黒板の日 (記念日 5月9日)

黒板の日

教室の前に立つ緑色の大きな板を「黒板」と呼ぶことに、疑問を持ったことはないでしょうか。名前と色が一致しないこの不思議は、日本の近代教育の歴史と深く結びついています。5月9日は「こ(5)く(9)ばん」の語呂合わせにちなんで、全国黒板工業連盟が2000年(平成12年)に制定した「黒板の日」であり、1872年(明治5年)5月頃にアメリカから黒板が初めて輸入されたという史実も、この日付の根拠となっています。黒板が日本に初めて持ち込まれたのは、開国間もない日本がアメリカから近代教育の仕組みを取り入れた頃のことです。大学南校(現在の東京大学の前身)にアメリカ人教師が「ブラックボード」を持ち込んだのが始まりで、その後の学制発布とともに全国の学校へと普及していきました。英語名「blackboard」をそのまま直訳した「黒板」という呼び名が定着したのは、この時代の名残です。

当時の国産黒板は、木の板に墨汁を塗り、柿渋や漆で上塗りしたものであり、名前の通り文字どおり「黒い板」でした。チョークで書いた白い文字が鮮やかに浮かび上がり、視認性は高かったものの、長時間見続けると目が疲れやすいという問題がありました。

転機が訪れたのは1954年(昭和29年)のことです。日本工業規格(JIS規格)の制定により、黒板の色は黒から緑へと変更されました。緑色は光の反射が少なく、白いチョーク文字との対比が黒よりも柔らかいため、目が疲れにくいとされたのです。こうして教室の黒板は緑色になったが、すでに社会に定着していた「黒板」という呼び名はそのまま残り、現在に至っています。

現代では電子黒板やホワイトボードが普及し、板書のデジタル化も進んでいますが、チョークと黒板の組み合わせは日本の学校文化に深く根付いています。書いては消し、また書く——その繰り返しの中に、知識の積み重ねを物理的に体感できる独自の学びのリズムがあります。黒板の日は、そうした黒板の有用性を改めてPRすることを目的としています。