住友ファーマのユニバーサルワクチン、中間解析でH1・H5交差抗体確認
ベストカレンダー編集部
2026年2月26日 19:28
欧州フェーズ1中間解析
開催日:2月26日
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臨床試験の目的とデザイン:住友ファーマとNIBNが進めるユニバーサル戦略
住友ファーマ株式会社と国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(NIBN)は、インフルエンザウイルスの亜型を超えて広範な防御効果を狙う「ユニバーサルインフルエンザワクチン」の開発を共同で進めています。本稿は、住友ファーマ創出の新規TLR7ワクチンアジュバント(DSP-0546)を用いた候補製剤「fH1/DSP-0546LP」に関する欧州フェーズ1試験の中間解析(交差反応性評価)の内容を整理したもので、プレスリリース(発表日:2026年2月26日 15時30分)に基づいて全情報を網羅します。
本試験は、2024年5月14日に開始が公表された無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験であり、18歳から40歳の健康成人144例を対象に実施されています。目的は主に本剤の安全性、忍容性および免疫原性を評価することであり、交差反応性などの探索的評価指標も併せて解析されます。中間解析は臨床試験実施計画書に従って、投与終了4週間後(Day50)までの事後観察結果を用いて行われました。
被験者集団と投与スケジュールの詳細
登録された被験者は18歳から40歳までの健康成人計144例です。試験は二重盲検方式で実施され、被験者は各投与群へ無作為に割り付けられました。投与は筋肉内注射で、Day1(初回投与)とDay22(2回目投与)の2回投与プロトコルが採用されています。
試験に設定された主な投与群は以下の通りです。各群とも投与は2回行われ、観察は投与終了後1年を含むフォローアップまで継続します。
- 本剤群:fH1(2μg または 8μg)/ DSP-0546LP(2.5μg、5μg、10μg)
- 抗原単独群:fH1(2μg、8μg)(アジュバント非添加)
- アジュバント単剤群:DSP-0546LP(2.5μg、5μg、10μg)
- プラセボ群:対照
評価項目:主要評価項目と探索的評価項目
主要評価項目は安全性、忍容性および免疫原性です。安全性と忍容性は有害事象の発現状況や臨床検査値等で評価され、免疫原性は抗体価や免疫学的応答の定量評価によって評価されます。
探索的評価項目としては、交差反応性(異なるインフルエンザ亜型に対する抗体の結合能など)、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)等の機能的な免疫応答評価が含まれており、これらは本中間解析以降も継続して分析されています。
交差反応性の評価方法と中間解析の結果(Day50)
中間解析では、交差反応性の評価に際して、様々なインフルエンザ亜型由来のLAH(Long Alpha Helix)に結合し交差防御活性を示す「LAH31モノクローナル抗体」を標準物質として用い、ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)を用いて抗LAH抗体の結合量を定量しました。測定に用いた標準物質と方法はあらかじめ定められたプロトコールに従っています。
ELISAの参照文献としては、LAH31を標準物質として用いた既報が示されており(参考:https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1011554)、本解析でも同様の標準化された方法論が適用されています。
主要な数値結果(fH1 8μg / DSP-0546LP 5μg群)
本試験の中間解析において、fH1 8μg / DSP-0546LP 5μgを投与した群についてDay50(投与終了4週間後)の抗LAH抗体濃度が報告されました。これらはDay1(投与前)と比較して上昇しており、H1由来LAHおよび高病原性鳥インフルエンザH5由来LAHの双方に対する結合性抗体が誘導されていることが示されています。
具体的な幾何平均値(95%信頼区間)は以下の通りです。これらはELISAで定量された抗LAH抗体濃度(単位:ng/mL)を示しています。
| 評価項目 | Day50の幾何平均値 | 95%信頼区間 |
|---|---|---|
| H1由来LAHに結合した抗LAH抗体濃度 | 2,994.54 ng/mL | 2,077.84 – 4,315.67 |
| H5由来LAHに結合した抗LAH抗体濃度 | 2,657.93 ng/mL | 1,556.89 – 4,537.65 |
上記の結果は、季節性に流行するH1N1亜型由来のLAHだけでなく、高病原性鳥インフルエンザであるH5N1亜型由来のLAHに対しても結合性抗体が誘導されたことを示しており、交差反応性の観点から有意義なデータと評価できます。
なお、本解析は探索的評価指標として実施されたものであり、被験者数や観察期間などを踏まえて慎重に解釈する必要があります。加えて、抗体の中和能や機能性(例:ADCC)の評価は継続して解析中です。
本剤(fH1/DSP-0546LP)の構成と科学的根拠
本剤は改変型ヘマグルチニン抗原(fH1)とTLR7を標的化するアジュバント製剤(DSP-0546LP)を組み合わせたワクチン候補です。改変型ヘマグルチニンは、通常は隠れているLAH領域を露出させた構造として設計されており、LAHに対する抗体を誘導することを目的としています。
アジュバントであるDSP-0546LPは、ウイルス由来のRNAを感知する自然免疫の受容体であるToll様受容体7(TLR7)を特異的に活性化する物質を含む製剤です。これにより免疫応答の量・質・持続性を高め、抗原に対する反応性を強化することが期待されます。
- LAH(Long Alpha Helix)
- インフルエンザウイルスの複数亜型に共通する隠れた抗原領域。通常は免疫系から隠れているため、露出させることで広範囲の交差反応性を持つ抗体を誘導できる可能性がある。
- TLR7アジュバント(DSP-0546LP)の役割
- TLR7を活性化して自然免疫を刺激し、抗原に対する免疫応答の増強および持続性の向上を目指す。アジュバント単剤としての投与群も設定され、その免疫原性・安全性も評価される。
非臨床研究では、本剤が種類の異なるインフルエンザウイルスに対して広い防御効果を示すことが確認されており、季節性インフルエンザのみならず、パンデミックのリスクを伴う新型インフルエンザにも対応し得る次世代ワクチンとしての可能性が示唆されています。
追跡観察・解析の継続と研究開発上の位置付け
本試験はDay50までの中間解析に続き、投与1年後までのフォローアップ観察を継続して実施します。探索的評価指標としては抗体依存性細胞障害活性(ADCC)などの機能的評価も含まれており、これらは現在解析中です。長期的な免疫持続性や安全性プロファイルの確立が今後の重要な評価課題となります。
住友ファーマとNIBNの共同研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)のCiCLE(医療研究開発革新基盤創成事業)に採択されたプロジェクトに基づいて推進されています。両者は本剤の早期実用化を掲げ、複数亜型に対応可能なマルチサブタイプインフルエンザワクチンとしての開発を継続しています。
関連する過去の情報やプレスリリースは以下のリンクで公開されています。臨床試験開始(2024年5月14日)、その後の中間解析公表(2025年7月31日)や学会発表情報(2025年10月1日)などが示されています。
- 臨床試験(フェーズ1)開始のお知らせ: https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20240514-2.html
- 同試験の中間解析(2025/07/31公表): https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20250731-3.html
- 学会発表に関する情報(2025/10/01公表): https://www.sumitomo-pharma.co.jp/news/20251001.html
- AMED CiCLE プログラム: https://www.amed.go.jp/program/list/index07.html
現在の解析では、ELISAで検出される結合性抗体の上昇が確認されている一方で、中和能や細胞性免疫、機能的抗体の詳細解析は継続して評価される段階にあります。これらの追加データは、ユニバーサルワクチンとしての有効性評価に不可欠です。
研究体制と資金支援
本研究は住友ファーマとNIBNが共同で実施しており、代表機関は住友ファーマです。CiCLEによる公的支援のもと、産学官連携で研究開発が推進されています。CiCLEは医療研究開発や創薬の加速、オープンイノベーションの促進を目的としたAMEDの事業です。
本件に関する参考文献として、ELISAでの標準物質に関する報告(https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1011554)が示されており、解析方法論の透明性が確保されています。
要点の整理(数値・日程を含む表)
以下の表は、本記事で述べた臨床試験の主要事項および中間解析の結果を整理したものです。数値、日付、試験デザイン、主要評価項目などを一目で確認できるようにまとめています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| プレスリリース発表日 | 2026年2月26日 15時30分 |
| 試験開始公表日 | 2024年5月14日(欧州フェーズ1試験開始の公表) |
| 試験デザイン | 無作為化プラセボ対照二重盲検比較試験(成人144例、18–40歳) |
| 投与スケジュール | 筋肉内投与、Day1およびDay22の2回投与、観察は投与終了1年後まで |
| 投与群 |
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| 主要評価項目 | 安全性、忍容性、免疫原性 |
| 探索的評価項目 | 交差反応性、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)等 |
| 中間解析(Day50)代表結果 |
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| 解析方法 | ELISA(LAH31モノクローナル抗体を標準物質として使用) 参考:https://doi.org/10.1371/journal.ppat.1011554 |
| 共同研究・資金 | 住友ファーマ(代表)・NIBN 共同研究、AMED CiCLEによる支援(2019年採択) |
上表は中間解析時点で公表された情報を基に整理したものであり、解析は継続しているため追加の結果が今後公表される可能性があります。臨床試験の設計、投与群、用量、評価項目、取得された数値は本稿で示した通りです。
本稿はプレスリリースの内容を基に、中間解析における交差反応性評価の方法と結果、試験デザインや本剤の科学的背景、継続中の評価項目などを網羅的に整理しました。今後発表される詳細解析や長期フォローアップの結果により、本剤の有効性および実用化可能性に関する理解が深まることが期待されます。