薬師縁日 (記念日 毎月8日)
「如来の中で、物を持つのは薬師如来だけ」という事実を知ると、この仏への親しみがぐっと深まります。毎月8日は薬師如来の縁日。薬師如来の徳をたたえる法会「薬師講」に由来すると考えられており、全国の薬師如来をまつる寺院でさまざまな祭祀や供養が行われます。
薬師如来の正式な名称は「薬師瑠璃光如来(やくしるりこうにょらい)」。サンスクリット語での名はバイシャジヤ・グル(Bhaiṣajya-guru)といい、「バイシャジヤ」は医薬・医療、「グル」は導師・指導者を意味します。日本では「大医王」「医王善逝(いおうぜんぜい)」とも称され、菩薩としての修行時代に人々の病を救うことを誓った12の本願を立てた仏として知られています。左手に薬壺(やっこ)、右手は薬指を前に伸ばした施無畏(せむい)の形を取るのが最大の特徴です。
縁日の中でも1月8日は特別で、「初薬師(はつやくし)」と呼ばれています。新年最初の縁日として、多くの寺院でにぎやかな法要が催され、露店が立ち並ぶ光景も見られます。薬師如来は病気平癒の功徳で古くから民衆の信仰を集めてきたため、初薬師には健康祈願に訪れる参拝者が多く集まります。
薬師如来ゆかりの著名な寺として、奈良の薬師寺が挙げられます。奈良時代に天武天皇の発願で創建されたこの寺院では、定期的に縁日の法要が行われています。また、聖武天皇が741年の詔で全国に建立を命じた国分寺の多くが、今日でも薬師如来を本尊としています。東京都国分寺市の武蔵国分寺では、平安時代作の木造薬師如来坐像(国宝)を安置しており、年に一度の御開帳の際には多くの人が訪れます。
毎月8日が縁日とされる由来は、8の字が薬壺の形に似ているからとも、奈良時代の「薬師講」が8日に行われていたからとも伝えられています。いずれにせよ、この日には各地の薬師堂に参拝者が集まり、千年以上続く縁日の文化が今も脈々と息づいています。