扇の日 (記念日 5月1日)

扇の日

扇子は日本で生まれた道具です。中国やヨーロッパにも輸出されたほど独創的な発明でしたが、その起源は意外なところにあります。奈良時代から平安時代初期にかけて宮中で使われていた「檜扇(ひおうぎ)」、これは薄い檜の板を重ねて綴じたもので、もとはメモ帳として物を書きつける用途のものでした。あおいで涼をとる道具ではなかったのです。

現在私たちが知る形の扇子—紙や布を骨に貼って折り畳む構造—は、平安時代中期に「蝙蝠扇(かわほりあふぎ)」として登場しました。5〜6本の細い骨に紙を貼ったこの扇が、夏の涼をとる道具として広まっていきました。「おうぎ」という言葉自体、動詞「あふぐ(扇ぐ)」の派生形「あふぎ」に由来しており、漢字の「扇」は「戸」と「羽」を合わせた字で、戸が羽根のように動いて風を起こす様子を表しています。平安時代の宮中では、扇は単に涼をとる道具ではありませんでした。和歌を書きつけて贈ったり、花を載せて贈り物にしたりと、コミュニケーションの手段として機能していました。「扇合せ」という、描かれた絵や材質の優劣を競い合う宮中行事も行われるほど、扇は文化的な地位を持っていました。紫式部の『源氏物語』にも、女性が光源氏に扇を贈る場面が登場します。この文学的な描写が、後世に記念日制定の根拠となりました。

5月1日が「扇の日」とされているのは、「こ(5)い(1)」と読んで「恋」の語呂合わせに由来します。源氏物語における扇の贈り物が恋心の表れとして描かれていることから、この日付が選ばれました。1990年(平成2年)に京都扇子団扇商工協同組合が制定した記念日です。京都は扇子産業の中心地であり、京扇子は現在も国内外に名を知られる伝統工芸品として受け継がれています。

日本で生まれた折り畳み式の扇は、その後中国を経てヨーロッパへと伝わり、16〜17世紀のヨーロッパ宮廷でも広く愛用されました。もとはメモ帳だったものが、涼をとる道具となり、恋の贈り物となり、芸能の小道具となり、海を越えて広まった。扇子が歩んだ道のりは、日本の文化史そのものを映しています。