すららネット、カンボジアでICT教材導入へ 5年で2万人目標
ベストカレンダー編集部
2025年8月30日 14:42
カンボジアでSurala導入
開催期間:2月1日〜12月31日

カンボジアの公教育に対するICT導入の新たな一歩
AIを活用したアダプティブな対話式ICT教材を提供する株式会社すららネットは、カンボジア教育・青少年・スポーツ省(MoEYS)と協力覚書(MOU)を締結し、数学教育の質向上と教員育成を目的とした5年間のプロジェクトを正式に始動させました。覚書の締結は2025年8月21日に行われ、発表は2025年8月30日10時に公開されています。
本プロジェクトの正式名称は「EdTechを活用した数学における児童生徒の学業向上と教師の能力向上プロジェクト」で、実施期間は2025年2月から2029年12月までです。5年間で約2万人の児童生徒へデジタル学習を普及させることを目標に掲げ、公教育現場でのICT活用と教員研修を並行して進める計画になっています。

プロジェクトが生まれた経緯
プロジェクトの端緒は、公益財団法人CIESF(シーセフ)がプノンペンに設立した小学校「CIESF Leaders Academy(CLA)」における「すらら」導入にあります。CLAでは2022年から「すらら」を教材として採用しており、2023年にハン・チュオン・ナロン教育大臣(当時)が視察した際、教材を体験したことが連携検討のきっかけとなりました。
この視察と教育省との対話を経て、公立のNew Generation School(NGS)であるSisowath校とYukuntor校で英語版のSurala Mathがトライアル導入され、実証結果を踏まえた上で本格的な協力へと発展しました。

プロジェクトの内容と実施計画
本プロジェクトは主に以下の三本柱で構成されています。クメール語によるデジタル教材の開発、教員育成と授業運営マニュアルの整備、そして公教育現場へのICT環境整備とパイロット授業の実施です。初年度に効果検証を行い、その後カンボジア全土への普及を段階的に進めます。
2024年12月には経済産業省の「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」に採択され、2025年2月から小学生向けクメール語版算数/数学ICT教材「Surala Math」の開発に着手しています。4校の公立小学校での実証を目指し、学力や学習意欲の変化を測定しつつ教員育成に取り組む計画です。
パイロット導入の具体スケジュール
カンボジアの新年度に合わせ、2025年10月から教育省と連携し、4校の公立小学校で3年生を対象としたパイロット授業を開始する予定です。パイロット実施に向け、日本国内で150台のパソコン調達が進行中で、現地でのICT環境整備を段階的に行います。
初年度のパイロットでクメール語版「Surala Math」の有効性が確認でき次第、公立・私立を含む各種教育機関への普及活動を加速し、5年間で約2万人の児童生徒が本教材を利用することを目標としています。
- プロジェクト期間:2025年2月〜2029年12月
- MOU締結日:2025年8月21日
- 発表:2025年8月30日 10:00
- 初年度パイロット開始:2025年10月(予定)
- パイロット対象:公立小学校 4校、3年生
- 調達予定PC台数:150台(日本国内で調達中)
Surala Math の特徴と現地導入の経緯
Surala Mathは、インタラクティブなアニメーションを用い、加減乗除の四則計算を中心に算数/数学を学べる教材群を含む海外向け算数/数学ICT教材です。国内で対話式アダプティブ教材として開発された「すらら」をベースに海外向けにローカライズしたもので、各国のシラバスに合わせたカリキュラム設計が可能です。
生徒は自身のデバイスで自分のペースで学習でき、指導者は学習管理システム(LMS)を通じて進捗や理解度を可視化し、個別に学習内容を調整できます。これにより個別最適化された学習を現地の教育現場で実装することを目指しています。
既存の導入実績と多言語展開
Surala Mathは、英語版を中心にフィリピン、インド、エジプトなどで利用実績があり、インドネシア語版やスリランカ向けのシンハラ語版も存在します。英語版とインドネシア語版では、小学校高学年から一部中学範囲まで開発が進んでいます。
今回のプロジェクトでは新たにカンボジア向けにクメール語版の開発を行い、現地の学習者に適した教材とするためのローカライズ作業と現場での調整を行います。これまでの導入校で得られた知見を活用して、クメール語版の有効性を検証する計画です。
- 対象教材
- Surala Math(クメール語版を新規開発)
- 主な機能
- インタラクティブアニメーション、個別最適化、学習管理システムによる進捗管理
- 既存言語展開
- 英語、インドネシア語、シンハラ語など
協定の範囲と期待される効果
本協力覚書により、すららネットはクメール語版教材の開発だけでなく、教育資源の拡充、教員研修、授業運営マニュアルの整備、そして現地でのICT環境整備に至るまで、総合的な支援を行うことになります。教育省側はこの取り組みを通じて、数学教育の国際水準への引き上げを目指します。
すららネット代表取締役の湯野川孝彦氏は、プロジェクトについて「個別最適化されたEdTech教材『Surala Math』を通じて、数学の学力到達度や教員の指導力不足という課題に取り組めることを光栄に思う」と述べています。ICT活用により児童生徒一人ひとりに応じた学びの提供と、教員の授業設計力向上を両立させることが可能になるとの見解を示しています。
関係機関と支援体制
本プロジェクトには以下の組織が関与しています。すららネット(教材開発・運用)、カンボジア教育省(政策支援・現場連携)、公益財団法人CIESF(CLA運営・現地連携)、および経済産業省の補助金事業による支援が含まれます。これらの連携により、公教育における持続可能なICT教育モデルの構築を目指します。
教育現場では教員向け研修を実施し、授業設計からICTを活用した授業運営、評価指標の設定までを含む研修を行うことで、単なるツール提供に終わらない仕組みづくりが計画されています。
導入体制・現地準備
初年度のパイロットでは、4校の公立小学校での導入に必要なハードウェアおよび教員研修を整備します。日本国内で調達中の150台のパソコンは、現地での授業運営に用いられる予定です。 教材は段階的にリリースされ、一部は間もなく提供開始予定で、2025年10月の学期開始に合わせた準備が進められています。
パイロットの効果測定では生徒の学力データや学習意欲の変化を数値化して評価し、得られたデータを基に全国展開の戦略を策定します。
項目 | 内容 |
---|---|
発表日 | 2025年8月30日 10:00 |
MOU締結日 | 2025年8月21日 |
プロジェクト期間 | 2025年2月〜2029年12月 |
プロジェクト名 | EdTechを活用した数学における児童生徒の学業向上と教師の能力向上プロジェクト |
目標利用者数 | 約2万人の児童生徒(5年間での累計利用を目指す) |
初年度パイロット | 公立小学校4校、対象学年:3年生、開始時期:2025年10月(予定) |
調達資機材 | パソコン150台(日本国内で調達中) |
教材 | Surala Math(クメール語版を新規開発) |
主な関係機関 | カンボジア教育省(MoEYS)、株式会社すららネット、CIESF、経済産業省の補助事業 |
代表者コメント | 湯野川孝彦(株式会社すららネット 代表取締役):個別最適化されたEdTech教材を通じて教育課題に取り組む意義を強調 |
参考リンク | https://surala-net.com/ |
以上が今回の協力覚書に基づくプロジェクトの概要と実施計画の整理です。クメール語版「Surala Math」の開発と公立小学校での実証、教員研修、ICT機器の整備を通じて、算数・数学教育の改善と教員の指導力向上を図ることが本プロジェクトの中心に据えられています。初年度のパイロットで得られる成果とデータが、カンボジア全土での展開に向けた重要な基盤となる見込みです。
参考リンク: