2025年8月8日発表 真核生物の酸化鉄形成メカニズム解明

酸化鉄形成タンパク質発見

開催日:8月8日

酸化鉄形成タンパク質発見
ヒザラガイはどうやって磁鉄鉱の歯を作ってるの?
ヒザラガイはRTMP1という新規タンパク質を使い、歯の骨組みであるキチン繊維に結合して酸化鉄の形成を誘導し、磁鉄鉱の歯を作っています。
この研究ってどんな応用が期待されてるの?
環境に優しい磁鉄鉱の合成技術や高強度材料の開発、さらに鉄が関与する疾患の治療研究など幅広い分野への応用が期待されています。

酸化鉄を作るタンパク質の発見

国立大学法人岡山大学と科学技術振興機構(JST)は、真核生物が酸化鉄の一種である磁鉄鉱を形成する仕組みを世界で初めて明らかにしました。この研究では、軟体動物の一種であるヒザラガイから新規タンパク質「RTMP1」を発見し、酸化鉄の形成メカニズムを解明しました。

この成果は、環境に優しい磁鉄鉱の合成技術や、鉄が関与する疾患の治療研究などへの応用が期待されており、科学界における重要な進展を示しています。

【岡山大学】酸化鉄を作るタンパク質を真核生物で初めて発見~ヒザラガイの「磁鉄鉱の歯」形成の謎を解く~ 画像 2

ヒザラガイの磁鉄鉱の歯の形成

岡山大学の研究グループは、ヒザラガイの「磁鉄鉱の歯」の形成に関わる新規タンパク質を発見しました。この磁鉄鉱の歯は非常に硬く、人工ダイヤモンドとも言われるジルコニアを超える耐摩耗性を示しています。しかし、これまでヒザラガイがどのようにしてこの磁鉄鉱の歯を形成するのかは不明でした。

研究グループは、ヒザラガイ類に特有のタンパク質RTMP1が、あらかじめ形成された歯の骨組みであるキチン繊維に結合し、酸化鉄の形成を誘導することを解明しました。この発見は、ヒザラガイの生物学的特性を理解する上で重要な手がかりとなります。

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研究の意義と今後の展望

今回の研究成果は、環境に優しい磁鉄鉱合成技術や高強度材料の開発につながるとともに、鉄が関与する疾患の治療研究など、幅広い応用が期待されています。特に、磁鉄鉱は通常、高温高圧のマグマで形成される火成岩の一成分として知られていますが、生物がこれを体内で形成する例は非常に限られています。

この研究により、真核生物による磁鉄鉱形成の一端が明らかになり、生物による鉱物形成の理解を深めることができました。今後、これらの成果が新しい材料開発や医療技術の向上に寄与することが期待されます。

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研究成果の詳細

今回の研究成果は、2025年8月8日付で米国の科学誌「Science」に掲載されました。論文のタイトルは「Radular teeth matrix protein 1 directs iron oxide deposition in chiton teeth」であり、著者には岡山大学の根本理子准教授や岡田航輝大学院生、カリフォルニア大学アーバイン校のDavid Kisailus教授などが含まれています。

研究資金は、文部科学省「科学研究費助成事業」や、科学技術振興機構(JST)の「創発的研究支援事業」、日揮・実吉奨学会研究助成金などから提供されました。このような多様な支援が、研究の進展を支えています。

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研究資金の詳細

支援機関 課題番号 研究代表者
文部科学省「科学研究費助成事業」 21K05781, 22H04812 根本理子
科学技術振興機構(JST)「創発的研究支援事業」 JPMJFR210E 根本理子
日揮・実吉奨学会研究助成金 根本理子
加藤記念バイオサイエンス振興財団加藤記念研究助成 根本理子
米国空軍科学研究局(AFOSR) FA9550-20-1-0292, FA9550-23-1-0647 David Kisailus

この研究は、岡山大学の学術研究院環境生命自然科学学域の根本理子准教授を中心とした研究グループによって実施されました。ヒザラガイの磁鉄鉱の歯の形成に関する新たな知見は、今後の研究において重要な役割を果たすと考えられています。

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研究内容の参考リンク

本研究は、岡山大学とJSTの共同研究によるものであり、真核生物が酸化鉄を形成するメカニズムを解明する重要な一歩となりました。今後の研究成果により、環境に優しい材料開発や新たな医療技術の進展が期待されます。

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まとめ

研究内容 発見されたタンパク質 応用の可能性
ヒザラガイの磁鉄鉱の歯の形成メカニズム RTMP1 環境に優しい材料、高強度材料の開発、鉄関連疾患の治療研究

このように、岡山大学の研究は、真核生物による酸化鉄の形成に関する新たな知見を提供し、今後の科学技術における重要な進展を促すものと期待されています。

参考リンク: