街区表示板の日 (記念日 5月10日)
電信柱や建物の壁に細長い金属プレートが貼られているのを見たことがあるでしょうか。「○○町○丁目」と書かれたあの板が、街区表示板です。1962年(昭和37年)5月10日、「住居表示に関する法律」が施行されたことを記念して、この日は「街区表示板の日」とされています。
この法律が生まれた背景には、戦後の急速な都市化があります。土地の分筆・合筆が繰り返された結果、隣り合う土地の地番が「1番地」の隣が「127番地」になるなど、地番の連続性が失われていきました。地番は本来、土地の権利を管理するための「財産番号」であり、住所として使うには無理があったのです。昭和36年に設置された町名地番制度審議会は、欧米で普及していたハウスナンバー方式を参考に「住居番号方式」の採用を答申し、翌年に同法が制定・施行されました。
法律の施行により、住居表示を実施する市区町村には街区表示板の設置が義務づけられました。板には「町名」と「街区符号」が記載され、設置場所・寸法・色彩の基準は「街区方式による住居表示の実施基準」で定められています。一方で色や素材は自治体の裁量に委ねられており、青地に白文字、緑地に白文字など地域によってさまざまです。
街区表示板の多くにはローマ字が併記されており、外国人や観光客が現在地を確認しやすいよう配慮されています。さらに周辺の略地図を載せたものも各地で見られ、道案内としての機能も兼ね備えています。スマートフォンのナビが普及した今も、電波が届かない場所や急いで現在地を確認したいときに、街区表示板は静かに役割を果たしています。住居表示制度は全国で順次実施されてきましたが、歴史的な町名の消滅につながるとして反対運動が起きた地域も少なくありません。京都市では「西陣」「嵯峨」といった伝統的な地名を守るために住居表示の実施を見送った区域があります。便利さと文化的継承のはざまで、小さなプレート一枚が地域のアイデンティティと深く結びついているのです。