。スタートアップ・ベンチャー創出本部や起業相談窓口「V‑Story」などを通じ、研究成果の事業化支援が提供されている。
また、岡山大学は国連のSDGs支援や政府の「ジャパンSDGsアワード」特別賞の受賞など、持続可能な社会構築に向けた取り組みを継続している。大学の地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J‑PEAKS)採択等も、地域との共創を促進する枠組みの一つである。

連絡先・参考リンクと要点の整理
本件に関する問い合わせ窓口、参考ページ、関連組織の連絡先を以下に示す。E‑mailアドレスはプレスリリース原文にならい「◎」に置き換えて表記している。
なお、発表や採択・受賞に関する詳細情報は各リンク先の公式ページで確認できる。
- 岡山大学 研究・イノベーション共創管理統括部 社会共創課 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1(津島キャンパス 本部棟) E-mail:SDGs◎adm.okayama-u.ac.jp
詳細: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id14538.html - 株式会社ハイドロヴィーナス 〒701-0212 岡山県岡山市南区内尾394-28 E-mail:info◎hydrovenus.co.jp 詳細: https://hydrovenus.co.jp/
- 岡山大学 研究・イノベーション共創機構(産学官連携本部) TEL:086-251-8463 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/
- 研究機器共用に関するチーム共用 TEL:086-251-8705 FAX:086-251-7114 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp https://corefacility-potal.fsp.okayama-u.ac.jp/
- スタートアップ・ベンチャー創出本部(起業相談窓口) E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp https://venture.okayama-u.ac.jp/consultation/
項目 | 内容 |
---|---|
発表団体 | 学術研究院 環境生命自然科学学域(工) 比江島研究室/株式会社ハイドロヴィーナス |
発表者 | 比江島慎二教授(発明者)、上田剛慈(代表取締役) |
発表日 | 2025年8月20日(本学部局連絡会における第4回取り組み発表) |
表彰 | 2024年度 岡山大学SDGs推進表彰(研究分野) 優秀賞 |
技術名 | Hydro‑VENUS(半円柱型振り子を用いたプロペラ非搭載の水力発電機) |
主な特長 | プロペラ非搭載、製造コスト低減、維持管理の簡易化、環境配慮、DXによる運用管理の可能性 |
登録・採択・受賞等 | 岡山大学発ベンチャー登録、総務省ICTスタートアップリーグ採択、未来X DEMO DAY 2025等で複数受賞 |
問い合わせ | 岡山大学 社会共創課(SDGs◎adm.okayama-u.ac.jp)、株式会社ハイドロヴィーナス(info◎hydrovenus.co.jp) |
参考リンク | 岡山大学SDGs: https://sdgs.okayama-u.ac.jp/ / ハイドロヴィーナス: https://hydrovenus.co.jp/ / 岡山大学ニュース: https://www.okayama-u.ac.jp/tp/news/news_id14538.html |
上記は、岡山大学と株式会社ハイドロヴィーナスが公表した取り組みの要点を整理したものである。Hydro‑VENUSは物理的な簡素化と運用面での利便性を両立させることを目指し、大学の支援体制や各種公的採択・受賞を背景に事業化を進めている。詳細は各公式リンクから確認できる。
参考リンク: