11月22日開催|三河湾の残石と吉田城・名古屋城の石垣
ベストカレンダー編集部
2025年9月2日 12:52
三河湾の残石シンポジウム
開催日:11月22日

三河湾沿岸で切り出された「残石」とは何か
豊橋市が2025年9月2日 10時30分に発表したプレスリリースによれば、名古屋城築城の際に西尾市・蒲郡市沿岸部で切り出され、現在も現地に残されている石材は「残石(ざんせき)」と呼ばれています。これらの石材は、名古屋城築城に伴う切り出し作業の結果として生まれ、当時の運搬事情や需要の変動などにより沿岸部のいくつかの地点に多く残存しています。
残石は単なる地形の遺物ではなく、城郭建築の素材として重要な意味を持ちます。豊橋市の吉田城址で現在見られる多くの石垣は、一部を除きこの三河湾産の残石を利用して江戸時代に構築されたとされています。石材の産地、刻印、配置などの痕跡を追うことで、当時の石垣施工の実態や流通経路を復元することが可能です。
- 用語の説明
- 残石(ざんせき):名古屋城築城時に切り出されたが現地に残された石材。主に西尾市・蒲郡市沿岸で確認される。
- 主な産地
- 西尾市、蒲郡市沿岸部、その他三河湾沿岸

最新の分布調査と発掘調査で明らかになった事実
令和6年度から名古屋市・西尾市・豊橋市などによる協働調査が進められており、西尾市前島・沖島ほかで残石の分布調査が実施されています。今回のシンポジウムでは、名古屋市・西尾市・豊橋市に加え、蒲郡市の調査成果も取りまとめて発表する予定です。これにより三河湾域における残石の分布図や、現地での石材の性状、切り出し跡の特徴などがより明確になります。
また、吉田城址における石垣の調査・研究も進展しています。従来は刻印の分析を中心に研究が行われてきましたが、令和4年度から実施中の石垣解体修理に伴う発掘調査で、多数の刻印が石垣の内面から新たに発見されました。これらの発見は、江戸時代初頭の石垣構築の様相を再検討する重要な根拠となります。

調査のポイント
調査では、次の点が注目されています。刻印の種類と分布、石材の物理的特徴(種類・サイズ)、切り出し跡や搬出経路の痕跡です。これらを総合的に解析することで、名古屋城築城時の石材供給と吉田城での再利用の関係性が浮かび上がります。
調査は現地観察、地形測量、標本採取、写真記録、そして発掘に基づく遺構観察が組み合わされており、複数自治体のデータを横断的に比較する点が特徴です。報告では、個別の発見とともに地域間の相互関係も示されます。

第8回とよはしシンポジウムと関連企画の詳細
今回のシンポジウムは「第8回とよはしシンポジウム 三河湾の残石-吉田城と名古屋城の石垣-」として開催されます。開催日時・会場・参加方法などは以下の通りです。参加は無料で申込不要、当日受付となり、定員は600名です。来場には公共交通機関の利用が推奨されています。
シンポジウムの開催概要は下記の通りで、発表では各市の最新調査成果や吉田城の発掘結果に基づく解析が示されます。会場は豊橋市公会堂大ホールで、会場周辺への配慮から公共交通機関の利用案内が添えられています。
- 日時:令和7年(2025)11月22日(土)13時開始(12時開場)
- 会場:豊橋市公会堂 大ホール(住所:八町通二丁目22)
- 参加:無料、定員600名(申込不要、当日受付)
- 来場:公共交通機関の利用を推奨
- 公式案内ページ:豊橋市美術博物館 イベント案内
豊橋市美術博物館の関連展示と講座
シンポジウムに合わせて、豊橋市美術博物館でも関連企画展示および講座が開催されます。展示は石垣の解体修理に伴う調査成果を紹介する内容で、石垣解体によって確認された事項を具体的に示す構成となっています。観覧は無料です。
展示および講座の詳細は以下の通りになっています。展示期間中は月曜休館ですが、例外日として11月3日と11月24日は開館し、その翌日が休館となる点に注意が必要です。美術博物館の案内は公式サイトで確認してください。
- 関連企画展示「石垣を解体(バラ)してわかったこと」
- 会期:令和7年(2025)11月1日(土)〜12月7日(日)
- 休館日:月曜休館(11月3日・24日は開館、翌日休館)
- 観覧:無料
- びはく講座「石垣を解体(バラ)してわかったこと」
- 日程:令和7年(2025)11月15日(土)
- 申込:10月1日(水)より受付開始
- 料金:資料代100円
発表内容の要点と調査が示す学術的意義
今回のシンポジウムで発表される主な内容は、三河湾に残る残石の分布図とその石材的特徴、吉田城における石垣構築の実態に関する発掘報告、そしてこれらをつなぐ歴史的文脈の提示です。刻印の新たな発見は、石材搬出や施工に関わった人々や組織の痕跡を示す可能性があり、地域史・建築史の両面で重要な資料となります。
学術的には、石材の地域間移動、再利用の実態、城郭建築における施工慣行の時期的変化などを検証できる点が評価されます。各自治体の共同研究により、単独の現地調査では得られにくい比較分析が可能となり、三河湾域における石材流通の全体像把握へとつながります。
- 主な学術的示唆
- ・残石の分布と石材の物性から搬出・搬入経路を推定できる。
・刻印の新規発見は施工集団や施工時期の特定に寄与する。
・吉田城石垣の構築手法が江戸時代初頭の城郭技術の一端を示す。
要点整理(本記事の内容のまとめ)
以下に、本記事で扱ったシンポジウムと関連企画の主要事項を表形式で整理します。各項目は本文で述べた調査内容、開催情報、関連展示・講座の情報を網羅しています。表の下には本文のまとめとしての短い説明を付けています。
項目 | 内容 |
---|---|
プレスリリース発表元/日時 | 豊橋市 2025年9月2日 10時30分 |
シンポジウム名 | 第8回とよはしシンポジウム 三河湾の残石-吉田城と名古屋城の石垣- |
開催日時 | 令和7年(2025)11月22日(土)13:00開始(12:00開場) |
会場 | 豊橋市公会堂 大ホール(八町通二丁目22) |
参加方法 | 無料、申込不要、当日受付、定員600名。公共交通機関利用推奨。 |
分布調査 | 令和6年度より名古屋市・西尾市・豊橋市などで実施。西尾市前島・沖島ほかで調査。 |
吉田城発掘調査 | 令和4年度から石垣解体修理に伴う発掘調査を実施。石垣内面から多くの刻印が新たに発見。 |
関連展示 | 豊橋市美術博物館「石垣を解体(バラ)してわかったこと」 2025年11月1日〜12月7日(観覧無料) |
関連講座 | びはく講座「石垣を解体(バラ)してわかったこと」 2025年11月15日(土)。申込は10月1日より、資料代100円。 |
参考リンク | 豊橋市美術博物館 イベント案内 |
本稿では、三河湾沿岸で切り出された残石の定義と由来、令和期に実施された分布調査および吉田城の発掘調査の成果、シンポジウムと豊橋市美術博物館の関連企画の開催情報を整理しました。これらの成果は、城郭建築と地域資源の関係を理解するための基礎資料となる点が共通の趣旨です。