永平寺胡麻豆腐の日 (記念日 5月12日)
永平寺の修行僧が日々口にする精進料理の中で、「ごまどうふ」は別格の扱いを受けてきました。ごまをすり鉢で丁寧にすり、葛と合わせて練り上げる工程は高度な技術を要し、精進料理の世界では「もてなしの心の象徴」とも呼ばれています。5月12日は「ごま(5)どうふ(12)」の語呂合わせから「永平寺胡麻豆腐の日」とされ、2017年(平成29年)に一般社団法人・日本記念日協会によって認定・登録されました。この記念日を制定したのは、福井県吉田郡永平寺町に店を構える株式会社團助(だんすけ)です。1888年(明治21年)の創業以来、大本山永平寺の御用達として胡麻豆腐を作り続けてきた老舗で、創業から130年以上にわたって受け継がれてきた製法は、寺の食文化と深く結びついたものです。
永平寺を開いた道元禅師は、13世紀に中国(宋)へ渡って禅を学び、帰国後に曹洞宗の修行道場を越前(現在の福井県)に創建しました。道元は食事そのものを修行と位置づけ、料理をつかさどる「典座(てんぞ)」という役職を非常に重視しました。著作『典座教訓』には、食材一つひとつを丁寧に扱い、心を込めて調理することの意味が詳述されており、永平寺の食文化の根底にある思想を今に伝えています。
修行僧にとってごまは重要なタンパク源です。肉や魚を使わない精進料理において、ごまはさまざまな料理に活用されますが、中でもごまどうふはごまの配合量が多く、手間のかかる一品とされています。白ごま・黒ごま・金ごまといった種類によって風味が異なり、團助では本葛(ほんくず)と組み合わせた製品を展開しています。本くずは国産くずの根から採れる高品質なでんぷんで、ごまどうふに独特の弾力と滑らかさをもたらします。
永平寺町の門前には現在も團助の本店があり、その場でしか味わえない「生ごまどうふ」も提供されています。作りたての柔らかな食感は、製造から時間の経った市販品とは別物とされ、参拝者が立ち寄る目的の一つになっています。精進料理に由来する食品が、観光と食文化の接点として現代に根付いている例の一つです。