9月1日(防災の日)に備える通信BCPの要点

通信BCP強化提案

開催日:9月1日

通信BCP強化提案
うちの会社でも通信BCPって必要なの?
必要です。通信は業務継続に直結し、中小企業のBCP策定率は低め。専有回線や据置ルーター、バックアップやゼロトラスト等を段階的に整備してリスクを下げるべきです。
Rakuten TurboとKŌSOKU Accessってどう使い分ければいいの?
Rakuten Turboは工事不要でコンセントに挿すだけの即時導入向け。KŌSOKU Accessは専有光回線とSRv6で平時から災害時まで高信頼な常設ネットワークが必要な拠点向けです。

防災の日に改めて考える「通信のBCP」——災害と通信障害の実態

2025年8月28日、楽天グループ株式会社は楽天モバイルの法人向けサービスを通じて、災害時やサイバー攻撃といった非常時に対応するBCP(事業継続計画)策定の重要性と、その中での通信環境の位置づけについて発表しました。本稿では発表内容を整理し、通信を軸にしたBCPの具体的手法と事例を詳述します。

まず、通信障害が災害時に与える影響の大きさを確認します。2011年の東日本大震災時には、固定通信網で約190万回線が被災し、移動系通信網では約2万9千局が停波したという報告があります。これらの被害は、電気や水道などのライフライン同様に、企業や行政機関の業務に深刻な影響を及ぼしました(注1)。

  • 被災時の通信インフラ被害の規模: 固定回線 約190万回線、移動系 2万9千局(東日本大震災時の報告)
  • BCP策定の状況: 東京商工会議所の調査では、BCP策定率は35.2%、中小企業は28.2%と3割を下回る
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通信を起点にしたBCPの考え方と楽天モバイルのソリューション

BCPの要点は、事業資産の損害を最小限に抑え、業務を継続する点にあります。通信は多くの業務の基盤であるため、通信環境のBCPは大きな意味を持ちます。楽天モバイルは、災害リスクとITリスクの両面を考慮した通信ソリューションを法人向けに提供しています。

ここでは代表的な製品・サービスの特徴と導入事例を挙げ、機能面と運用面でどのようにBCPに寄与するかを整理します。

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KŌSOKU Access:専有型回線とSRv6による高信頼ネットワーク

KŌSOKU Accessは楽天モバイルの法人向け超高速インターネット接続サービスで、専有型回線を提供する点が大きな特徴です。光ファイバーを拠点へ直接引き込み、共用回線に比べて混雑による影響を回避できるため、災害時の通信断を抑える効果が期待されます(注3)。

さらに、SRv6技術を活用したネットワーク設計により、ルート切替を自動化できるため、回線障害発生時でも継続した通信が可能になります。これにより業務継続のハードルが下がり、災害時の事業停止リスク低減に資する設計となっています。

主な機能
専有型回線の提供、SRv6による自動ルーティング、安定した通信基盤
期待効果
混雑回避による通信途絶抑制、障害発生時の迅速な切替で業務継続性向上
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Rakuten Turbo:据置型ホームルーターによる迅速な通信確保

Rakuten Turboは工事不要でコンセントに挿すだけで利用可能な5G対応の据置型ホームルーターです。オフィスや公共施設、店舗、工場などで平時の通信環境として運用でき、有事の際には避難所等へ移設して災害時の通信インフラとして活用することが想定されています。

東京都世田谷区の導入事例では、納品スピード、設置の容易さ、コスト面、災害時の活用面を評価して採用しています。区としては平常時に職員の通信環境を整備し、有事には避難所で職員の災害対応に活用する計画です(注4)。

  • 平常時: 公共施設内の職員通信環境の確保
  • 有事: 避難所等への移設による災害対応支援
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DXソリューションとしてのデジタルサイネージ活用例

宿泊業における事例では、デジタルサイネージを設置して平常時は館内案内や混雑状況を表示し、災害時には避難誘導や安否確認などの情報を即時表示する用途でBCPに組み込まれています。リアルタイムの情報発信により利用者の安全確保と顧客満足度向上を両立します。

楽天モバイルは通信サービスに加え、デジタルサイネージやAIサービスなどのDXソリューションで業種別に最適化した支援を提供しており、BCP策定に関連する施策についても相談窓口を設けています。

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サイバー攻撃に備えるIT-BCPとゼロトラストの重要性

事業継続の脅威は自然災害だけでなく、ランサムウェアなどのサイバー攻撃にも及びます。東京商工会議所の調査では約7割の企業がサイバー攻撃の被害を受けたことがないと回答している一方で、被害経験のある企業は大企業で約2割、中小企業で約1割にのぼると報告されています(注2)。この数値は、攻撃の脅威が全規模の企業に及ぶことを示しています。

IT-BCPの基本的な対策は下記の通りです。これらは単独で完結するものではなく、ネットワーク設計や運用ポリシーと組み合わせることで初めて有効になります。

  1. データのバックアップと復旧: 定期的なバックアップとオフサイト保管。
  2. システム停止の防止: サーバー・ネットワーク機器・回線の多重化。
  3. セキュリティ対策: ウイルス対策や脆弱性診断の実施。
  4. インシデント対応準備: 初動対応、封じ込め、根絶、復旧、事後分析の手順整備。

しかし近年は内部侵入やサプライチェーンを狙う攻撃が増え、従来の境界防御だけでは不十分になってきています。こうした課題に対して推奨されるのが「ゼロトラストセキュリティ」です。ゼロトラストでは社内外問わず『何も信頼しない』前提に立ち、アクセス認証の徹底や継続的なログ監視を行い、情報漏洩リスクを抑制します。

楽天モバイルのゼロトラストセキュリティは、ワンストップで安全なネットアクセスを実現し、セキュリティポリシーを一元管理することで導入・運用コストの削減を図りながら企業のセキュリティレベルを向上させることを目指しています。

ゼロトラスト導入の留意点

ゼロトラストを導入する際は、認証基盤の整備、アクセス権限の見える化、ログ管理体制の確立、運用フローの整備が必要です。これらは組織ごとの業務特性に合わせて段階的に導入するのが現実的です。

また、ゼロトラストは技術要素だけでなく、運用と教育の組み合わせが重要です。従業員のアクセス行動に対するモニタリングと迅速な対応により、被害の拡大を未然に防ぐことが可能になります。

要点整理と参考情報

この記事で取り上げた内容を整理します。以下の表は発表の主要ポイント、提供されるサービス、実施例、推奨される対策を一覧にしたものです。

項目 内容
発表日 2025年8月28日 12時30分
発表元 楽天モバイル株式会社(楽天グループ株式会社)
背景 災害時の通信障害の発生、BCP未策定企業の多さ、サイバー攻撃の脅威
主な課題指摘 2011年東日本大震災の通信被害(固定約190万回線、移動系約2万9千局)、中小企業のBCP策定率28.2%など
提供ソリューション KŌSOKU Access(専有型回線、SRv6)、Rakuten Turbo(据置型5Gルーター)、デジタルサイネージ、ゼロトラストセキュリティ
導入事例 世田谷区へのRakuten Turbo導入、宿泊業におけるデジタルサイネージ活用、企業での専有回線導入による事業継続支援
IT-BCPの基本対策 データバックアップ、システム冗長化、セキュリティ対策、インシデント対応手順の整備
推奨するセキュリティ方針 ゼロトラストの採用により認証徹底と継続的監視を実施
参考リンク 楽天モバイル法人サイト、KŌSOKU Access、Rakuten Turbo、ゼロトラストページ(各サービスの公式ページを参照)
注記 (注1)情報通信白書ほか、(注2)東京商工会議所調査、(注3)(注4)サービス注意事項あり

通信は災害時も平常時も業務継続性に直結する重要なインフラです。今回の発表は、専有回線や自動ルーティング、据置型ルーター、そしてゼロトラストなど、通信とITの両面からBCPを構築する際に検討すべき具体的技術と運用の指針を示しています。各組織は自社の業務特性やリスクプロファイルに応じて、これらの要素を組み合わせてBCPを策定・強化することが求められます。

参考資料および出典:
情報通信白書(2017)、東京商工会議所『会員企業の災害・リスク対策に関するアンケート』2024年調査、楽天モバイル法人向けサービス資料(2025年8月28日発表)。