初大師・初弘法 (年中行事 1月21日)

初大師・初弘法

正月の初詣が一段落した1月21日、真言宗の寺院では「初大師」あるいは「初弘法」と呼ばれる縁日が営まれます。この日の起点となるのは、今から約1200年前——承和2年(835年)3月21日、高野山で静かに息を引き取った一人の僧侶の存在です。

弘法大師空海は、真言密教を中国から日本へ持ち帰り、東寺を拠点として体系化した宗教家です。密教の修法や文字・芸術への影響のみならず、土木・治水事業にも関わったとされ、民衆から「お大師さま」と親しまれてきました。入寂した3月21日は「御影供(みえく)」として特別に法会が行われ、それが転じて毎月21日が縁日——仏や菩薩との縁が深まるとされる日——として定着しました。年の最初にめぐってくる21日が「初大師」です。

関東で圧倒的な知名度を誇るのが、神奈川県川崎市の平間寺、通称「川崎大師」です。平安時代末期の大治3年(1128年)、漁師が海中から引き上げた弘法大師像を安置したことに創建の由来を持ちます。厄除け祈願の霊場として江戸時代から庶民の信仰を集め、初詣参拝者数は全国トップクラスを誇ります。初大師の1月20・21日にご祈祷されたお護摩札には「初大師修行」の朱文字が特別に入れられ、遠方からの参詣者も後を絶ちません。一方、関西の中心となるのが京都の東寺(教王護国寺)です。弘仁14年(823年)、嵯峨天皇から空海に下賜されたこの寺は、真言宗の根本道場として現在も機能しています。毎月21日には境内で「弘法市」が立ち、骨董・古着・植木など数百の露店が並ぶ光景は京都の風物詩となっています。1月の弘法市は一年の始まりを飾る特別な賑わいを見せます。

「初大師」は、お正月とは異なる時間軸で新年を捉え直す視点を持っています。

初詣が「新しい年への祈り」であるとすれば、初大師は「一年の最初の縁日」という仏教的な時間感覚に基づいています。12回の縁日の最初の1回として特別な意味を帯びるこの日に参詣することは、空海の時代からつながる民衆信仰の連鎖に自分を位置づける行為でもあります。