御用始め・仕事始め (年中行事 1月4日)
江戸時代、武家や商家では1月2日に「仕事始め」の儀式を行う慣習がありました。農家では「田打ち正月」として象徴的に田を耕し、漁師は「船乗り初め」として海へ出るなど、各々の生業に応じた「初仕事」が年の始まりを告げる行事として根付いていました。現代の「御用始め」は、この長い慣習が近代化の波とともに整えられた姿です。
「御用」とは江戸時代から使われてきた言葉で、宮中や幕府といった「お上」の公務を指しました。「御用聞き」「御用達」など、現代語にもその名残が散見されます。明治維新後も役所の仕事を「御用」と呼ぶ慣習は引き継がれ、その年最初の業務を「御用始め」、最後の業務を「御用納め」と呼ぶ表現が定着しました。
法的な根拠が初めて設けられたのは1873年(明治6年)で、太政官布告により官公庁の年末年始休暇が「12月29日から1月3日まで」と明文化され、1月4日が御用始めの日となりました。折しも太陰太陽暦から太陽暦への改暦が断行された直後であり、近代国家として官僚制度を整備するうえで勤務体系の法整備は急務でした。現在の根拠法は1988年(昭和63年)施行の「行政機関の休日に関する法律」です。この法律によって1月1日から3日、12月29日から31日が行政機関の休日と定められており、1月4日が土曜日または日曜日に当たる場合はその直後の月曜日が御用始め、御用納めは通常12月28日ですが曜日によって前後します。
年始の業務再開にあたり、官公庁や企業では「仕事始め式」を行う場合があります。幹部が訓示を述べ、職員・従業員が一堂に会する年始の風景は、長く日本の職場文化を彩ってきました。一方で近年は「働き方改革」の流れを受け、年末年始に連続休暇を取りやすくする観点から、式典を廃止・簡略化する動きが広がっています。官公庁においても「御用始め」という表現そのものが古めかしいとして「仕事始め」へ言い換える場面が増えており、言葉の使われ方も時代とともに変化しつつあります。