おもちゃの日 (記念日 5月5日)
「おもちゃ」という言葉は、平安時代にまでさかのぼります。当時、手に持って遊ぶ行為を「もてあそび」「もちあそび」と呼んでおり、遊ぶための道具は「もちあそびもの」などと表現されていました。この言葉が時代を経て変化し、室町時代に現在の「おもちゃ」という形へと定着していきます。
室町時代、御所や宮中に仕える女房たちは、独自の言葉づかいである「女房詞(にょうぼうことば)」を日常的に使っていました。女房詞とは、上品さや奥ゆかしさを表すために、語の上に接頭語「お」を添え、語尾を省略して短くする話し方です。「もちあそびもの」もこの慣習に従い、接頭語「お」が付加され、後半部分が省略されることで「おもちゃ」という語が生まれました。もともと宮中という限られた場で使われていた女房詞は、やがて上流の武家社会や町人層へと広まり、「おもちゃ」もそのようにして一般的な語として定着していったと考えられています。現代では当たり前のように使われているこの一語に、平安・室町という二つの時代の言語文化が重なっているのです。
5月5日の「こどもの日」は、1948年(昭和23年)に国民の祝祭日として制定されました。翌1949年(昭和24年)、日本玩具協会と東京玩具人形問屋協同組合は、こどもの日と深く結びついた記念日として「おもちゃの日」を5月5日に制定しました。端午の節句という、子どもの成長を祝う古来の行事と、新たに生まれた国民の祝日、この二つの流れを受け継ぐかたちで、おもちゃの日は誕生しています。
おもちゃの日が掲げる目的は三つあります。「こどもによい玩具を与える」「玩具を大切にする」「親たちに玩具についての関心を深めさせる」です。また、4月29日から5月5日にかけては「おもちゃ週間」と定められており、全国各地でさまざまなイベントや啓発活動が行われます。単に遊ぶ道具としての玩具を普及させるのみならず、子どもの発育や文化的な意義を広く社会に伝えることが、この週間の趣旨となっています。
おもちゃと同じ意味で使われる「玩具(がんぐ)」という言葉の「玩」は、「もてあそぶ」という意味を持つ漢字です。したがって「玩具」は字義通りに読めば「遊ぶための道具」となり、「おもちゃ」という和語と「玩具」という漢語は、言語の成り立ちは異なりながらも、同じ本質を言い表しています。