ポーラ化成工業、感触設計AI「AIM POLAR」を発表
ベストカレンダー編集部
2025年9月4日 12:28
AIM POLAR発表
開催日:9月4日

感触を数値化し処方へつなげる—AIM POLARの設計思想と機能
ポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行)は、化粧品開発支援AIシステム「AIM POLAR(エイム ポーラー)」を開発したと、2025年9月4日11時00分に発表しました。本発表は、ポーラ・オルビスHD傘下で研究・開発・生産を担う同社が公表したもので、化粧品の使い心地に直結する「感触」を中心に、処方設計を多面的に支援する点が特徴です。
このシステムは、目標とする感触を入力すると、それを実現するための最適な成分組成(処方)を予測するとともに、鍵となる成分を提示する機能を備えています。従来の試作と評価を繰り返すフローに対し、AIによる机上検討で有力候補を絞り込めることにより、試作回数の削減や開発速度の向上が期待されます。

「感触」を扱うAIの構成要素
AIM POLARは単一のモデルではなく、感触の予測と品質の予測という複数のAIを統合したシステムです。これにより、使い心地(感触)の設計と、安全性や安定性などの品質面の両方を考慮した処方例を提示できます。
同社は過去に感触づくりAIに関する研究開発を行っており(参考リリース:2021年7月29日、2022年9月15日)、これらの蓄積を踏まえて今回の総合システムを構築したとしています。

蓄積データとノウハウの統合—AIM POLARが提示する処方の特性
ポーラ化成工業は、自社が保有する数百種類に及ぶ製品データ(処方、感触、品質など)をAIM POLARに学習させ、代々受け継いできた処方設計ノウハウを凝縮しました。その結果、同社らしい使い心地や品質を総合的に考慮した処方例を短時間で提示できます。
この学習データには処方パターンだけでなく、感触を定量化した指標や品質評価の履歴が含まれており、AIはこれらを組み合わせて目標に合致する候補を設計者へ提示します。提示は処方例のみならず、重要成分の候補や品質に関する予測結果も含まれます。

ネーミングに込めた意味
補足資料によれば、名称「AIM POLAR」には「化粧品開発における究極の地を目指す」という意図が込められています。人とAIの共創によって未踏の領域に挑み、新たな価値を拓くという意思を反映した命名です。
また、社の英字ロゴ“POLA R&M”と“AI”を組み合わせたアナグラムとしての意味合いも説明されています。
活用事例と現場での効果 ― 目元用クリームの開発ケース
AIM POLARは実際の製品開発でも活用が進んでいます。補足資料に示された事例では、ある目元用クリームで従来品の感触を見直し、新たに「密着感とハリ実感」を重視した感触を目標に据えました。具体的にはレーダーチャートで感触指標を可視化し、目標スコアに合わせて“かたさ”“被膜感”“しっとり”“ハリ感”等の項目を設定しました。
AIにより提示された処方候補の中から、品質予測の結果で問題のないものを絞り込み、実際に試作・評価を行ったところ、狙った4つの感触を狙い通り実感できたと報告されています。使用テストでは「クリームを塗り広げると目元にしっかり密着し、うるおいが続きハリを感じる」との評価が得られました。
効果の定量的側面と環境配慮
AIM POLARの導入により机上検討での候補絞り込みが進み、実際の試作回数が大幅に削減される点が強調されています。試作回数の減少は原料や容器などの廃棄物削減に寄与し、環境負荷低減にもつながると説明されています。
また、開発者が短期間で多様な処方設計に触れる機会が増えることから、教育・スキルアップツールとしての活用も期待されています。
共同開発体制とAIM POLARが生む価値
本開発は株式会社SBX(本社:東京都品川区、社長:北野宏明)と共同で実施されました。SBXはバイオメディカル分野を中心にAIやデータ分析、自然言語解析のプラットフォームおよび自動化・IoT技術を提供する企業で、今回のシステム開発ではSBXの技術基盤と連携して開発が進められたとされています。
補足資料では、AIM POLARの活用により開発者がAIの予測結果をヒントに新たな感触や処方を発想する機会が増え、従来は到達できなかった未知の感触の創出につながる可能性が示されています。さらに、処方設計ノウハウを学ぶツールとしての機能は、若手や中堅の技術者のスキル加速にも貢献する点が示唆されています。
SBXの役割と技術基盤
SBXは、独自プラットフォーム(Gandhara, Taxila)および自動化・IoTプラットフォーム(Garuda)などを有し、科学的発見のためのエンジンを目指す企業です。今回の共同開発では、こうしたデータ処理・解析基盤がAIM POLARの構築に活かされたとされています。
共同開発体制は、化粧品分野の専門ノウハウと高度なデータ解析技術の融合を象徴するものと位置づけられます。
要点の整理
以下の表に本発表で示された主要事項を整理します。本システムの目的、構成要素、実証事例、共同体制などを明確にまとめています。
項目 | 内容 |
---|---|
発表日 | 2025年9月4日 11:00 |
発表者 | ポーラ化成工業株式会社(本社:神奈川県横浜市、社長:片桐崇行、ポーラ・オルビスHDグループ) |
製品名 | AIM POLAR(化粧品開発支援AIシステム) |
主な機能 |
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学習データ | 同社が保有する数百種類の製品データ(処方、感触、品質など)と処方設計ノウハウの集約 |
活用事例 | 目元用クリームの感触設計で、密着感・ハリ感を高める処方を提示、実試作で狙い通りの感触を確認 |
共同開発 | 株式会社SBX(AI・データ解析・自動化プラットフォームを提供) |
期待される効果 | 試作回数削減による開発速度向上、廃棄物削減による環境負荷低減、開発者のスキルアップ支援 |
補足資料 | 過去の感触AI関連リリース(2021年7月29日、2022年9月15日)および命名・活用事例の説明あり |
AIM POLARは、ポーラ化成工業が蓄積してきたデータと処方設計のノウハウをAIに集約することで、開発者の発想と結びついた新たな処方設計を可能にするプラットフォームを目指しています。机上での多面的な検討を通じて有力候補を絞り込み、実試作を効率化することで、製品の先駆性と開発のスピードを高めることが期待されます。