9月開始、DEA×JAICの障がい者バーチャル就労PoC
ベストカレンダー編集部
2025年8月26日 16:07
障がい者バーチャル就労PoC
開催日:9月1日
PoC開始:DEAとJAICが共同で始める「障がい者バーチャル就労」実証実験
シンガポール拠点のDigital Entertainment Asset Pte. Ltd.(以下、DEA)と日本アジア投資株式会社(以下、JAIC)は、2025年9月から企業・団体向けに「障がい者バーチャル就労」の実証実験(PoC)を開始すると発表しました。プレスリリースは2025年8月26日15時30分に公開されており、本取り組みはバーチャル空間とゲーミフィケーションを用いて、従来の障がい者雇用が抱える課題を包括的に解決することを目的としています。
発表にはDEAのFounder & CEO 吉田直人氏、Founder & Co-CEO 山田耕三氏、そしてJAICの代表取締役 社長執行役員CEO兼CIO 丸山俊氏らが関わり、JAICが投資・連携する障がい者グループホーム在住者を対象に、1名から採用可能な仕組みでPoCを展開します。実証実験の開始時期は2025年9月、最終的な提供拡大後の目標として2027年7月までに1000名の雇用を掲げています。
企業が直面する五つの「壁」と本サービスによる具体的な解決
厚生労働省のデータによれば、令和6年の法定雇用率を満たしていない企業は63,364社にのぼり、そのうち不足数が0.5人または1人である企業(1人不足企業)が64.1%を占めています(出典:厚生労働省「令和6年障害者雇用状況の集計結果」https://www.mhlw.go.jp/content/11704000/001357856.pdf)。この背景には、採用から就労、マネジメント、定着、将来性に至るまでの複数段階での障壁が存在します。
DEAとJAICが提示する「障がい者バーチャル就労」は、これら5つの壁を体系的に解消することを目指すサービスです。以下に各課題と本サービスの対応を具体的に示します。
「採用」の壁:面接・採用知見の不足
採用段階では、障がい者雇用に関する専門的な知識や面接ノウハウがないことが障壁となり、採用そのものが進まないケースが多くあります。企業側がどのような支援や配慮を行えば良いか分からないことが一因です。
本サービスでは、JAICが投資・連携する障がい者グループホーム在住者を採用対象とする仕組みを整え、1名からの採用が可能です。これにより採用プロセスの導線が明確になり、企業は法定雇用率の達成に向けた第一歩を踏み出しやすくなります。
「就労」の壁:業務の細分化と適合性の不足
既存業務から障がい者が対応可能な業務を明確に切り出すことが難しく、適した仕事内容を提供できない点が就労を阻む原因となります。特にコミュニケーションや通勤に制約がある方に対しては働き方自体の検討が必要です。
DEAが提供するゲームベースのタスク群(例:JobFarmer、ECO CATCHER BATTLE)は、スマートフォンで容易に操作できるため、居室からでもすぐに業務(ゲーム内タスク)を遂行できます。タスクは細分化され定量化できるため、業務の適合性と遂行の可視化が可能です。
「マネジメント」の壁:現場マネージャー不在と専門対応
障がい特性への配慮、業務指示や進捗管理、緊急時対応などを担う現場のマネージャーがいないことが障がい者雇用を難しくしています。結果として企業はマネジメント負荷を理由に採用を控えることがあります。
本サービスではDEAがゲームログや成果データを用いて業務状況の把握とマネジメント支援を行い、グループホーム側も在宅時の声かけや問い合わせ対応、体調ケアをサポートします。雇用企業はこれらの連携を通じて安心して業務を外部に委ねられる体制が整います。
「定着」の壁:環境変化への弱さと長期就労の困難
環境の変化に弱い特性を持つ方は、新しい職場環境や対人関係の変化に適応できず、突然出社できなくなるケースがあります。職場への通勤や対面での関係構築が障害となることも多いです。
バーチャル就労は住み慣れたグループホームの自室から勤務できる設計で、通勤ストレスや対面での緊張を軽減します。さらに、専門スタッフによる体調・メンタルケアを伴走的に行うことで、心身の安定を図り長期的な定着につなげます。
「将来性」の壁:キャリア形成とスキル向上の難しさ
短期業務ではスキルアップやキャリア形成が見込みにくく、長期的な職業人生の視点で将来性が確保されないという問題があります。その結果、雇用が一過性のものになりやすい点も課題です。
本サービスは、IT操作や業務習慣の定着、ゲームでの成功体験を通じた自己効力感の向上、そして研修カリキュラムによるコミュニケーション力の育成を備えています。業務の進捗やログを活用した客観的データは、個々の特性を把握し次のキャリア形成に資する材料となります。
サービスの仕組み:ゲーム・ブロックチェーン・運用支援の連携
「障がい者バーチャル就労」は、ブロックチェーンゲームを中心としたデジタル就労支援ツールと、体調・業務管理機能を一体化させたサービスです。DEAはPlay to Earnや課題解決ゲームの開発運営の実績を持ち、ゲームデータを用いた就労評価や管理が可能です。
サービスはスマートフォンでのプレイを基本としており、ゲーム内活動が業務成果として計測・蓄積されます。DEAによる業務管理サポート、グループホームによる現場支援、雇用企業の業務委託という三者体制で安定運用を図ります。
主要コンテンツの紹介
JobFarmer(ジョブファーマー):農園とコインプッシャー、ビンゴをテーマにしたカジュアルラインゲームです。操作が直感的で習熟しやすく、小さな成功体験を積める構造です。
ECO CATCHER BATTLE(エコキャッチャーバトル):ゴミ拾いでキャラクターを強化し、産廃処理を解決するリアル連動型のバトルゲームです。社会課題解決をゲーム内活動と連動させることで、意欲や継続性を高めます。
| コンテンツ名 | テーマ | 特徴 |
|---|---|---|
| JobFarmer | 農園/コインプッシャー/ビンゴ | 直感的操作、短期での成功体験、業務の細分化が可能 |
| ECO CATCHER BATTLE | ゴミ拾い連動のバトル | 現実活動と連動した社会課題解決型、継続動機付けに強い |
- ブロックチェーン要素:DEAはPlayMiningプラットフォームやDEAPcoin(DEP)など、暗号資産とNFTを含むエコシステム運営の経験を有します。これにより成果の記録・報酬設計・透明性の高いトラッキングが可能になります。
- 運用支援:ゲームログの解析による業務管理、グループホームによる体調・メンタルサポート、企業側の業務ニーズの橋渡しを行います。
実証実験の体制、目標、各社コメントおよび問い合わせ
本PoCはJAICが連携・投資する障がい者グループホーム在住者を対象に開始され、グループホーム側の支援体制とDEAのデジタルツールを組み合わせて実施されます。PoC段階での目的は運用上の有効性検証、定着支援方法の確立、そして企業側の受け入れ負荷の最小化です。
提供開始後の拡大目標として、2027年7月までに1000名の雇用を目指すと明記されています。JAICはこれまでに障がい者グループホームの建設・運営へ投資を行っており(2025年6月末時点で累計35棟)、本取り組みをサービス領域拡大の第1弾と位置づけています。
各社のコメント
DEA Founder & CEO 吉田直人氏は、家族に30年近い引きこもり状態の弟がいることを背景に本サービスを構想したと述べています。家族の視点から障がい者が将来的に自立できる可能性に希望を見出したことが開発の原動力の一つであると説明しています。
JAIC 代表取締役 丸山俊氏は、同社の経営理念とヘルスケア分野での投資実績を踏まえ、本サービスが入居者に居住だけでなく就労機会を提供する点を評価しています。子会社を通じたヘルスケア分野での投資強化とも整合する取り組みであると位置づけています。
問い合わせ先と会社情報
本サービスに関する問い合わせは以下の連絡先にて受け付けています。問い合わせ先は実証実験の運用や参加についての窓口となります。
- 障がい者バーチャル就労に関する問い合わせ
- E-mail:virtualwork@dea.sg
- DEA 公式サイト
- https://dea.sg/
- JAIC 公式サイト
- https://www.jaic-vc.co.jp/
DEAの会社概要としては、設立が2018年8月、本社所在地が20 ANSON ROAD #11-01 TWENTY ANSON SINGAPORE 079912、代表は吉田直人・山田耕三の共同CEO体制で、PlayMiningプラットフォームやDEAPcoin(DEP)などの事業を展開しています。JAICは1981年設立、資本金100百万円(2025年3月31日時点)、東証スタンダード証券コード8518です。
要点の整理
以下の表に本記事で触れた主要な情報を整理します。PoCの開始時期、目標、使用される主なゲーム、対応する課題などを一覧化しました。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 発表日 | 2025年8月26日 15:30 |
| 実証実験開始 | 2025年9月 |
| 目標 | サービス正式提供後、2027年7月までに1000名の雇用 |
| 参加主体 | Digital Entertainment Asset Pte. Ltd.(DEA)・日本アジア投資株式会社(JAIC)およびJAIC連携の障がい者グループホーム |
| 主要コンテンツ | JobFarmer(ジョブファーマー)、ECO CATCHER BATTLE(エコキャッチャーバトル) |
| 解決する課題 | 採用、就労、マネジメント、定着、将来性の5つの壁を想定される支援で解消 |
| 法定雇用率未達企業データ | 令和6年:未達成企業63,364社、うち1人不足企業が64.1%(出典:厚生労働省) |
| 問い合わせ | virtualwork@dea.sg |
| DEA公式 | https://dea.sg/ |
| JAIC公式 | https://www.jaic-vc.co.jp/ |
本記事では、発表された「障がい者バーチャル就労」の実証実験の目的、提供されるサービスの仕組み、コンテンツ、期待される効果、そして各社の関与と目標値を整理しました。企業の法定雇用率対応だけでなく、障がい者本人の定着やキャリア形成を視野に入れた点が本取り組みの特徴です。実証実験の結果は、今後のサービス展開と雇用創出の指標として注目されます。
参考リンク: