2025年6月2日発表:LINEAイノベーションが17.5億円の資金調達で中性子フリー核融合研究を加速
ベストカレンダー編集部
2025年6月2日 12:00
LINEA資金調達完了
開催日:6月2日
先進核融合スタートアップのLINEAイノベーションがシリーズAで17.5億円の資金調達を実施
2025年6月2日、株式会社LINEAイノベーション(本社:東京都港区、代表取締役CEO:野尻悠太)は、シリーズAラウンドにおいて総額17.5億円の資金調達を完了したことを発表しました。この資金調達には、リード投資家であるANRIをはじめ、7社のベンチャーキャピタル、2社の事業会社、1名の個人投資家が参加しています。
調達した資金は、同社が開発を進める中性子を出さない先進燃料核融合(p-11B核融合)におけるFRCミラーハイブリッド方式による早期の反応実証に向けた研究開発の推進および体制強化に充当されます。
LINEAイノベーションの核融合技術の目指すもの
LINEAイノベーションは、「Fusion Energy to the Future Generation」をミッションに掲げ、中性子を出さず安全でシンプルな革新的核融合炉の実現を目指しています。具体的には、燃料として軽水素とホウ素11(p-11B)を用いることで、中性子を出さない先進燃料核融合の研究開発に取り組んでいます。このアプローチにより、従来型のD-T核融合炉に伴う三重水素の取り扱いや、中性子による放射化・廃棄物の発生といった問題を根本的に回避し、高い安全性と持続可能性を兼ね備えた次世代エネルギーの実現を目指しています。
具体的な技術としては、独自に開発するFRC(Field-Reversed Configuration:磁場反転配位)による高密度ターゲットプラズマをミラー磁場に捕捉された高エネルギービームイオンと反応させる非熱的なアプローチを採用しています。これにより、効率的な先進燃料核融合を目指し、日本大学や筑波大学との共同研究を通じて、革新的な技術の実用化に取り組んでいます。
資金調達の目的と今後の展望
今回の資金調達により、LINEAイノベーションはFRCミラーハイブリッド方式による数年以内のp-11B核融合反応実証に向けた研究開発を加速します。具体的には、研究開発チームの拡充を図り、重要要素技術の開発を推進するとともに、開発予定の反応実験装置を利用した反応実証実験に取り組みます。
さらに、中期的には2030年代初頭までに発電実証を完了し、商業化への移行を目指します。将来的には、p-11B核融合炉の供給を通じて、安全・クリーンで持続可能な新しいエネルギー社会の実現に貢献することを目指しています。
事業会社からの出資とその意義
今回の資金調達ラウンドでは、建設業界をリードする株式会社大林組および総合電機メーカーである三菱電機株式会社が、LINEAイノベーションの技術と将来性を高く評価し、戦略的パートナーとして出資を行いました。
株式会社大林組は、核融合炉の開発において、実験施設の整備から将来的な核融合炉の建設に至るまで、同社の持つ高度な建設技術やエンジニアリングに関する知見を活用し、2024年から協働を開始します。この出資は、核融合関連施設の設計・施工に関する技術協力を強化するためのものです。
また、三菱電機株式会社は、核融合炉関連事業において、双方の技術と経営資源を活用した協力関係を推進し、当社の先進的な核融合技術と同社の強い事業基盤との間に高いシナジーを見出しています。今回の出資は、この協業関係を一層強化し、将来の社会実装に向けた連携を加速させることを目的としています。
投資家の構成と関係者のコメント
今回の資金調達ラウンドには、以下の投資家が参加しています。
- ANRI-GREEN1号投資事業有限責任組合(ANRI株式会社)(リード投資家)
- KII3号インパクト投資事業有限責任組合(株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ)
- ゆうちょSpiral Regional Innovation 1号投資事業有限責任組合(Spiral Innovation Partners株式会社)
- ニッセイ・キャピタル14号投資事業有限責任組合(ニッセイ・キャピタル株式会社)
- ニッセイ・キャピタルサステナビリティ課題解決ファンド1号投資事業有限責任組合(同上)
- みずほ成長支援第5号投資事業有限責任組合(みずほキャピタル株式会社)
- 株式会社大林組
- 三菱電機株式会社
- ON & BOARD投資事業有限責任組合(ON & BOARD株式会社)
- SMBCベンチャーキャピタル8号投資事業有限責任組合(SMBCベンチャーキャピタル株式会社)
- つくばエクシード2号投資事業有限責任組合(株式会社常陽キャピタルパートナーズ)
- 個人投資家1名
ANRI株式会社のジェネラル・パートナーである鮫島昌弘氏は、「世界経済の見通しが不透明な中でも、核融合のような時間のかかるベンチャーに投資する理由は、科学的に実現可能であり、将来の日本の基幹産業になり得るからだと思います」と述べています。
また、LINEAイノベーションの代表取締役CEOである野尻悠太氏は、「今回の資金調達により、私たちの最大の目標である中性子の出ない、安全でシンプルな革新的核融合炉の早期反応実証に向けた研究開発を加速させることが可能になります」と感謝の意を表しました。
LINEAイノベーションの概要と連絡先
株式会社LINEAイノベーションは、2023年9月29日に設立され、東京都港区六本木六丁目10-1 六本木ヒルズ森タワー15Fに本社を構えています。代表者は代表取締役CEOの野尻悠太氏で、先進核融合(p-11B核融合)技術を用いたFRCミラーハイブリッド炉の研究開発を行っています。
公式ウェブサイトは、こちらから確認できます。
まとめ
LINEAイノベーションは、先進燃料核融合技術の開発を通じて新しいエネルギー社会の実現を目指しています。今回の資金調達により、同社は研究開発を加速させ、商業化に向けた重要なステップを踏み出すことになります。以下に、今回の内容を整理した表を示します。
| 項目 | 詳細 |
|---|---|
| 資金調達額 | 17.5億円 |
| リード投資家 | ANRI |
| 主な出資者 | 株式会社大林組、三菱電機株式会社 |
| 技術の目指すもの | 中性子を出さない安全でシンプルな核融合炉の実現 |
| 今後の展望 | 2030年代初頭までに発電実証を完了し、商業化へ移行 |
このように、LINEAイノベーションは革新的な技術を基に、持続可能なエネルギー社会の実現に向けて着実に前進しています。
参考リンク: