猛暑と建設で好転、8月の景気DI43.3
ベストカレンダー編集部
2025年9月3日 17:09
2025年8月の景気改善
開催期間:8月1日〜8月31日

猛暑と建設需要がけん引した2025年8月の国内景気概要
株式会社帝国データバンクが実施した「TDB景気動向調査(全国) ― 2025年8月調査 ―」の結果では、2025年8月の景気DIが前月比0.5ポイント増の43.3となり、3カ月連続の改善を示しました。猛暑に伴う需要の急増と、全国各地で継続している建設需要が景気を下支えしたことが主要因とされています。
一方で、米国の関税政策に関する不確定要因や、屋外レジャーの低迷、価格転嫁の遅れといった下押し要因も指摘されています。全体としては上向き傾向が続くものの、実質賃金の動向などに注視が必要であり、当面は横ばい圏での推移が見込まれるとされています。

総括的なポイントと主要数値
調査結果の要点は次の通りです。景気DIは43.3(前月比+0.5)、業界別では10業界中9業界が改善、規模別では「大企業」「中小企業」「小規模企業」がそろって改善、地域別では10地域中8地域が改善しました。サービス業のみが悪化しています。
この月は記録的猛暑が消費行動や販売を刺激し、飲食関連や熱中症対策商材、エアコンなどの特需が幅広い業種に波及しました。金融市場でも日経平均株価が最高値を更新し、資金流入がみられるなど投資環境の好転も確認されています。
項目 | 値 |
---|---|
景気DI(2025年8月) | 43.3(前月比+0.5) |
改善した業界数 | 9業界(10業界中) |
悪化した業界 | サービス(唯一の悪化) |

業種別・規模別の詳しい動きと背景要因
8月は製造業、小売業、建設業など幅広い業種で改善がみられました。特に飲食関連はお盆休みの消費増や季節需要の影響を受け、川上(素材・卸)から川下(小売・飲食店)まで連鎖的に改善しました。
一方で、サービス業は屋外レジャーの利用減少など猛暑が逆風となり、娯楽サービスや広告関連などで悪化が確認されました。人材派遣・紹介も派遣先の減産や人材確保の難しさから下振れしています。

製造・小売・金融・サービスの詳細な数値と特徴
主要業種のDIと動向は以下の通りです。数値は8月のDIと前月差を示しています。製造は部門差がありながらも総じて改善、小売は季節商材や家電が寄与、金融は株価上昇や資金流入が好影響、サービスは屋外関連の落ち込みが主因でした。
- 製造:39.6(前月比+0.7)。「飲食料品・飼料製造」や「化学品製造」は改善。一方で「輸送用機械・器具製造」は自動車関税の不確定要因で3カ月ぶりに悪化(同-1.6)。
- 小売:39.4(同+0.5)。飲食料品小売や医薬品・日用雑貨の需要増、エアコンなど家電販売の好調が寄与。
- 金融:46.5(同+0.3)。日経平均最高値更新などを受け、資金流入や利息収入の改善が観測。
- サービス:48.2(同-0.1)。娯楽サービスや広告関連、人材派遣が下押し。飲食店は改善(同+1.2)で3カ月連続の上向き。
業種ごとに明確な差が出ており、猛暑という同一の外部要因が業種によってプラスにもマイナスにも働いた点が特徴です。

規模別の傾向と特徴
企業規模別では、今回は2024年9月以来11カ月ぶりに大企業・中小企業・小規模企業のすべてがそろって改善しました。大企業は製造や小売が牽引し、4カ月連続での改善となっています。
- 大企業:47.8(前月比+0.5)。電気機械製造などがリードし、DIは50台に近い水準を維持する部門もある。
- 中小企業:42.6(同+0.6)。卸売や製造が寄与。飲料や製氷関連が好調な飲食料品卸売などが挙げられる。
- 小規模企業:41.7(同+0.8)。農・林・水産や建設の繁忙が全体を押し上げた。
規模別で均衡した改善が見られたことは、景気回復の裾野が広がっていることを示唆しますが、物価高や人手不足の影響が依然として残っている点は留意に値します。

地域別の差と飲食関連のトピックス
地域別にはばらつきがあり、10地域中8地域が改善しました。各地での建設需要や観光・人流の増加がプラス要因となった一方で、一部地域は自動車関連産業の低迷や猛暑の影響を受けて下押しを受けています。
東京都などの大都市圏では消費活動の回復が確認される一方、北関東などはサービス業の落ち込みが影響して景況感を悪化させました。
注目地域の動き
具体的な地域動向として、北海道、近畿、北関東の状況が明確に示されています。北海道や近畿では農水産や建設が牽引役となっているのに対し、北関東は暑さや自動車関連の影響で下振れしています。
- 北海道:43.9(前月比+0.2)。米価や乳価上昇を受けた農・林・水産の大幅改善と、飲食料品・飼料製造など製造分野の好調。
- 近畿:42.7(同+1.2)。5カ月ぶりの改善。大阪・関西万博等による人流増と、建設工事の好調が寄与。
- 北関東:41.0(同-0.3)。3カ月ぶりに悪化。サービス低迷と自動車関連産業の影響が主因。
都道府県別では33都道府県が改善、13県が悪化しており、地域差が依然として大きいことが分かります。
飲食関連の景況感に関するトピックス
本調査では飲食関連の景況感が幅広い業種で改善したことが特記されています。お盆休み期間の飲食店の賑わい、季節商品(冷菓・飲料等)の増加が上流から下流まで波及しました。
東京都における猛暑が家計消費支出に与えた影響については、〈食料〉項目で「外食」や「飲料」、アイス等の〈菓子類〉が伸びた結果、約192億円の増加と推計されています。飲食関連の好調は卸売や製造、流通、小売まで広く波及しています。
調査の方法とDIの読み方、主要ポイントの整理
本調査は2002年5月から継続して行われている月次のビジネス・サーベイで、全国の企業活動全般(景況判断、売上、生産、設備投資、雇用等)を把握する目的で実施されています。今回の調査は2025年8月18日から8月31日の期間にインターネットで行われました。
調査対象は2万6,162社で、有効回答企業数は1万701社(=10,701社)、回答率は40.9%でした。次回の発表予定日は2025年10月3日(金)13時30分です。
DI(ディフュージョン・インデックス)の算出方法と注意点
DIは7段階の企業判断に点数を付与して算出する指標で、50を境に上なら「良い」、下なら「悪い」と判断されます。小数点第2位を四捨五入し、企業規模によるウェイト付けは行わず「1社1票」で集計されています。
また、景気予測DIはARIMAモデルと構造方程式モデルの結果を組み合わせたForecast Combinationで算出され、予測区間(幅)を破線等で示します。業種別や地域別、規模別により状況が大きく異なるため、DIだけで全体を評価するのではなく、構成要素や現場の声も合わせて見る必要があります。
調査の概要と参加呼びかけ
調査の対象選定は全国・全業種・全規模を念頭に、調査協力の承諾が得られた企業を中心に行っています。調査項目は景況感、売上、生産・出荷量、仕入れ・販売単価、在庫、設備稼働率、従業員数、時間外労働、雇用過不足、設備投資意欲、金融機関の融資姿勢など、企業活動に関する多岐にわたる項目を含みます。
当調査では協力企業を広く募集中で、協力企業は各種DI推移表や企業の声一覧などへのアクセス特典があります。協力登録は所定の登録フォームから行う形式です。
本文で触れた主要データの整理
以下の表は、本記事で取り上げた主要な数値と要点を整理したものです。数値と要点を一覧で確認することで、8月の景況感の全体像を把握しやすくしています。
項目 | 数値・内容 |
---|---|
景気DI(2025年8月) | 43.3(前月比+0.5) |
改善・悪化状況 | 10業界中9業界が改善、サービスのみ悪化 |
主要業種DI(抜粋) | 製造 39.6(+0.7)、小売 39.4(+0.5)、金融 46.5(+0.3)、サービス 48.2(-0.1) |
規模別DI | 大企業 47.8(+0.5)、中小企業 42.6(+0.6)、小規模企業 41.7(+0.8) |
地域別の状況 | 10地域中8地域が改善。北海道 43.9(+0.2)、近畿 42.7(+1.2)、北関東 41.0(-0.3) |
調査対象・回答 | 調査対象 26,162社、有効回答 10,701社(回答率 40.9%) |
調査方法・期間 | インターネット調査、2025年8月18日〜8月31日 |
主要トピックス | 猛暑による飲食関連の特需、熱中症対策商材やエアコンの販売、建設需要の継続、東京都の食関連消費で約192億円の増加推計 |
次回発表 | 2025年10月3日(金)13:30予定 |
本稿では、帝国データバンクによる2025年8月の景気動向調査の結果を、主要数値と業種・地域・規模別の詳細な動きを含めて整理しました。猛暑や建設需要といった実物面の需要変動、米国の関税政策や実質賃金の動向といった不確定要因の双方が景気見通しに影響を与えており、今後は物価・賃金・雇用・金融政策の動きを注視する必要があります。