ひとひら忌 (記念日 4月30日)
『失楽園』は1997年に講談社から刊行され、映画化・テレビドラマ化を経て250万部を超えるベストセラーとなりました。この作品で一時代を画した小説家・渡辺淳一は、2014年(平成26年)4月30日、前立腺がんのため東京都内の自宅で逝去しました。80歳でした。命日に設けられた忌日「ひとひら忌」の名前は、1983年(昭和58年)に文藝春秋から刊行されたベストセラー小説『ひとひらの雪』にちなみます。
渡辺淳一は1933年(昭和8年)10月24日、現在の北海道空知郡上砂川町に生まれました。札幌医科大学医学部を卒業後、同校の整形外科講師として医療の現場に立ちながら小説を書き続けました。1965年(昭和40年)、母親の死を題材にした『死化粧』で新潮同人雑誌賞を受賞し、文壇デビューを果たします。医師免許を持つ作家という異色の経歴が、その後の作風を大きく方向づけました。
初期から中期にかけては医学・歴史・伝記的作品を多数手がけました。1970年(昭和45年)には『光と影』(文藝春秋)で直木賞を受賞。同年、日本最初の女医・荻野吟子の生涯を描いた『花埋み』(河出書房新社)も発表しています。1979年(昭和54年)には野口英世を題材にした『遠き落日』(角川書店)と『長崎ロシア遊女館』(講談社)で吉川英治文学賞を受賞しました。
1980年代以降は作風が大きく転換します。男女の愛と性を正面から描いた『化粧』(1982年、朝日新聞社)、『ひとひらの雪』(1983年、文藝春秋)、『化身』(1986年、集英社)を次々と発表し、読者層を広げました。こうした路線の集大成が『失楽園』です。2003年(平成15年)には紫綬褒章と菊池寛賞を受賞。2007年(平成19年)にはエッセーのタイトル「鈍感力」が新語・流行語大賞トップテンに選ばれ、その言葉は広く社会に浸透しました。
没後の2015年(平成27年)、集英社が「渡辺淳一文学賞」を創設しました。本人の名前を冠した文学賞で、第1回の授賞式は2016年3月に行われています。
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