ムーンショットパークで体感する未来技術と見どころ
ベストカレンダー編集部
2025年9月3日 14:39
ムーンショットパーク展示
開催期間:8月20日〜9月15日

大阪・関西万博フューチャーライフヴィレッジで「ムーンショットパーク」を体感する
フューチャーライフエクスペリエンス・「TEAM EXPOパビリオン」広報事務局が発表したプレスリリース(2025年9月3日 11時30分)によると、内閣府による展示「ムーンショットパーク ~見て!触れて!感じる!新・未来~」がフューチャーライフヴィレッジで開催中です。本展示は来場者が未来社会の可能性を“見て・触れて・感じる”ことを目的とした体験型展示で、週替わりのプログラムを9月15日まで実施しています。
ムーンショット型研究開発制度は、超高齢化や地球温暖化などの社会課題に対し、国が設定した10の野心的な目標(ムーンショット目標)に基づいて挑戦的な研究を推進する制度です。ムーンショットパークでは、アバターやロボットの活用、健康寿命の延伸、資源循環、気象制御など、2040年・2050年を見据えた多様な研究開発の成果や試みを体験できます。

開催情報と関連リンク
展示はフューチャーライフヴィレッジ会場にて実施。詳細は主催側の案内ページで確認できます。
関連リンク:https://www.expo2025.or.jp/future-index/future-life/flv/

8月20日~8月31日の注目展示:脳波操作から気候制御、台風対策まで
8月20日から8月31日まで行われた展示では、BCI(Brain-Computer Interface)体験や気象・台風制御に関する研究紹介など、来場者が直接参加できる実演や映像展示が目立ちました。以下に各展示の内容を詳細に紹介します。
いずれの展示も単なる説明に留まらず、来場者が機器を操作したり映像を鑑賞したり、風洞実験やシミュレーションによって体感できる構成になっていました。

■ 脳波でゲームをコントロール!ブレインピック体験
脳電位から得られる微弱な信号を読み取り、手足を使わずに機械やキャラクターを操作するBCI(Brain-Computer Interface)の体験が提供されました。来場者はフォートナイト内の特設スタジアムでキャラクターを走らせるゲームに参加し、コントローラーではなく脳波測定装置を装着して「走る」動作を思い描くことでキャラクターを動かします。
体験は混雑時に整理券方式で運営され、画面上には来場者の脳波とキャラクターのシンクロ率が数値で可視化されます。シンクロ率が高まるほど長い距離を走行できる仕組みで、参加者は脳と機械の同期が進む感覚を視覚的に確認できました。
- 体験形式:体験型ゲーム(整理券運用あり)
- 使用技術:BCI(脳波測定デバイス)
- 展示意図:脳と機械の直接接続の実感、医療・福祉分野での応用可能性

■ 未来のてるてる坊主ってどんなカタチ? 豪雨制御技術の紹介
頻発する豪雨被害を軽減するための「豪雨制御技術」研究を、2050年の未来を描いたアニメーション映像とパネル・実験で紹介しました。映像では、女子高校生、建築家、アーティスト兼会社員という異なる立場の3人が、市民会議で雨と向き合う姿が描かれ、技術受容に伴う社会的な葛藤も提示されます。
映像鑑賞後は、海上に設置する洋上カーテンを模した風洞実験やパネル展示を通じて研究の一端に触れられ、来場者は「気候を制御する未来」が実際の選択肢として提示される様子を臨場感を持って体験しました。
- 鑑賞:2050年を描いたアニメーション
- 実験:洋上カーテンの風洞実験など
- 議論の提示:市民の受容や選択に関するストーリー

■ 台風を脅威から恵に ― 台風制御と台風発電の研究
台風の勢力を弱める「台風制御」と、台風のエネルギーを活用する「台風発電」に関する研究を、台風研究の専門機関である台風科学技術研究センターを中心に紹介しました。展示では過去の大型台風をモデルに、巨大地図上で進路や勢力の変化のシミュレーションを実演しました。
さらに、床上・床下浸水や住宅被害額が台風制御によりどの程度抑えられるかを数値で可視化。台風ごとの形や動きの違いが分かるミニチュアモデルも並び、来場者は研究が災害リスク低減に寄与する可能性を視覚的に理解できる構成でした。

9月2日~9月15日の展示:「未来の地球は変えられる!」— 温暖化と食料問題を技術で考える
9月2日から15日にかけての展示は「未来の地球は変えられる!~技術の力で解決しよう(温暖化や食料問題)~」を中心に構成されます。来場者は「過去の地球」と「未来の地球」の二つのゾーンを通じて、地球環境の現状と回復のための技術を学び、体験できます。
本展示の趣旨は、二酸化炭素やマイクロプラスチックの流出、化学肥料由来の窒素化合物などが引き起こす地球規模の課題を提示し、その上でムーンショット型研究開発制度の取り組みによる回復シナリオを示す点にあります。

展示内容の概要と見どころ(地球環境の再生)
海洋プラスチックエリアでは、日常のプラスチック製品が年間約800万トンものゴミとなって海に流れ込む現実を体験できます。深海5,500mから採取されたプラスチックごみの実物も展示され、海洋プラスチック問題の深刻さを直接把握できます。
窒素化合物に関しては、ハーバー・ボッシュ法などの化学肥料がもたらした農業生産の飛躍と、その副作用としてのプラネタリー・バウンダリー超過の問題を模型や映像で解説します。未来ゾーンでは、ARを使ったDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)装置の可視化や、海洋生分解性プラスチックの分解過程の映像、N₂Oを扱ったゲームや藻類からのバイオ燃料生産など、体験型のジオラマが用意されています。

見どころ(食料問題の解決)
2050年に向け、世界人口はプレスリリースで「90億人」に達するとされ、食料需要は現在の約1.7倍が想定されています。この見通しを踏まえ、温室効果ガス排出を抑えつつ食料生産を拡大する研究が紹介されます。
具体的には、ムーンショット目標5で掲げられる「2050年までに牛のゲップに含まれるメタンを8割削減する」取り組み、化学農薬を使わない害虫対策、土壌微生物を利用した養分生成、水が少ない環境でも育つ作物の開発などが示され、動画や模型、家畜・農地模型を通じて理解できるようになっています。展示に付随する8つの研究開発に関する詳細はQRコードで参照可能です。

これまでに展示されたテーマとフューチャーライフヴィレッジの役割
ムーンショットパークでは、健康・医療、環境、エネルギー、ロボット共生、宇宙開拓、量子コンピュータなど幅広いテーマが紹介されてきました。フューチャーライフヴィレッジは大阪・関西万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」を基に、多様な参加者が『未来の暮らし』『未来への行動』を共有し、対話と共創を行う場です。
また、「フューチャーライフエクスペリエンス」は日常に近い分野の展示を行い、「TEAM EXPOパビリオン」は発表者と来場者の対話を促すことで新たな共創を生み出すことを目的としています。ここでは、これまでに展示された主なコンテンツを一覧で示します。

これまでに展示された主なコンテンツ(一覧)
以下はムーンショットパークでこれまでに展開された展示のタイトルと内容の要約です。各項目は来場者が体験を通じて未来の社会像に触れることを意図しています。
タイトル | 内容(要点) |
---|---|
Cybernetic being Life | 「もう一つの身体」を得る未来を描いた展示。サイバネティック・アバターを通じて年齢や障害の有無にかかわらず活動できる社会像を紹介。分身ロボットや脳波でロボットアーム操作などを体験。 |
生体内サイバネティック・アバターと歩む未来の健康社会 | 体内に配置する小さなアバターで病気の兆候検知やピンポイント投薬が可能になる想定を可視化し、個人の健康管理が日常に溶け込む未来を提示。 |
慢性炎症ハンターズ ~100歳まで健康に生きられる未来へ~ | ムーンショット目標7のキーワード「慢性炎症」を体験型展示で解説し、健康寿命延伸に向けた取り組みをゲーム形式で紹介。 |
挑戦を後押しする未来のロボットパートナー | 利用者の状況や感情に合わせて形や機能を変えるロボットが旅行や買い物、スポーツをサポートする姿を展示。 |
ようこそ!ロボットと共に歩む2050年の未来へ | 運動透視テクノロジーで筋肉や骨の動きを可視化し、ロボット制御への応用を示す展示。 |
ロボットに触れて、人・ロボット共生社会を体験しよう | 家事・介護・医療分野で協調するAIロボットを体験。柔らかな動きや自然対話で共生の姿を実感できる展示。 |
街中に溶け込んだ未来の健康診断を体験しよう | 採血不要など身体負担の少ない、日常延長上の健康チェック技術を紹介。 |
ロボットがつくる月面世界で、何がしたい? | 月面長期滞在を支えるロボット技術を映像と実演で紹介し、来場者に月での暮らしを想像させる展示。 |
量子コンピュータってどんなもの? | 量子コンピュータの有効活用分野や自然界シミュレーションの期待を解説、超伝導型量子コンピュータ模型を展示。 |
フュージョンエネルギーで実現する未来社会 | 太陽と同じ原理の核融合研究を紹介し、環境に優しいエネルギー源としての可能性を提示。 |
あなたの「想い」が届く未来:自在ホンヤク機 | 脳波解析で体験者同士のシンクロ状態を音や光で表現する展示。言葉を超えた新しいコミュニケーションを提示。 |
アバターランドで楽しもう! | ホスピタリティ豊かなアバターと触れ合い、教育や医療、遠隔参加の可能性を体験。 |

フューチャーライフヴィレッジのトピックス
会場内のトピックスとして、次の2点が挙げられています。どちらも期間や設置場所が明示されていますので、来場時の参考になります。
- TOPICS1:「しゃべりかけるミャクミャク」コーナー新設 — 首相官邸にも設置された同型モデルがフューチャーライフヴィレッジにも設置され、写真撮影およびミャクミャクへのメッセージボードが利用可能です。
- TOPICS2:Welcome to Japan:漫画家メッセージボード展 — 4月30日~5月2日に開催された「Cool Japan Showcase Anime Manga Tourism Festival」で展示され好評を博した、漫画家による万博来場者へのメッセージ色紙(描き下ろし)が再展示中。『ジョジョの奇妙な冒険』の荒木飛呂彦氏や『キングダム』の原泰久氏らを含む総勢95名の作品が一堂に会する貴重な展示で、フューチャーライフヴィレッジでは9月4日(木)までの公開となっています。

この記事の要点整理
以下の表は、本記事で扱ったムーンショットパークの主要情報を整理したものです。開催期間、主要展示、トピックス、関連リンクなどを一目で確認できます。
項目 | 内容 |
---|---|
発表 | フューチャーライフエクスペリエンス・「TEAM EXPOパビリオン」広報事務局(2025年9月3日 11:30) |
会場 | 大阪・関西万博 フューチャーライフヴィレッジ |
展示期間(週替わり) | ~2025年9月15日(週替わりで展示実施) |
8/20~8/31の主な展示 | ・BCIによるブレインピック体験(脳波でゲーム操作) ・豪雨制御技術(2050年の映像+風洞実験) ・台風制御/台風発電(シミュレーション、ミニチュア展示) |
9/2~9/15の主な展示 | ・「未来の地球は変えられる!」(温暖化・食料問題) ・海洋プラスチック実物展示(深海5,500m採取) ・DACや海洋生分解性プラスチック、N₂Oゲーム、藻類バイオ燃料など |
食料問題の要点 | 2050年に人口約90億人、食料需要は約1.7倍。ムーンショット目標5(牛のメタン8割削減目標)などの研究を展示。 |
トピックス | ・「しゃべりかけるミャクミャク」コーナー新設(メッセージボード・撮影可) ・漫画家メッセージボード展(95名の描き下ろし色紙、再展示は9月4日まで) |
関連リンク | https://www.expo2025.or.jp/future-index/future-life/flv/ |
本記事ではムーンショットパークの来場者向け展示スケジュール、主要プログラム、これまで紹介されてきた展示の概要、フューチャーライフヴィレッジの役割や会場内トピックスを整理しました。各展示は、技術的な説明に加え映像や実験、インタラクティブな体験を通じて、2040年・2050年に向けた社会課題への対応を具体的に示しています。
以上が今回のムーンショットパークに関する報告の要点です。
参考リンク: