パック旅行の日 (記念日 5月17日)

パック旅行の日

1861年5月17日、ロンドン・ブリッジ駅からパリへ向けて一本の列車が出発しました。乗り込んでいたのは労働者委員会が集めた一般市民の一行。手配を担ったのは、当時53歳のトーマス・クック(Thomas Cook、1808〜1892年)です。この旅が「世界初のパック旅行」として歴史に刻まれ、以降、団体旅行が旅の主流となりました。クックが旅行業に乗り出したきっかけは、それより20年前の1841年にさかのぼります。禁酒運動の一環として485人を引き連れ、レスターからラフバラーまで鉄道で移動する企画を成功させたことが出発点でした。以来、1851年のロンドン万博、1855年のパリ万博と大型イベントへの団体ツアーを重ね、一般市民が旅をするという文化そのものを育てていきました。

パック旅行(パッケージツアー)とは、旅行会社が宿泊・交通・食事などをセットで企画・販売する旅行形態のことです。日本では旅行業法上「募集型企画旅行」と呼ばれます。個人で手配するより費用が割安になること、添乗員やガイドが同行すること、限られた日程でも観光名所を効率よく周れることが利点として知られています。法律上は旅行業者が旅程管理・旅程保証・特別補償という3つの責任を負うため、手配旅行に比べてトラブル時の保護も手厚いのが特徴です。

クックの事業はその後も拡大を続け、1869年にはスエズ運河とアメリカの大陸横断鉄道の開通を機に世界一周ツアーを商品化。1872年には実際に世界一周ツアーを催行し、近代観光業の礎を築きました。フィリアス・フォッグが80日間で世界を一周するジュール・ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』(1872年)は、クックのツアーが実現した時代を背景に生まれたとも言われています。19世紀に一人の旅行業者が切り開いたパック旅行の仕組みは、160年以上が経ったいまも世界中の人々の旅を支えています。