9月16–18日来日:スコットランドの洋上風力戦略

スコットランド洋上風力来日

開催期間:9月16日〜9月18日

スコットランド洋上風力来日
いつ来日して何をするの?
スコットランドの使節団は9月16日〜18日に来日。WIND EXPOの特別講演(17日)や東京・大阪の招待制ショーケースで技術紹介や協業交渉を行う予定です。
日本側にはどんなメリットがあるの?
浮体式やサブシー技術の導入で開発加速やコスト削減が期待でき、共同研究やサプライチェーン強化、港湾・製造業への受注機会拡大が見込まれます。

スコットランドが示す洋上風力の地政学的優位と技術基盤

2025年9月5日13時25分、スコットランド政府および駐日英国大使館のスコットランド国際開発庁(以下、SDI)は、日本への洋上風力通商使節団派遣を公表しました。発表資料の著作表示は© 2025 Scottish Enterpriseとなっており、今回の来日では浮体式洋上風力を含む再生可能エネルギー分野の連携を加速することが明記されています。

スコットランドは英国北部の約3分の1を占める地理条件と、優れた風況を背景に洋上風力開発の先進地域として位置づけられています。現在稼働中の発電容量は約3ギガワット(GW)、さらに開発パイプラインは40GW超に達し、そのうち半数以上が浮体式洋上風力である点が強調されています。

技術拠点・研究機関
2024年に開設された「浮体式風力イノベーションセンター(ORE Catapult – FLOWIC)」をはじめとして、産官学連携の研究開発基盤が整備されています。特にFLOWICのLarge scale dynamic cable fatigue testing rigなどの設備は、実証・検証能力を高める役割を果たします。
海洋エンジニアリングの蓄積
石油・ガス産業で培われた数十年の海洋工学・サブシー(海底)技術が、浮体式の大型化やコスト削減に活かされている点が強調されています。
スコットランド 洋上風力通商使節団が来日 画像 2

来日使節団の構成と狙い:政府、産業、研究機関による一体的な訪問

今回の使節団には、スコットランド政府の閣僚レベルとして気候対策・エネルギー担当大臣ジリアン・マーティン氏が参加します。加えて、スコットランド政府洋上風力局長、洋上風力発電および港湾インフラ分野で世界をリードする企業や技術者、研究機関のトップが同行します。

使節団の目的は多面的です。日本企業や自治体との新規パートナーシップ創出、技術連携、共同研究の拡大を目指すとともに、浮体式係留・アンカーシステム、海底技術、環境影響評価、運用・保守に関するノウハウとイノベーションの紹介を通じて、長期的な協業基盤を構築することが明記されています。

スコットランド 洋上風力通商使節団が来日 画像 3

参加メンバーの役割と期待される成果

政府関係者は政策フレームや公的支援の枠組みを説明し、企業・研究機関は具体的な技術・ソリューションを提示します。産業界はサプライチェーンの競争力、港湾運営や製造業の実務面での協業機会を探ります。

想定される成果には、日英間の共同研究の立ち上げ、技術移転や現地協業プロジェクトの契約、港湾や海底設備の受注・共同開発などが含まれるとされています。

スコットランド 洋上風力通商使節団が来日 画像 4

日本との既存連携と進行中の協業事例

日英両国は近年、洋上風力分野で協力を強化しており、特に2025年3月には日本の経済産業省と英国側(DESNEZ/DBT)との間で「洋上風力分野における覚書」が締結されています。この覚書に伴い、英国のOREC(Offshore Renewable Energy Catapult)と日本の浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA)も業務連携を取り交わしています。

こうした政府間の枠組みに支えられ、民間レベルでも具体的な協業が進んでいます。以下は公表されている主要な事例です。

  • Balmoral Comtecはコスモス商事と提携。
  • First Marine Solutionsは三井物産の子会社であるホライズン・オーシャン・マネジメント株式会社と提携。
  • 日本企業によるスコットランド洋上風力分野への投資事例として、丸紅東京電力ユーラスエナジーなどが浮体式案件や開発企業への出資を行っている。
官民連携の意義
政府間の覚書や研究機関同士の連携は、規制面や環境評価手法の共有を促し、実プロジェクトの進展に対して制度的・技術的な裏付けを提供します。
技術移転とサプライチェーン
スコットランドのサブシー技術や浮体式係留技術は、日本の港湾・製造業との協業を通じて導入・最適化される見込みです。

来日日程・公開イベントの詳細:WIND EXPOとショーケース

使節団は2025年9月中旬に日本を訪問し、幕張メッセでのWIND EXPO特別講演、東京と大阪・関西万博の英国パビリオンでのショーケースを実施します。これらのイベントは、産業界や自治体、研究者間の交流を前提としたプログラム構成になっています。

以下にイベントの具体的な日程と内容を整理します。いずれのショーケースは招待者限定と明記されています。

イベント名 日程 会場 内容
WIND EXPO【秋】~第16回【国際】風力発電展~ 特別講演 2025年9月17日(水)14:30~15:30(スコットランドは前半30分) 幕張メッセ <WD-S1> 特別講演「洋上風力の最前線 〜カーボンニュートラル実現に向けて〜」 登壇:ジリアン・マーティン(スコットランド政府 気候対策・エネルギー担当大臣)、ミシェル・クイン(スコットランド政府 洋上風力局長)
東京「スコットランド洋上風力発電ショーケース」 2025年9月16日(火) 東京(会場詳細は招待者向け) パネルディスカッション、ネットワーキングレセプション(招待者限定)
大阪・関西万博 英国パビリオン「スコットランド洋上風力発電ショーケース」 2025年9月18日(木) 大阪・関西万博 英国パビリオン パネルディスカッション、ネットワーキングレセプション(招待者限定)

WIND EXPOでの特別講演は事前申し込み制で、スコットランド側は講演の前半30分を担当します。講演内容はプロジェクト規模やタイムライン、特に浮体式洋上風力に向けた政府のコミットメントやサプライチェーンの競争力を中心に説明される予定です。

大阪・関西万博期間中には、スコットランド政府および駐日英国大使館・SDIが主導する「Scotland Day」を全3回にわたり開催する計画が示されています。4月17日はゲームおよび消費者産業、6月26日はヘルステック、9月は洋上風力産業をテーマに据えており、今回の洋上風力関連イベントはその9月回に該当します。

ショーケースのテーマと構成

東京と大阪でのショーケースは、パネルディスカッションとネットワーキングを通じて、日英両国の産業界が共に成長する機会を提供する構成です。提示予定のテーマは以下の通りです。

  • 「欧州の洋上風力発電の中心地:スコットランド・日本との連携によるグリーンな未来へ」
  • 「スコットランド発:洋上風力の技術革新とその展開力」

政府関係者や企業代表が登壇し、戦略的協力モデルの提示と具体的な協業例の紹介が行われるとされています。

記事の要点整理(まとめ表)

以下の表に、本記事で言及した主要な情報を整理しました。訪問目的、参加者、イベント日程、既存の協業事例、研究・技術拠点などを一目で確認できます。

項目 内容
発表機関・日時 スコットランド政府・駐日英国大使館 スコットランド国際開発庁(SDI)/2025年9月5日 13:25(© 2025 Scottish Enterprise)
来日の主目的 洋上風力(着床式・浮体式)分野での日本との連携強化、技術連携、共同研究、パートナーシップ創出
主要参加者 ジリアン・マーティン(気候対策・エネルギー担当大臣)、ミシェル・クイン(洋上風力局長)、企業・研究機関トップ等
技術基盤・拠点 浮体式風力イノベーションセンター(ORE Catapult – FLOWIC)、OREC、FLOWRA等
既存協業事例 Balmoral Comtec—コスモス商事/First Marine Solutions—ホライズン・オーシャン・マネジメント(三井物産子会社)/丸紅、東京電力、ユーラスエナジー等による出資
主なイベント 9月16日 東京ショーケース(招待)/9月17日 WIND EXPO 特別講演(幕張メッセ WD-S1、14:30~15:30)/9月18日 大阪・関西万博 英国パビリオン(招待)
政策的枠組み 2025年3月の日英覚書(経済産業省と英国 DESNEZ/DBT)およびORECとFLOWRAの覚書等
関連リンク https://www.sdi.co.uk/

本稿は、SDIによるプレスリリースの内容を基に、スコットランドの洋上風力分野における技術的優位性、来日使節団の構成と狙い、日本側との既存協業事例、各イベントの具体的日程を整理しました。今後の協業の進展は、実際の共同プロジェクトや契約の成立、技術移転の実行により具体性を増していく見込みです。

参考リンク: