ピース記念日 (記念日 1月13日)
終戦からわずか1年4ヶ月、焼け野原が広がる東京・有楽町駅の売店に長蛇の列ができました。1946年(昭和21年)1月13日、「ピース」の発売初日のことです。販売開始からわずか1時間で1000箱が売り切れました。10本入り7円という価格は、当時の配給たばこの10倍以上にあたる破格の値段だったにもかかわらず、人々は我先にと手を伸ばしました。
「ピース」は、配給制のたばこしかなかった戦後日本において、自由販売たばこ第1号として登場した商品です。日曜・祝日に1人1箱限定という制限つきでの販売でしたが、それでも入手困難なほどの人気を集めました。焦土の中で人々が求めたのは、単なる嗜好品ではなく、戦争とは切り離された「自由」そのものだったのかもしれません。
その品質を支えたのが最高級バージニア葉です。当初は岩手県一関産の在来種「東山葉」が使われていましたが、やがて海外たばこにも用いられるバージニア葉を採用しました。芳醇な香りとほのかな甘みを持つ独自の風味が確立され、「高い香り」を謳う高級品としての地位を固めていきました。
発売から6年後の1952年(昭和27年)、アメリカの著名な商業デザイナー、レイモンド・ローウィによってパッケージが刷新されました。当時の内閣総理大臣の月給が約11万円だった時代に、ローウィへのデザイン料は150万円という破格のものでした。京都見物を通じて日本人の色彩感覚を研究したローウィは、高貴さを象徴する深い紺色に金色を組み合わせました。この色は「ピース紺」と命名され、日本のカラーパレットに新たな色調として加わりました。パッケージに描かれたオリーブの葉をくわえた白鳩は、旧約聖書のノアの方舟に由来する平和の象徴であり、戦後復興期の日本人の心情に深く響きました。
ピース記念日は、その発売を記念して愛煙家たちが制定しました。現在はJTが製造・販売を継続しており、80年近い歴史を持ちながらも「ピース」の名とあの深い紺色のパッケージは変わらず受け継がれています。自由と平和を渇望した時代に生まれたたばこが、いまも日本のたばこ文化を代表するブランドであり続けています。