9月1日から本格化 食品1422品目の値上げと背景
ベストカレンダー編集部
2025年8月29日 13:41
9月の食品値上げ
開催日:9月1日

調査の概要と2025年9月の主要ポイント
株式会社帝国データバンクが発表した「食品主要195社」価格改定動向調査(発表日:2025年8月29日 09時00分)によると、2025年9月以降の食品の値上げ動向が明らかになりました。本調査は主要な食品メーカー195社を対象に、家庭用を中心とした値上げの公表分を集計したものです。
要旨として、2025年9月の飲食料品値上げは合計1422品目にのぼり、値上げ1回あたりの平均値上げ率は14%でした。これにより、9月は前年同月(1414品目)から+8品目(+0.6%)の増加となり、9カ月連続で前年を上回る推移が続いています。
- 調査対象
- 食品主要195社(家庭用中心)
- 発表日
- 2025年8月29日 09:00
- 集計方法(注)
- 品目数および値上げは各社発表に基づく。年内に複数回値上げを行った品目は、それぞれ別品目としてカウント。値上げ率は発表時点における最大値を採用。価格据え置きや内容量減による「実質値上げ」も対象に含む。

9月の分野別内訳と単月動向
2025年9月の値上げ品目1422件を分野別に見ると、「調味料」が最多で427品目でした。次いで「加工食品」338品目、「菓子」291品目、「乳製品」138品目、「原材料」205品目という内訳になっています。単月で1千品目を超えるのは4カ月連続で、値上げの広がりが継続している状況です。
単月の平均値上げ率は14%で、前年同月と比べてほぼ横ばいの水準です。統計開始以来の連続増加期間は、前月に続き2022年以降で最長を更新しました。以下に9月の分野別内訳を整理します。
- 調味料: 427品目(たれ、ソース、マヨネーズ、ドレッシング類が中心)
- 加工食品: 338品目(冷凍食品、水産練り製品等が多数)
- 菓子: 291品目(チョコレート、ポテトチップス等)
- 乳製品: 138品目(冷菓製品の一斉値上げを含む)
- 原材料: 205品目(キャノーラ油製品の一斉値上げで、同分野としては11カ月ぶりに単月100品目超)

品目規模と継続性の示すもの
9月の数値は、単月の品目数および連続して前年を上回る動きが示す通り、値上げが一過性ではなく持続的に広がっていることを示しています。特に調味料や原材料の一斉値上げは、消費者が日常的に接する商品群での価格上昇を意味します。
また、値上げ1回あたりの平均値上げ率が14%という水準は、消費者の購買行動や小売価格の見直し、マーチャンダイジングに影響を与える可能性が高く、店舗や流通業者側の対応も求められるフェーズに入っています。
通年(2025年)の累計と分野別動向
2025年の値上げは、11月までの公表分で累計2万34品目(20,034品目)に達しました。前年(12,520品目)に対して60.0%増、2023年の32,396品目以来、2年ぶりに2万品目を超える水準です。年間の1回当たりの平均値上げ率は15%で、前年の17%をやや下回る水準となっています。
通年の分野別構成を見ると、調味料が突出しており6,148品目と最も多く、前年(1,715品目)から+4,433品目・+258.5%の大幅増となりました。酒類・飲料は4,801品目で、清涼飲料水のほかビール・清酒・焼酎・ワインなど幅広いカテゴリーで値上げが見られ、前年比で8割超の増加となっています。加工食品は4,532品目で、冷凍食品、パックごはん、海苔などの値上げが目立ちます。
項目 | 2025年(11月まで) | 前年比・備考 |
---|---|---|
累計品目数 | 20,034品目 | 前年 12,520品目 → +60.0% |
平均値上げ率 | 15%(1回当たり) | 前年 17% |
調味料 | 6,148品目 | 前年 1,715品目 → +4,433品目・+258.5% |
酒類・飲料 | 4,801品目 | 清涼飲料水やビール等で大幅増(前年比8割超) |
加工食品 | 4,532品目 | 冷凍食品、パックごはん、海苔等で値上げ |
累積が示す業界の変化
通年の累計が2022年に続く大きな規模となっていることは、業界全体でのコスト構造変化が継続的に価格に転嫁されていることを示しています。調味料の増加は特に顕著で、日常消費に直結する商品群での値上げ波及が広がっています。
平均値上げ率が前年よりやや抑制されている一方で、品目数が大幅に増加している点は、企業が幅広い品目で小刻みにでも値上げを実施している実態を反映しています。
値上げの主な要因と構造的変化
帝国データバンクの集計では、値上げ要因として原材料高が全体の97.3%を占めるなど、モノ由来のコスト上昇が最大の要因でした。これに加えて、エネルギー(光熱費)、包装・資材、物流費、人件費といった項目が多くの品目で値上げ要因として挙げられています。
各要因の構成比は次の通りです。エネルギー(光熱費)65.5%、包装・資材60.0%、物流費80.3%、人件費54.2%、円安を要因とするものは12.0%で、前年から大きく低下しています。これは、外的ショック(輸入価格・為替)起因の値上げよりも、国内のコスト増が主因となる傾向が強まっていることを示します。
- 原材料高: 97.3%(圧倒的な主要因)
- 物流費: 80.3%(ドライバー不足や運賃引き上げの影響)
- エネルギー(光熱費): 65.5%(生産コストの上昇)
- 包装・資材: 60.0%(資材コストの上昇)
- 人件費: 54.2%(最低賃金の上昇や労務費増)
- 円安: 12.0%(前年から低下)
労務費・物流費の影響と最低賃金
国内の最低賃金は2025年度に全国加重平均で1118円となり、前年度比で6.0%の引き上げが見込まれています。これにより全都道府県で最低賃金が千円台に達する見通しで、賃金上昇が企業の恒常的コスト増要因として確実に影響を与えています。
物流面では、ドライバー不足や「2024年問題」を背景とした運賃引き上げが続いており、物流費の上昇は業界全体でのコストプッシュ要因となっています。これらが複合的に作用し、外的ショックに依存しない内的要因によるインフレ傾向への移行が進んでいる点が注目されます。
秋に向けた見通しと企業の対応方向
先行きでは、2025年10月の食品値上げ予定品目数が、今年4月以来となる3千品目超となる見通しです。秋にかけて大規模な値上げラッシュが予想され、通年で見た場合、飲食料品の値上げ品目数は2022年の水準(25,768品目)に並ぶ可能性が示唆されています。
調査では、原材料高と並び物流費や賃上げによる労務費の上昇が粘着性を持つため、企業側は一時的な対応ではなく継続的な価格改定戦略に移行する動きが見られるとしています。つまり、過去のような一時的なコストプッシュ対策から、恒常的なコスト構造の変化を前提にした価格改定が行われる局面に入っています。
企業対応の想定される方向性
企業は以下のような対応を取ると考えられます。コスト吸収だけでなく、商品の見直し(仕様・内容量の変更等)やサプライチェーンの再構築、調達先の多様化、そして段階的な価格改定を通じた収益構造の維持が想定されます。
消費者側では、頻繁な価格情報の更新や代替商品の検討が進むことが予想され、流通・小売側も価格表示やプロモーションの最適化を迫られる状況です。これらは短期的な対応にとどまらず、長期にわたる影響を業界全体に及ぼす可能性があります。
本記事の要点整理
以下の表に本調査で示された主要データと注記を整理しました。数値と比率は、帝国データバンクが公表した2025年8月29日付の調査報告に基づきます。
項目 | 数値・内容 |
---|---|
発表元・日時 | 株式会社帝国データバンク、2025年8月29日 09:00 |
調査対象 | 食品主要195社(家庭用を中心) |
2025年9月の値上げ品目数 | 1,422品目(前年9月 1,414品目、+8品目・+0.6%) |
9月の平均値上げ率 | 14% |
2025年通年(11月まで)の累計 | 20,034品目(前年 12,520品目 → +60.0%) |
通年の平均値上げ率 | 15%(前年 17%) |
分野別(9月) | 調味料 427 / 加工食品 338 / 菓子 291 / 乳製品 138 / 原材料 205 |
分野別(通年) | 調味料 6,148 / 酒類・飲料 4,801 / 加工食品 4,532 |
主な値上げ要因(構成比) | 原材料高 97.3% / 物流費 80.3% / エネルギー 65.5% / 包装資材 60.0% / 人件費 54.2% / 円安 12.0% |
最低賃金の動向 | 2025年度全国加重平均 1,118円、前年度比 +6.0% |
今後の見通し | 10月は3千品目超の見込み。2022年の値上げラッシュ水準(25,768品目)に並ぶ可能性あり。 |
注記 | 年内に複数回値上げを行った品目は別品目としてカウント。値上げ率は発表時点の最大値を採用。実質値上げも含む。 |
以上が帝国データバンクの調査に基づく、2025年9月時点の飲食料品の値上げ動向と通年の累計・要因整理です。示された数字は各社の公表に基づく集計結果であり、今後の経済動向や企業の発表により変動する可能性があります。