DNPとIWIが実証実験 非対面決済で不正情報の自動共有へ

DNP×IWI 非対面決済連携

開催日:9月5日

DNP×IWI 非対面決済連携
これで何が変わるの?
不正確定情報が両システムで自動共有されることで、手作業の登録工数が大幅に減り、登録件数増でAIの学習データが増加。結果的に検知精度や検出の速度が上がり、イシュアの運用負荷も軽減されます。
86.4%って十分なの?
86.4%は異なるデータ構造間で高いマッチングを示す良好な結果ですが完全ではありません。残り約13.6%はフォーマット差やデータ欠損が主因で、前処理や照合ロジックの改良でさらなる改善が見込まれます。

非対面決済における二社連携――目的と発表の要点

大日本印刷株式会社(DNP)株式会社インテリジェントウェイブ(IWI)は、非対面決済分野における不正取引対策を強化するための連携を進めています。両社は2025年9月5日11時00分に取り組みの成果を公表しました。本稿ではプレスリリースの内容を整理し、実証実験の意義、得られた結果、運用上の変化や今後の検討事項までを詳細に解説します。

今回の連携は、DNPが提供する「3Dセキュア2.0 本人認証サービス」と、IWIが提供する「カード不正利用検知システム」の間で取引情報のデータマッチングを行い、自動的に不正取引情報を共有できるかを検証するものです。実証実験により86.4%のマッチング率が確認され、今後の運用自動化により不正検知精度の向上と運用負荷の軽減が期待されます。

  • 発表日:2025年9月5日 11:00
  • 連携サービス:3Dセキュア2.0(DNP)/カード不正利用検知システム(IWI)
  • 実証結果:マッチング率 86.4%

実証実験に取り組んだ背景と狙い

近年、クレジットカードの不正利用被害が深刻化しており、対策強化が急務となっています。日本における統計では、2024年の不正利用被害額が555億円と過去最高を記録しており、そのうち番号盗用が占める割合は92.5%に上ります。このような背景から、非対面取引に対する検知・防止策の高度化が必要とされています。

経済産業省が示す「クレジット・セキュリティ対策ビジョン2025」では、異なるシステム間での情報共有が不正検知精度向上の鍵であると明示されています。両社はこの指摘に沿い、従来は構造や保有データが異なるため連携が難しかった二つのシステム間での自動情報共有を検証することを狙いとして実証実験を行いました。

参考データ
・一般社団法人日本クレジット協会:クレジットカード不正利用被害の発生状況(リンクあり)
・経済産業省:クレジット・セキュリティ対策ビジョン2025(リンクあり)

実証実験の方法と得られた結果の詳細

実証実験では、両システムが保持する取引データの構造や項目が異なる点を踏まえ、データ分析と照合手法の設計から行いました。特に「1対1でユニークにマッチングできるか」を重要指標として設定し、DNP側の3Dセキュア取引データとIWI側のカード不正利用検知データのフィールドを突き合わせて検証しました。

さらに、データ検証に加え、国内の一部イシュア(カード発行会社)を対象にPoC(Proof of Concept/概念実証)を実施し、実運用に近い条件での照合結果を得ています。これにより実務上の運用面、タイムラグ、データ連携の可否などについても確認が行われました。

実験設計のポイント

実験では以下の点を中心に設計しました。複数の取引項目の照合、データの正規化、ユニークキー抽出、照合アルゴリズムの評価です。データは匿名化等のプライバシー保護措置を取りながら、照合精度を確保する検証を行いました。

また、異なるフォーマットや保有フィールドの差を吸収するための変換ロジックを実装し、照合の成立条件(例えば取引ID・カード番号・日時・金額などの組合せ)を明確化しました。これにより、異なるシステム間での1対1マッチング可能性を検証しました。

実験結果とその意味

評価項目 結果
総マッチング率 86.4%
PoC実施 一部国内イシュアと概念実証を実施
主な確認事項 1対1のユニークマッチングが実現可能

86.4%のマッチング率は、二つの異なるデータ構造を持つシステム間でも高い連携可能性があることを示しています。完全一致に至らない約13.6%については、フォーマット差異や一部データ欠損などの要因が想定され、さらなるデータ前処理や照合ロジックの改良で改善可能とされています。

また、実証において得られた不正確定情報が3Dセキュア側へ反映されることで、早期に不正デバイス情報等を取り入れた検知が可能になる点が確認されました。

連携がもたらす運用上の効果と今後の取り組み

自動共有が実現した際に期待される効果は多岐にわたります。最大の効果は、従来手作業で行っていた不正確定情報の両システムへの登録作業が大幅に削減される点です。これにより、イシュアの業務負荷が軽減され、これまで手間を理由に登録が行われていなかったイシュアでも情報登録が行いやすくなります。

登録件数の増加は不正検知に利用できる情報の母数を増やし、結果的に検知精度向上につながります。さらに、登録作業のタイムラグが解消されることで、より早期に不正デバイス情報を連動して活用できるようになります。

  • 運用負荷削減:手作業による登録工数の削減
  • 早期検知:登録タイムラグの解消による迅速な不正情報活用
  • 検知精度向上:AIスコアリングの精度向上による判定精度改善
  • 通知連携:決済が拒否された取引のメール通知など具体的対策の展開

AIスコアリングについては、3Dセキュアで検知した不正取引情報をカード不正利用検知システムへ連動させることで、機械学習モデルにより算出されるスコアの精度向上が期待されています。これにより誤検知の低減や検知漏れの抑制に資する可能性があります。

両社は実証実験結果のさらなる分析・検証を行い、情報共有による不正対策効果の具体的な算出と、運用負荷削減に向けたシステム化の検討を進めるとしています。実運用へ向けた課題としては、残存するマッチング不能ケースの解消、データ品質向上、各イシュアの導入・運用フローとの整合性確保が挙げられます。

参考リンク(プレスリリースで提示された出典)
・DNP「3Dセキュア2.0 本人認証サービス」: https://www.dnp.co.jp/biz/products/detail/20172359_4986.html
・IWI「カード不正利用検知システム」: https://www.iwi.co.jp/products/payment/credit-card-fraud-detection.html
・日本クレジット協会「クレジットカード不正利用被害の発生状況」: https://www.j-credit.or.jp/information/statistics/download/toukei_03_g.pdf
・経済産業省「クレジット・セキュリティ対策ビジョン2025」: https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/credit/2022060221001.pdf

要点の整理

以下の表は本記事で触れた主要ポイントを整理したものです。実証実験で確認された数値や取り組みの意図、期待される効果をコンパクトにまとめています。

項目 内容
発表企業 大日本印刷株式会社(DNP)/株式会社インテリジェントウェイブ(IWI)
発表日 2025年9月5日 11:00
対象サービス 3Dセキュア2.0 本人認証サービス(DNP)/カード不正利用検知システム(IWI)
実証内容 両システムが保持する取引データの分析・照合による1対1ユニークマッチングの可否検証
主な結果 マッチング率 86.4%(データ検証および一部イシュアとのPoCに基づく)
背景 2024年のカード不正利用被害額555億円、うち番号盗用が92.5%を占める等の状況
期待される効果 不正検知精度の向上、運用負荷の大幅削減、AIスコアリング精度向上、通知連携などの対策展開
今後の対応 さらなる分析・検証、効果の数値化、システム化の検討

本稿は、プレスリリースに含まれる情報を全て反映して整理しました。発表時点の情報に基づく内容であり、記載の各種情報は発表日以降に変更される可能性があります。