つむぎの日 (記念日 1月5日)
成人式の晴れ着として、地元の人が大島紬を纏う——そんな光景が「つむぎの日」の原点にあります。1978年(昭和53年)、鹿児島県名瀬市(現:奄美市)は1月15日を「つむぎの日」と制定しました。当時、名瀬市では成人式をこの日に行っており、新成人たちが大島紬を着て式に臨む習わしが根付いていました。市民が自らつむぎを着て街を歩き、その良さを日常の中で再確認するというこの記念日は、行政が産業振興を「お祝い」として定着させようとした試みでした。高度経済成長期を経て洋装が普及し、着物需要が全国的に落ち込む中、奄美の基幹産業を守ろうという動きがその背景にありました。
大島紬は奄美大島を代表する絹織物で、その歴史は1300年以上さかのぼるとされています。フランスのゴブラン織、イランのペルシャ絨毯と並んで世界三大織物に数えられ、「着物の女王」とも呼ばれてきました。軽くて丈夫、独特のなめらかな肌触りを持ち、着込むほどに風合いが増すと言われています。
製造工程は30以上の工程からなり、一反を仕上げるのに半年から1年を要します。奄美に自生するシャリンバイ(テーチ木)の煮汁と、鉄分を多く含む泥土を使って糸を染める「泥染め」が最大の特徴で、糸を染めては泥に浸け、また染めるという工程を何十回と繰り返すことで深みのある黒褐色が生まれます。泥染めに使う泥田は奄美大島の特定の場所にしか存在せず、その土地でしか生まれ得ない布であることが大島紬の唯一無二性を支えています。完成した布は軽さと光沢を兼ね備え、真夏でも涼しく着られる実用性も高く評価されています。
大島紬は現在も国の伝統的工芸品に指定されており、織物技術は職人から職人へと受け継がれています。つむぎの日は、その地域固有の技と歴史を市民が誇りとして着こなす日として今も続いています。