2027年開始予定、発電船電力供給の洋上データセンター開発の全貌
ベストカレンダー編集部
2025年7月8日 09:45
洋上データセンター開発
開催日:1月1日

世界初の発電船から電力供給する洋上データセンターの共同開発
株式会社商船三井(社長:橋本 剛、本社:東京都港区)は、2025年7月7日に、世界最大級の発電船事業を展開するKaradeniz Holdingの傘下であるKinetics technologies holdings limited(CEO:Mehmet Katmer、本社:英国王室属領マン島、以下「Karadeniz」)と、「発電船から電力供給する洋上データセンター」の共同開発に向けた基本合意書(Memorandum of Understanding:MOU)を締結しました。本プロジェクトは、発電船からの電力供給によって洋上データセンターを運用する世界初の事業モデルの構築を目指しています。
発電船と洋上データセンターの統合により、生成AIの普及などで急増するデータ処理ニーズに対応することが期待されています。現在、生成AIの登場によってデータセンターの需要は急増していますが、供給側では都市部での電力不足や土地不足、さらには冷却に使用する水不足が顕在化しています。このような資源不足を解消し、社会に不可欠となる新たなデジタルインフラを迅速に提供することが本プロジェクトの目的です。

洋上データセンターのメリット
発電船と組み合わせることで、洋上データセンターには多くのメリットがあります。以下にその主な利点を示します。
- 地域電力からの独立運用:発電船を利用することで、地域の電力供給に依存せず、データセンターを即座に運用開始できる環境を整えることができます。特に米国では電力会社の供給が追い付かず、データセンターの運用開始までに5年以上の待ち時間が発生することもあります。
- 土地の確保と取得費用の削減:洋上データセンターは、大規模な土地の取得が不要で、都市圏周辺での土地確保の手間を省けます。
- 建設期間の短縮:洋上データセンターの改造工事は1年程度で完了する見込みで、従来の陸上データセンター開発と比較して最大3年短縮できる可能性があります。
- 移設可能性:中古船をベースとした洋上データセンターは浮体式であるため、需要の変化に応じて稼働場所を変更することが可能です。条件によっては、通常の船のように洋上を航海しながらデータセンターとして運用することもできます。

中古船を改造するメリット
発電船を活用し、洋上データセンターを建設することには、環境負荷の低減やコスト削減といった多くのメリットがあります。
- 環境負荷の低減:既存の船体を活用することで、新たな原材料の採掘や加工から生じる環境負荷を低減することができます。
- 初期投資および運用コストの削減:建設コストの削減に加え、既存の船内システム(空調、取水、発電機など)を活用することで、初期投資のコスト削減が期待されます。また、海水を利用した水冷システムにより、サーバの冷却にかかる電力消費を抑制し、運用コストを削減します。
- 広範なスペースの提供:例えば、約54,000㎡の床面積を有する自動車運搬船は、延べ床面積ベースで日本最大級の陸上データセンターに匹敵します。

プロジェクトの進捗と未来展望
今回のMOUを契機として、2027年の運用開始に向けて、洋上データセンターとKaradenizの発電船の統合コンセプト設計の評価や技術的検証を行う予定です。本事業は、商船三井グループのアセットと船まわりのノウハウを活かしつつ、環境負荷を抑えながら迅速にデジタルインフラを構築できるプロジェクトです。
商船三井グループは、今後も海運業を中心に様々な社会インフラ事業を展開し、環境保全を始めとした変化する社会のニーズに技術とサービスの進化で挑む姿勢を持っています。

まとめ
項目 | 詳細 |
---|---|
プロジェクト名 | 発電船から電力供給する洋上データセンター |
参加企業 | 株式会社商船三井、Kinetics technologies holdings limited |
運用開始予定 | 2027年 |
主なメリット | 地域電力からの独立運用、土地確保の不要、建設期間の短縮、移設可能性 |
環境への配慮 | 既存船体の活用による環境負荷の低減、コスト削減 |
このプロジェクトは、急速に進化するデジタル社会において、持続可能な形でのデジタルインフラの提供を目指しています。商船三井とKaradenizの協力により、今後の展開が期待されます。
参考リンク: