2025年版日本企業TSRランキング発表、保険業界が首位に躍進し中期経営計画の重要性も示唆
ベストカレンダー編集部
2025年6月10日 05:44
日本企業TSRランキング発表
開催日:6月9日

日本の大企業におけるTSRランキングの発表
経営コンサルティングファームのボストン コンサルティング グループ(以下、BCG)は、2025年に向けた日本企業の価値創造に関する調査レポート「エクイティストーリーとしての中期経営計画――日本版バリュークリエーターズ・ランキング2025」を発表しました。このレポートでは、過去5年間における日本企業の年平均TSR(株主総利回り)の分析が行われ、特に注目すべき結果が得られました。
2024年に向けての日本企業のTSRは引き続き上昇の見込みですが、同時にいくつかの課題も浮き彫りになっています。具体的には、日本企業の2020年から2024年の年平均TSRは13%に達し、欧州(7%)や新興国(6%)を上回り、米国企業の15%にも肉薄する水準となっています。しかし、TSRの構成要因を詳細に分析すると、マルチプル指標の大幅な低下が足かせとなっていることが明らかになりました。

業種別のTSRランキングとその背景
業種別のTSR分析では、昨年5位だった「保険」が首位に立ち、昨年首位の「半導体」が2位に後退しました。この変動の背景には、金利上昇が業績を押し上げたことや、積極的な株主還元が堅調な株価パフォーマンスを支えたことが挙げられます。
以下は、業種別TSRの上位企業の概要です。
- 1位: 保険 – 金利上昇による業績向上
- 2位: 半導体 – 生成AIやデータセンター向けの旺盛な投資需要
これらの業種は、利益成長を実現し、TSRの成長に寄与しています。特に半導体業界は、生成AIやデータセンター向けの需要が高まっており、引き続き強い業績を上げています。

価値創造に優れた企業ランキング
時価総額1兆円以上の大型企業を対象としたランキングでは、フジクラが首位に躍り出ました。同社は独自の光ファイバー技術「SWR」を強みに、データセンター投資の拡大に伴う光ファイバー需要を取り込んで業績を急成長させています。
上位10社の中には、昨年上位20社に入っていなかった企業が半数を占めており、新たにランクインした企業が多いことも注目されます。以下は、上位企業のリストです。
- フジクラ
- サンリオ
- アシックス
- 三菱重工業
- カプコン
- アドバンテスト
- ディスコ
- 海運大手3社
これらの企業は、良好な業界環境を背景に上位を維持しています。

中期経営計画の重要性とエクイティストーリー
レポートの後半では、中期経営計画(中計)の重要性についても触れています。経営環境の不確実性が高まる中で、中計が投資家の信頼を得るための有力なツールとしての意義を持っている一方、現在の多くの企業は投資家の期待に応える中計を打ち出せていない状況にあります。
BCGの調査によると、2020年から2024年までの5年間に中計を公表した187社の株価推移を分析した結果、超過リターンが3%を超える企業は全体の25%に留まり、ほぼ同水準の26%が3%を超えるマイナスであったことが明らかになりました。また、株価が大きく動かなかった企業は49%に上りました。
公表後に株価が上昇した企業の中計には、以下のような特徴が見られました。
- 事業ポートフォリオ変革を打ち出している
- 意欲的な業績見通しが示されている
- キャピタルアロケーション方針が明確化されている
これらの要素は、投資家の信頼を得るために重要であり、今後の中計は「エクイティストーリー」として策定することが求められています。
まとめ
項目 | 内容 |
---|---|
調査主体 | ボストン コンサルティング グループ(BCG) |
調査対象 | 日本企業769社(2020~2024年) |
TSR | 年平均13%(2020~2024年) |
業種別上位 | 保険、半導体 |
新たにランクインした企業 | フジクラ、サンリオ、アシックスなど |
中期経営計画の重要性 | エクイティストーリーとしての策定が求められる |
本調査は、日本企業の価値創造の現状を示す重要なデータを提供しており、今後の企業戦略においても参考になる情報が多く含まれています。企業は、投資家の期待に応えるため、より明確な中期経営計画を策定し、信頼を得る努力が求められています。
参考リンク: