2025年5月28日発表:リン不足土壌でも育つピンクッションハケアの根分泌メカニズム解明
ベストカレンダー編集部
2025年5月28日 05:52
超低リン耐性植物発見
開催日:5月28日
リンが少ない土壌でも育つ植物のしくみを発見
国立大学法人岡山大学は、広島大学、北海道大学、山形大学との共同研究により、超低リン耐性植物のメカニズムを解明しました。この研究は、2025年5月28日に発表され、ピンクッションハケア(Hakea laurina)という植物がリンが少ない環境でどのように成長できるのか、その根の皮層からの分泌物が重要であることを突き止めました。
超低リン耐性植物は、特にリンが不足している土壌でも育つことができる特性を持っています。この研究では、根の皮層組織から分泌される有機酸や酸性ホスファターゼという酵素が、リン吸収を促進することが明らかになりました。これにより、クラスター小根の根分泌能力が高いことが示され、今後の農業技術に応用できる可能性が期待されています。
研究の背景と目的
南西オーストラリアに自生するピンクッションハケアは、超低リン耐性植物の一種です。この植物は、リンが少ない環境に適応するために特異なクラスター根を形成します。クラスター根は通常の根に比べて側根が密集しており、根の表面積を大幅に拡大することで、効率的にリンを吸収する機能を持っています。
研究の目的は、これまで不明だったクラスター根の分泌メカニズムを解明し、根分泌能力の向上に寄与する要因を探ることでした。特に、リン吸収に関与する遺伝子や細胞の特定を目指しました。
研究手法と結果
研究チームは、ピンクッションハケアのクラスター根において特異的に発現するリンゴ酸トランスポーター遺伝子HalALMT1を同定しました。この遺伝子の働きやその存在位置を詳しく調べるために、酸性ホスファターゼの活性染色試験を実施しました。
その結果、根の皮層から有機酸や酸性ホスファターゼが分泌されていることが確認され、これがリン吸収に寄与していることが明らかになりました。また、通常の植物が持つスベリン外皮が形成されないため、分泌物が根の周囲の土壌にスムーズに拡散することも確認されました。
クラスター根とその特性
クラスター根は、特にリンが不足している環境で発達する特殊な根の形態です。この根は、細かい側根が密集しているため、根の表面積が増加し、効率的に栄養素を吸収することができます。具体的には、以下のような特性があります:
- 根の表面積の拡大:側根が密集しているため、より多くの土壌と接触し、栄養素を効率的に取り込む。
- リンの吸収能力の向上:有機酸や酸性ホスファターゼを分泌することで、リンを吸収しやすい形に変える。
- 環境適応性:リンが少ない土壌でも成長可能で、他の植物に比べて競争優位性を持つ。
今後の応用可能性
この研究成果は、農業や環境保全の分野での応用が期待されています。特に、リンが不足する土壌での作物栽培において、クラスター根の特性を活用することで、作物の生産性を向上させる可能性があります。
また、リンの使用量を減らすことができるため、環境負荷の軽減にも寄与することが期待されます。このような研究は、持続可能な農業の実現に向けた重要なステップとなるでしょう。
研究の詳細と今後の展望
本研究の詳細は、2025年6月発行の論文誌「New Phytologist」に掲載される予定です。論文のタイトルは「HalALMT1 mediates malate efflux in the cortex of mature cluster rootlets of Hakea laurina, occurring naturally in severely phosphorus-impoverished soil」であり、多くの研究者や関係者にとって重要な情報源となるでしょう。
研究に関する問い合わせは、広島大学大学院統合生命科学研究科の教授である和崎淳氏まで連絡することができます。また、岡山大学や北海道大学、山形大学の研究者もこのプロジェクトに関与しており、各大学の専門家が連携して研究を進めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 研究機関 | 広島大学、岡山大学、北海道大学、山形大学 |
| 発表日 | 2025年5月28日 |
| 対象植物 | ピンクッションハケア (Hakea laurina) |
| 主な発見 | 根の皮層からの分泌物がリン吸収を促進する |
| 今後の応用 | 持続可能な農業への展開が期待される |
このように、リンが少ない土壌でも育つ植物のメカニズムを解明した本研究は、今後の農業技術の発展に寄与する重要な成果となるでしょう。研究の進展により、より持続可能な農業が実現されることが期待されます。
参考リンク: