2025年7月14日発表 日本語医療特化LLM「ELYZA-LLM-Med」国内最高性能を実現
ベストカレンダー編集部
2025年7月14日 16:47
医療特化LLM開発発表
開催日:7月14日

ELYZAが開発した日本語版医療特化LLM基盤「ELYZA-LLM-Med」
株式会社ELYZA(代表取締役:曽根岡侑也)は、内閣府が設置した「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の一環として、日本語版医療LLMの開発を行いました。このプロジェクトでは、医療領域に特化した大規模言語モデル(LLM)の基盤「ELYZA-LLM-Med」を構築し、国内最高性能を実現しました。
本モデルは、医療タスクにおいてグローバルトップ水準を超える精度を達成しており、特化LLMの展開可能性を示す重要な成果となっています。具体的には、医療における多様なユースケースに対応するため、基盤となる汎用医療LLMの開発と、それに基づく各ユースケースへの適合を行っています。

研究開発の背景と目的
本研究は、「統合型ヘルスケアシステムの構築における生成AIの活用」というテーマのもと、医療LLM基盤の研究開発を行うことを目的としています。特に、臨床現場における社会実装検証を通じて、医療現場での実用性を高めることを目指しています。
このプロジェクトには、さくらインターネット株式会社のさくらインターネット研究所、東京大学松尾・岩澤研究室、株式会社ABEJAなどが共同研究機関として参加し、医療特化型LLMの開発やデータの調達・加工を行っています。個人情報を扱う際には、理化学研究所のセキュアな計算基盤環境での検証も実施されています。

開発したモデル群とその性能
今回の研究開発では、以下のモデル群が構築されました。
- ELYZA-LLM-Med: 日本語版医療特化LLMシリーズの総称。
- ELYZA-Med-Base-1.0-Qwen2.5-72B: 各ユースケースの基盤となる日本語版汎用医療LLM。海外製のオープンモデル「Qwen2.5-72B-Instruct」をベースに、医療関連コーパスを用いた継続事前学習を実施。
- ELYZA-Med-Instruct-1.0-Qwen2.5-72B (UC1): ユースケース1に適合するよう調整を施したモデル。
- ELYZA-Med-Instruct-1.0-Qwen2.5-72B (UC2): ユースケース2に適合するよう調整を施したモデル。
これらのモデルは、医師国家試験ベンチマーク「IgakuQA」において国内最高性能を達成しており、特に現場の医療タスクにおいてはグローバルトップ水準を超える精度を実現しています。

具体的なユースケースとその成果
本研究では、以下の2つのユースケースに焦点を当てています。
- ユースケース1: 電子カルテ標準化のための情報変換
「ELYZA-Med-Instruct-1.0-Qwen2.5-72B (UC1)」は、OpenAI社の「o1(2024-12-17)」を超える性能を達成しました。
- ユースケース2: レセプト(診療報酬明細書)の確認修正内容の提案
「ELYZA-Med-Instruct-1.0-Qwen2.5-72B (UC2)」は、修正要否の精度とコメントの質の両方においてOpenAI社の「gpt-4o(2024-11-20)」を超える性能を示しました。
これらの成果は、医療現場における業務効率化や質の向上に寄与することが期待されています。

今後の展望と社会実装への取り組み
株式会社ELYZAは、引き続きAIエージェントなどを含む最先端の研究開発に取り組み、研究成果を公開・提供することで、国内におけるLLMの社会実装を推進していきます。また、特定領域に特化したLLMソリューションの展開を進めるため、データパートナーやPoCパートナーを募集しています。
特化領域でのデータを保有する企業や、LLM活用に興味のある企業は、ぜひお声がけいただきたいと考えています。

まとめ
本記事では、株式会社ELYZAが開発した日本語版医療特化LLM基盤「ELYZA-LLM-Med」について詳しく解説しました。以下に本研究の重要なポイントをまとめます。
項目 | 内容 |
---|---|
開発企業 | 株式会社ELYZA |
モデル名 | ELYZA-LLM-Med |
性能 | 国内最高性能、グローバルトップ水準超え |
ユースケース | 電子カルテ標準化、レセプト確認修正 |
今後の展望 | 特化領域に特化したLLMソリューションの展開 |
このように、ELYZAは医療分野におけるLLMの実用化に向けて、着実に成果を上げていることが分かります。今後の進展にも注目が集まります。
参考リンク: