ドローン×AIで万博会場を一括監視、防虫ハザードマップ化
ベストカレンダー編集部
2025年8月19日 11:15
万博会場のドローン防虫監視
開催期間:7月1日〜9月30日

万博会場を上空から監視 — ドローンとAIで防虫リスクを可視化する新しい取り組み
2025年8月19日付の発表によれば、SORA Technology株式会社(本社:愛知県名古屋市、Founder兼CEO:金子洋介)は、一般社団法人大阪府ペストコントロール協会(本部:大阪市中央区、会長:曽谷久嗣)から受託し、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)の会場である夢洲において、ドローンによる高解像度空撮とAIによる画像解析を用いた防虫対策オペレーションを開始しました。
この取り組みは、上空から撮影した画像を合成して会場全体のオルソモザイク画像を作成し、AIで水たまりなどの蚊等の発生源となり得る現象を検出することで、防虫ハザードマップの作成および防虫対策のオペレーション効率化を目指すものです。発表日時は2025年8月19日 10時00分です。

取り組みの背景と目的
従来の大規模イベントにおける防虫対策は現場を歩いて発生源を特定することが中心で、関係者間の情報共有や薬剤散布対象の迅速な特定、可視化に課題がありました。特に排水溝や屋上にできる水たまりは蚊の発生源となり得るため、広範囲を短時間で把握する手法が求められていました。
今回のオペレーションでは、ソラテクノロジーが有するドローン飛行技術で夢洲上空を系統的に撮影し、撮影した高解像度画像をAIで解析することで、排水溝の位置情報や各国パビリオン屋上の水たまりの検出を行います。これにより、薬剤散布対象地点の迅速な特定と関係者間でのデータ共有を可能にすることが目的とされています。
- 発注・実施主体
- SORA Technology株式会社(受託)/一般社団法人大阪府ペストコントロール協会(発注)
- 対象会場
- 2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博) 会場・夢洲(大阪府大阪市此花区夢洲)

実施した飛行計画と撮影・解析の手順
飛行は2025年7月〜9月の期間に実施され、撮影計画は会場全体を300m×300mのグリッドで分割し、1グリッドを単位として順次撮影する方式で計画されました。グリッド数は合計で70グリッドに分割しています。
運用にあたっては博覧会協会側との協議を行い、公安委員会への届出および航空局への申請を経たうえで飛行を実施しました。条例により、夢洲およびその周囲1,000mの地域上空は通常ドローン等の飛行や撮影が禁止されていますが、博覧会協会や施設管理者等の同意がある場合は公安委員会へ通報することで例外的に飛行可能となります。必要な手続きをせずに飛行した場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象となる点も明示されています。

飛行パラメータと人員体制
実際の飛行はマルチコプター型ドローンを用い、緯度・経度で飛行範囲を管理しながら複数回に分けて撮影を行いました。1回の飛行範囲を300m×300mに設定し、それを1グリッドとして進行します。
現場の人員はパイロット2名、補助作業員5名の体制で運用されました。安全確保と撮影精度の担保のために複数名での運用が行われています。
項目 | 内容 |
---|---|
飛行期間 | 2025年7月〜9月 |
飛行場所 | 夢洲(大阪府大阪市此花区夢洲) |
グリッド | 300m × 300m、合計70グリッド |
飛行速度 | 秒速 約10〜15m |
想定飛行高度 | 100m(高度により変動) |
1グリッド撮影時間 | 高度100mで約5分 |
人員 | パイロット2名、補助作業員5名 |
法的手続 | 博覧会協会等の同意、公安委員会への届出、航空局への申請 |
違反時の罰則 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |

撮影からオルソモザイク作成までの流れ
ドローンで撮影した複数の画像を合成することで、歪み補正を行ったオルソモザイク画像(航空写真)を作成します。これにより、会場全域を平面上で正確に把握できる地図状の画像が得られます。
オルソモザイクは座標情報と結びつけて管理され、後続のAI解析やデジタルマッピング作業に利用されます。画像の合成・補正処理は撮影後の解析工程で行われ、解析結果は関係者間で共有されます。
- グリッドごとにドローンで撮影(300m×300m)
- 撮影画像を収集・合成してオルソモザイクを作成
- AIによる画像解析で水たまりや排水溝などを検出
- 検出結果を座標情報で整理し、防虫ハザードマップ化
- 関係者間でWeb上で共有、現場での薬剤散布に活用

AI画像解析と防虫ハザードマップ化の狙い
取得した高解像度画像に対してAIを用いて水たまり検出や排水溝等の構造物の位置特定を行います。これにより、従来の人海戦術による巡回では発見しづらかった箇所の抽出が可能になります。
解析によって特定された地点は緯度・経度で座標化され、薬剤散布対象地点としてデータベースに整理されます。これにより防虫作業の優先順位付けや散布作業の効率化、散布履歴の管理などが容易になります。
- AIでの検出対象:水たまり、排水溝、屋上の貯水部位等
- 出力形式:オルソモザイクに結び付けた座標データ、散布対象リスト
- 利用方法:Web共有、デジタルマップによる座標管理、スマートフォンアプリでのナビゲーション
公衆衛生上の意義と気候変動の影響への対応
海外から多数の来場者が見込まれる大規模イベントでは、デング熱など蚊が媒介する感染症の流行リスクが存在します。来場者の快適性に加えて、安心・安全なイベント運営の観点からも防虫ハザードマップのデジタル化は重要です。
報告には、気候変動により日本国内でもこれまで見られなかった感染症の拡大が見込まれるため、アフリカや東南アジアでソラテクノロジーが培った技術を日本国内で展開する意義が明記されています。画像をWeb上で共有し、関係者が薬剤散布対象地点の緯度・経度を入力して座標情報を整理することで、薬剤散布対象の情報を統合管理する仕組みが構築されます。
- 想定される利点
- 作業の効率化、散布作業の精度向上、履歴管理による監査性向上、関係者間での情報共有の迅速化
- 運用支援
- スマートフォン専用アプリによる現場誘導(散布対象地点へのナビゲーション)
関係者情報と本件の技術的要点の整理
本プロジェクトの主体となる企業と組織の概要は以下のとおりです。SORA TechnologyはドローンおよびAIを活用した感染症対策、農業支援、災害対応技術の開発・提供を事業とする企業で、2020年設立です。代表は金子洋介(Founder兼CEO)で、所在地は愛知県名古屋市西区那古野2-14-1 なごのキャンパスです。
一般社団法人大阪府ペストコントロール協会は1981年設立で、害虫相談所の設置や市町村における平常時防除業務等の受託、災害や感染症発生時における緊急出動を行う団体です。会長は曽谷久嗣で、本部所在地は大阪市中央区常盤町2-1-15です。
項目 | 内容 |
---|---|
発表日 | 2025年8月19日 10:00 |
実施期間 | 2025年7月〜9月 |
対象地域 | 夢洲(大阪・関西万博会場) |
発注者 | 一般社団法人大阪府ペストコントロール協会(会長:曽谷久嗣) |
受託者 | SORA Technology株式会社(Founder兼CEO:金子洋介) |
ドローン飛行仕様 | グリッド300m×300m、70グリッド、飛行速度 約10〜15m/s、想定高度100m、1グリッド約5分 |
人員 | パイロット2名、補助作業員5名 |
主要成果物 | オルソモザイク画像、AI解析による水たまり・排水溝検出、防虫ハザードマップ、座標化された薬剤散布対象データ |
関連URL(SORA Technology) | https://sora-technology.com/ |
LinkedIn(SORA Technology) | https://www.linkedin.com/company/sora-technology/ |
ペストコントロール協会 Web | http://www.osakapco.com/ |
上記の表は本件について本文中で触れた主要な事実と技術的要点を整理したものです。記事全体では、プロジェクトの目的、実施体制、撮影・解析手順、法令上の手続きや罰則、AI解析による防虫ハザードマップ化の方法、関係組織の概要までを網羅して説明しました。これにより、万博会場での防虫対策がどのように空撮とAIにより効率化されるのか、またその公衆衛生上の意義や実務上の運用手順が明確になります。