郵便貯金の日(郵便貯金創業記念日) (記念日 5月2日)
「老後の備えに」「子どもの将来に」——こうした貯蓄の考え方が日本に根付いたのは、一人の人物の粘り強い働きかけがあったからです。1875年(明治8年)3月1日、東京府下18ヵ所と横浜1ヵ所に貯金預所が設けられ、郵便貯金の業務が始まりました。この創業を主導したのが、「日本近代郵便の父」と呼ばれる前島密(まえじま ひそか、1835〜1919年)です。
前島は郵便制度の導入にあたり、イギリスの郵便制度を現地で直接調査しています。そこで目にしたのは、郵便局が手紙の配達にとどまらず、為替や貯金の業務まで手がけている姿でした。この経験が、日本でも同様の仕組みを整えるという構想へとつながります。帰国後、前島は新聞への寄稿を毎日のように続け、郵便と並んで貯金の普及に力を注ぎました。しかし郵便貯金の滑り出しは決して順調ではありませんでした。飛脚に代わる郵便や送金を目的とした為替への需要はすぐに高まりましたが、貯金はなかなか集まりませんでした。当時の国民には「貯蓄」という発想そのものがほとんどなかったためです。
前島はこの状況を打開するため、老親や幼い子どもを将来にわたって養うための手段として貯蓄を位置づけ、小学校の教育に貯蓄の道徳を取り入れることを発案します。金融の普及を教育の場から図るという、一見遠回りに見えるアプローチでした。
こうした取り組みが実を結び、1887年(明治20年)ごろから貯蓄率が上昇へと転じ始めます。庶民の間に少しずつ貯蓄の習慣が広がり、郵便貯金の資金残高も増大していきました。制度の定着には創業から10年以上の時間が必要でしたが、その礎を作ったのは教育の場へのアプローチという発想でした。1950年(昭和25年)、郵政省(現・日本郵政)が創業の日を記念して「郵便貯金の日」を制定しています。なお、4月20日は「郵政記念日(逓信記念日)」として、郵便制度全体の歴史を振り返る日となっています。