怪談×漫画×考察で恐怖再構築『無縁怪奇録』発売
ベストカレンダー編集部
2025年8月29日 14:18
無縁怪奇録発売
開催日:8月29日

怪談を聴き、描き、解く――三者が織りなす新しい恐怖の形
2025年8月29日、株式会社竹書房は新刊『無縁怪奇録 いんがほどき』を発売した。本書は〈怪談〉を素材に、聞き手(蒐集家)・執筆者(怪談作家)・漫画家という三者の観点から再構成した点が特徴である。出版発表は同日12時00分に行われ、発表元は株式会社竹書房(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:宮田 純孝)である。
プレスリリースは本書を「怪談×漫画×考察が合わさった革新的な書籍」と位置づける。怪談そのものが伝聞によって生まれ変わる性質に着目し、取材記録を基にした聞き書き形式の怪談を三人の作家がそれぞれの解釈で紡ぐ一方、綿貫芳子が漫画化することで視覚的な恐怖体験も付与している。
- 出版日:2025年8月29日(金)
- 出版社:株式会社竹書房
- 著者:斉砂波人、吉田悠軌、高田公太(編著・怪談提供:斉砂波人)
- 漫画:綿貫芳子
- 定価:1,650円(本体1,500円+税)
- 判型:四六判

収録構成と主要コンテンツ:三十篇の恐怖と冒頭企画
本書には斉砂波人が取材した怪異を中心に、斉砂本人と吉田悠軌と高田公太がそれぞれの解釈で紡いだ恐怖譚が三十篇収められている。冒頭には「因果」を題材にした企画が用意され、三者それぞれの視点で怪の真相を考察する構成が取られている。
また、『となりの百怪見聞録』を手掛ける綿貫芳子が「因果」を漫画化しており、聞き書きで伝わる言説のゆらぎや語り手の癖、地方に根ざした郷土性などを視覚的に提示する。文章のみならず絵で伝えることで、原話の細部に宿る違和感をより鮮明に示している。

「因果」取材記録(漁師町Aさん)—本文記録
以下は本書冒頭に収録された〈因果〉の取材記録であり、原文のまま掲載する。
日本海沿いの漁師町。
幼い娘が「にょにょさまにもらった」と十円玉を二枚、握りしめて帰ってくる。
「にょにょさまって?」
「にょにょさまは◎△$♪×¥●&%#?!だよ」
娘は笑顔で答えるのだが、なぜか母の耳には肝心の部分が聞き取れない。
娘の声がそこだけ、まるでテープを逆回転しているような音になって聞こえる。
何か変だ。
Aさんは気になりつつも娘の手から十円玉を預かり、ぶたの貯金箱にひとまず入れておいた。
そんなことが一度きりでなく、それから何度も何度も続いた。
それこそ、ぶたの貯金箱がずっしりとしてくるほどに。
ある日、魚市場で娘が歓声をあげた。
「にょにょさまの赤ちゃん!」
小さな指が差す先にあったもの。
それは「ホヤ」であった……。
この記録は聞き手の斉砂波人が漁師町のAさんから直接聞き取った内容を基にしている。原話には言い換えが困難な特徴的な断片が含まれており、〈にょにょさま〉という固有名詞に続く不可解な表現や、娘の声の描写がそのまま伝わっている点が特徴的である。

収録作品の特色と読書体験の設計
本書に収められた三十篇は、単なる怪談の羅列ではない。取材者としての斉砂波人が集めた〈現場の断片〉を基礎に、各作者が個別に物語へと変換した一篇一篇が並ぶ。文章の語り口、考察の角度、漫画の表現がそれぞれ異なるため、同一の素材が多様に変容する過程を追体験できる。
この構成は読み手にとっても実験的である。ある話を読み終えれば別の解釈が提示され、視覚的漫画表現がさらに別の感覚を補完する。聞き書き怪談という古くからのフォーマットを現代的な編集で再提示する試みとして、書物そのものが「怪談が生まれる瞬間」の記録になっている。

編著者からの言葉と著者プロフィール
編著・怪談提供を務める斉砂波人は本書の意図を次のように述べている。以下は斉砂自身による読者への言葉を原文のまま掲載する。
本書は僕が聞き集めた怪談を僕、吉田悠軌氏、高田公太氏、そして漫画として綿貫芳子氏の四人で形作ったものです。
僕が体験者・関係者から聞いた話を彼らに話し、三人はそれぞれの視点でそれを漫画や怪談の形に紡いでくれました。
本書の意義とは、怪談とは伝聞で伝わるものであることに由来しています。
人から聞いた怪しい話をまた次の人へと語る、書く、描く。
その途中で口を動かす者、手を動かす者がそれぞれの琴線に触れた部分を強調し、そうでない部分が削られ、新たな形を成していく。
その瞬間こそが〝怪談が生まれる瞬間〟なのです。
皆様も本書を読んで、是非語りたくなった怪談を探し、そっと誰かに話してみましょう。
きっと、そこには怪談の大いなる愉しみが待っています。
上の文からも分かるように、編著者は聞き手としての役割と編集的な視点を強く自認している。語り手の記憶や地域性、言語表現の欠落(聞き取れない部分)を敢えて残しながら、新たな物語形態を提示することを目的としている。

著者プロフィール(主要執筆者・漫画家)
以下は本書の主要な執筆者・漫画家の略歴と活動概要である。各氏の過去作や活動領域は本書の文脈を理解するうえで参照に値する。
- 斉砂波人
- 怪談収集家、ホラー・怪談作家。学校の怪談ブームで怪談、ホラーに目覚める。インターネットを駆使して怪談を取材し、コレクションするのが趣味。2025年『堕ちた儀式の記録』にて単著デビュー。共著に『荒魂怪談』。▼作者X:https://x.com/imizuna_namito
- 綿貫芳子(漫画)
- 漫画家。となりのヤングジャンプにて怪奇漫画『となりの百怪見聞録』を連載中。その他の作品に、青春群像劇『真夏のデルタ』、季節と汁物の漫画『オリオリスープ』など。竹書房怪談文庫「煙鳥怪奇録」シリーズの装画も担当。▼作者X:https://x.com/atomicsource
- 吉田悠軌
- 文筆業を中心にTV映画出演、イベント、ポッドキャストなどで活動。著書に「恐怖実話」シリーズ、『よみがえる「学校の怪談」』『教養としての名作怪談 日本書紀から小泉八雲まで』『日めくり怪談』『怪事件奇聞録』など。共著多数。▼作者X:https://x.com/yoshidakaityou
- 高田公太
- 青森県弘前市出身、在住。元・陸奥新報の記者。県内の怪異スポットを幅広く取材し、郷土怪談を数多く執筆。代表作に『絶怪』『恐怖箱 青森乃怪』『恐怖箱 怪談恐山』など。共著に『呪念魂』『青森の怖い話』等。▼作者X:https://x.com/kotatakada

書誌情報と関連リンク、最後に要点を表で整理
書誌情報は以下の通りである。販売情報や詳細ページも公開されているため、書誌と収録内容の概要を確認できる。
『無縁怪奇録 いんがほどき』は2025年8月29日に発売、定価は1,650円(本体1,500円+税)、判型は四六判である。より詳しい販売情報や試し読みへのリンクは出版社の詳細ページを参照されたい。
項目 | 内容 |
---|---|
書名 | 無縁怪奇録 いんがほどき |
発売日 | 2025年8月29日(金) |
発表日時(プレスリリース) | 2025年8月29日 12時00分 |
出版社 | 株式会社竹書房(所在地:東京都千代田区、代表取締役社長:宮田 純孝) |
編著・怪談提供 | 斉砂波人 |
執筆 | 斉砂波人、吉田悠軌、高田公太(各自の視点による解釈を収録) |
漫画 | 綿貫芳子(『となりの百怪見聞録』連載作家) |
収録数 | 三十篇(冒頭に「因果」の取材記録と三者による考察企画を収録) |
定価 | 1,650円(本体1,500円+税) |
判型 | 四六判 |
詳細ページ | https://www.takeshobo.co.jp/book/b10135934.html |
本稿では発表内容を網羅的に整理した。取材記録の実例として「因果(漁師町Aさん)」の全文を紹介し、編著者の意図や各執筆者・漫画家の役割、収録構成、出版情報を含めて解説した。聞き書き怪談の特性である伝聞過程での変容を、文章と漫画の両面から享受できる一冊として位置づけられる。
記事全体を通して、プレスリリースに含まれる情報を省略せずに掲載した。読者は上の表と本文から本書の基本情報、収録内容、制作陣の背景を確認できる。
参考リンク: