6月20日開催『Sensing Burgundy』対談で小松美羽が語る風土と祈り

Sensing Burgundy対談

開催日:6月20日

Sensing Burgundy対談
小松美羽ってどんなアーティストなの?
小松美羽は自然や古代日本の信仰に根ざした現代アーティストで、瞑想的な制作を通じて自然の声を表現し、国際的にも評価されています。
今回の対談でどんな話がされたの?
対談では小松美羽が自然との対話や祈りの意味を語り、建築家エマニュエル・デュポンは風土と建築の関係や土地の記憶について哲学的に考察しました。

Art Basel Basel 2025における特別対談『Sensing Burgundy』

2025年6月20日、スイス・バーゼルで開催された国際アートフェア「Art Basel Basel 2025」において、《Sensing Burgundy:芸術・文化・テロワールの詩的交差点(Sensing Burgundy: Art, Culture and the Poetics of Place)》と題された特別対談イベントが実施されました。このイベントは、展覧会の中核セクションである「xchange Circle」ステージにて行われ、主催はGEN DE ARTとVosne-Romanée Culture & Arts Centerです。

対談は、GEN DE ART編集長のオリビア・マツモト(Olivia Matsumoto)が司会を務め、彼女と二人のゲストとのやりとりを中心に展開されました。日本の現代アーティストである小松美羽(こまつ・みわ)とのセッションでは、「自然との対話」や「作品を通じた祈りの在り方」が探求されました。また、建築家エマニュエル・デュポン(Emmanuel Dupont)との対話では、「テロワールと空間記憶」や「建築が織りなす精神的地形」についての深い思索が展開されました。

小松美羽、風土と祈りの対話へ 画像 2

小松美羽の芸術的響き

対談の前半は主に小松美羽の発言に焦点が当てられました。冒頭では、彼女の作品世界を紹介する映像が上映され、会場は儀式のような没入感に包まれました。小松の芸術は、古代日本の信仰や自然霊性に深く根ざしており、大英博物館などの国際的機関でも展示されています。彼女の作品は、グローバルな文化交流の象徴として高く評価されています。

小松は「自然の声を聴く」とはどういうことかという問いに対し、次のように語りました。「私は瞑想を通じて創作の状態に入ります。私にとって、描くという行為そのものが瞑想です。深い意識に沈み込むと、小さな劇場のような光景が見えてくる。それが私の作品の出発点です。」

また、筆の動きについても彼女は言及しました。「リズムや繰り返しを意図しているわけではないのですが、集中が極まると自然と同じ動きが続きます。体が自然のリズムと同期するような感覚です。これこそが、私にとっての“サステナビリティ”なんです。」

小松美羽、風土と祈りの対話へ 画像 3

エコロジー危機への応答

エコロジー危機への芸術家としての応答について問われた際、小松は間もなく7月5日から札幌芸術の森美術館で開催される新しい個展に言及しました。この展覧会は、かつて北海道に生息していたが1889年に絶滅した「エゾオオカミ」に焦点を当てています。

彼女は「エゾオオカミは北海道の固有種でしたが、人間の手によって絶滅してしまいました。私はアーティストとして、自然に今も存在する精霊たちの“代弁者”になりたい。彼らは私たちを見守ってくれているし、“同じ過ちを繰り返すな”と訴えかけているのです。」と語りました。

最後に、彼女の作品が文化を越えて世界中で共鳴を呼ぶ理由について尋ねられた際、小松は次のように締めくくりました。「世界中を巡るなかで、どんな宗教にも“祈り”という共通項があると気づきました。もしかすると、祈りも絵も、人間の奥底にある普遍的な言語なのかもしれません。だからこそ、心に直接届くのだと思います。」

エマニュエル・デュポンの風土の哲学

対談の後半では、エマニュエル・デュポンが登場しました。彼はAZCA建築事務所の共同創設者であり、2000年代初頭からブルゴーニュに拠点を置く建築家です。デュポンは本対談のテーマである「風土」に対し、建築がいかにして自然・文化・地形記憶と結びつくかという観点から、明快かつ哲学的な言葉で応答しました。

「2025年は、ブルゴーニュのクリマがユネスコ世界遺産に登録されて10周年にあたります。まさに“人と土地の関係”を再考するタイミングです。建築とは、記憶を現在に翻訳するための媒体なのです。」と彼は述べました。

デュポンが手がけた地域芸術祭「Volcano de Nuits」では、土地と建築、そして芸術の共生を目指した実験的プロジェクトが展開されており、その場づくりは「精神性の継承」として機能しています。

対話の形式と内容

本対談では、一般的なディスカッションや質疑応答の形式は取られず、登壇者たちは穏やかに、そして深く、オリビアの問いに応じながら、それぞれの創作と風土との関係について語っていきました。

作品と精神性、建築と地形、そして人と土地の記憶——それぞれの言葉が、文化や物質を超えて“感じる風土”の地図を描き出した貴重なひとときとなりました。

イベントの概要と登壇者

本イベント《Sensing Burgundy: Art, Culture, and the Poetics of Place》は、以下のような詳細で開催されました。

項目 詳細
日程 2025年6月20日
会場 Art Basel Basel/Exchange Circle
主催 GEN DE ART × Vosne-Romanée Culture & Arts Center
登壇者 小松美羽(アーティスト)、エマニュエル・デュポン(建築家)

このように、対談は多様な視点から風土や文化の重要性を再認識させるものであり、参加者にとっても非常に意義深い時間となりました。アートと文化の交差点での対話は、今後の創作活動や社会への影響を考える上で、重要な示唆を提供するものとなったと言えます。