料理番組の日 (記念日 1月21日)

料理番組の日

1937年1月21日、世界初のテレビ料理番組が誕生した瞬間、画面に映し出されたのはオムレツを作る手元でした。BBC(英国放送協会)が実験的に放映を始めた『夕べの料理』(Cook’s Night Out)、担当したのはフランス人シェフのマルセル・ブールスタン(Xavier Marcel Boulestin、1878〜1943年)です。この放送によって彼は「世界初のテレビシェフ」という称号を得ることになります。

ブールスタンはもともとシェフではありませんでした。フランスのポワティエ生まれで、パリでは作家「ウィリー」の秘書・代筆者として文筆業に関わり、その後ロンドンへ渡ってインテリア雑貨店を開いたものの失敗。転機となったのは、イギリスの一般読者向けにフランス料理の入門書を書いたことでした。これが大ヒットし、以来ヴォーグ誌へのレシピ寄稿、フォートナム&メイソンでの料理教室など、料理文筆家・レストラン経営者として活躍の場を広げていきました。1927年にはロンドン・コヴェント・ガーデンに自身の名を冠した「レストラン・ブールスタン」を開き、セシル・ビートンに「ロンドンで最も美しいレストラン」と評されるほどの評判をとりました。

そのブールスタンがBBCのカメラの前に立ったのは、テレビ黎明期の1937年のことです。放送はオムレツ一品から始まり、シンプルな料理実演という形式が確立されました。この番組は1939年まで続きましたが、第二次世界大戦の勃発によりBBCテレビ自体が放送を休止したため、ブールスタンがカメラの前に戻ることはありませんでした。彼は1943年、パリで生涯を閉じました。

日本では、1937年から26年後の1963年1月21日、この日が新たな料理番組の誕生日となりました。日本テレビ系で放送が始まった『キューピー3分クッキング』です。タイトルどおり「3分でできる」を合言葉に短時間で実用的なレシピを届けるスタイルは視聴者の支持を集め、2018年には放送開始55周年を迎える長寿番組となりました。一方、NHKの『きょうの料理』はさらに歴史が深く、1957年11月4日にスタートし、60年以上にわたって放送を続けています。週刊テキスト誌とセットで親しまれてきたこの番組は、日本の家庭料理の教科書的存在として世代を超えて愛され続けてきました。

1本のオムレツから始まったテレビと料理の出会いは、その後スターシェフを生み出す文化へと育ち、現代ではグルメ番組や料理動画が当たり前のコンテンツとなりました。毎年1月21日に「料理番組の日」として記念されるのは、映像メディアが「食べること」を分かち合う新しい場所を開いた、あの日への敬意です。